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そうして着いた所には、倉庫がひとつあって
「兄貴ー!!!兄貴に話聞きたいって奴がー・・・」
男の掛け声で、倉庫から数人の男が出てきた。うわあ・・・・強そうな人たちだなあ。
「こんにちはー」
「誰だ、テメェ」
「僕は、『夢追い人 推古=レキ』といいます」
兄貴と慕われていそうな男が、僕の名前を聞くと
「入れ。教えてやる、俺が知っている事を」
「ありがとう。その前にキミの名前知っておきたいんだけどなあ」
「壊屋=ハル。壊し屋だ」
壊し屋か。あんまり有名じゃない名前だけど、慕われてるからには強いんだろう。そのハルと子分らしき男に連れられて僕は倉庫へ入って行った。
倉庫の中は、ひんやりとしていて今の季節に最適とは言えない温度だった。それでも何とか堪える事が出来そうな僕は、床に敷かれた小さな布切れの上に座れ。と指図された。ああ、キミ達も僕の性別勘違いしてるのかな。
「で、何が聞きたい?」
「さっき通りで僕とやり合った人達の事かな。うん」
壊し屋、壊屋=ハルは、ほんの少しだけ時間を置いて、少しずつ自分の事から話し始めた。
「俺は、昔アイツ等・・・第四研究施設研究員の一人だった」
何、あの人達って研究員なんだ。確かに、怪しい格好はしていたけど。
言ってなかったけど、彼等は戦闘能力が一般の民間人より優れていて、白い白衣か黒い白衣を身に纏っていた。そんな奴等の一人だったなんて。
それから、ハルは全てを教えてくれた。
研究員は、数百を超すとか。研究所所長は若干20歳だとか。
そして一番重要な話が、ひとつ僕の耳に止まった。
「奴等の研究素材は、夢追い人だ」
その言葉を聞いて、瞬間的に僕はうな垂れた。
そんなの僕を狙う理由になってるじゃないか。
「―――とまぁ、俺の知ってる事はそれくらいだ」
「ありがとう、ハル。時間だからまたね」
「ああ」
僕は、倉庫を出て酒場に戻った。その酒場には、マスターとリョクが僕の帰りを待ちわびていて、その足でマスターの家へ向かう途中、不覚にも僕は手錠を掛けられてしまった。
「彼を連れて行きなさい」
またしても、僕は青年に捕らえられてしまった。
「マスター、リョクを頼みます!!」
「おう。任せろ!」
どんどんマスターとリョクの姿は小さくなって、遂には見えなくなった。
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ガシャン
また牢に入れられた僕は、備え付けの寝台に仰向けになって天井を見た。
暗い。汚い。寒い。
そういった感情に押し潰されそうになるのを止めたのは、通風孔から出てきた、あの青年そっくりな少年だった。それも、僕と同じくらいの背丈で。
「のわおー!!!!!!!」
何か変わった叫びを声を上げて通風孔から落ちた。
「キミ、誰?」
僕からの質問に、少年は
「研=イル。17歳っ。第四研究所所長の弟!」
そして彼は、続けて言う。
「兄さんの夢を止めて欲しいんだっ!!ぶっ」
あまりにも大きな声で発言するから、牢番に気づかれてしまった。
「推古=レキ。何かあったのか」
牢番が、格子の外から中の様子を窺ってくる。僕は、少年を寝台の下へ押し込み
「寝台から落ちちゃって・・」
「驚かせるな」
「すみませーん」
牢番は、僕が謝ると所定の位置に戻った。
「ぷはぁっ!!」
寝台の下から出てきた少年は、僕の顔をじっと見て
「夢追い人のくせに、殺し屋の匂いがするんだね」
「前の職業が殺し屋だからね。というか、キミ何しに来たの」
「うん。あのね、研究所に一緒に来て欲しいんだっ」
「・・・・・はあ?」
僕は少年のにこやかな笑顔に、思い切りやる気の無い声を出してしまった。やる気の無い声を出してからというもの、僕はこのイルという17才の少年の話を聞いている状態に陥った。けれど、普通に聞くなら何も問題は生じないのに、彼の話方と言えば・・・・
「それでねー、だからねー」
話がどんどん違う方向へ流れていくんだ。
「あのさ、静かにしないと怒られるの僕なんだけど」
僕にそう言われたイルは、「あっ」と言って上着の内ポケットから小さなリモコンを取り出した。あの、それ、何ですかね。
「コレは、リモコンッ!!!」
いや、知ってるし、見たことあるし、使ったことあるから。
「ポチッとな」
変な掛け声とともに、イルはリモコンにくっ付いている赤色のボタンをカチッと押した直後、牢の外で何かが崩れる音と悲鳴が聞こえた。
一体、そのリモコンは何!!!!!!?
「アレェ、間違った?」
おい待て糞餓鬼。僕は、腰のホルスターに入れてある二十二口径自動式制銃「雪の人」を抜いて、イルのこめかみに当てた。
「俺を殺すなら、兄さんを殺してあげて欲しいんだけどなあ・・・」
何だと・・。
僕は、「雪の人」をサッと降ろして理由を聞こうとしたけれど、牢の格子が天井へ上がっていくのを見て固まった。この牢、見かけによらずそんな凄いものだったんだ。ともかくとして、牢から脱出した僕等は、外へ急いだ。

バタバタバタバタバタ
あぁん? 何かがオレの方へ向かって走って―――――――――アレは、レキか? しかも何か隣に連れてるし。
浮気者めええええええっ!!!!!!!!!
いや、別にオレは、アイツにそんな感情を持ってなんか・・・持ってなんか・・・・・ねえぞ。って、ちっがーう!!!!!
「空間切れ!!!!!!!馬鹿リョク!!!!!!!!!!」
オレへ向かって爆走するレキが、オレへ言葉を投げかける。
そんなレキの後ろには、黒白衣を纏う十数名の奴等がいた。
そしてオレは、指示通り「業火」を鞘から静かに抜いて、レキ達の方へ向き、空間を切り裂いた。そこから、炎が生じて真っ直ぐ前へ飛んでいく。
レキは隣の奴を庇いながら、炎から上手く逃れてオレの横へついた。
「ありがとう、リョク」
「いや・・・てか、コレ誰だよ」
リョクが目を丸くしてイルへ投げかけた。でもイルは、自分の口から自分の名前を出そうとはしない。
「研=イル。僕らを捕らえた奴の弟らしいよ」
「あー!!!!プライバシーは本人の了承無しで言っちゃ駄目なんだぞー!!」
叫ぶイルをリョクが軽く担いで、いつもより数割増の真剣な声で、僕の耳打ちした。
「仕事開始か?」
「そうだね」と小声で言って僕は、即座に
「じゃあ、マスターの家に連れてってねー」
と言って、リョクの後を歩き始めた。

「おっさーん」
ちょっと、リョク! マスターのこと「おっさん」なんて呼び方してるの?
「お。早ぇじゃねーかリョク・・・・って何でイル様が!!!?」
『イル様あ?』
「そそっ」
どこをどうしたら、この少し変わったイルに様が付けられる様になるのだろうか。というか、それ以前にそういう性格じゃないよね。
そんな顔をしていると、イル本人が驚くべき事実を言う。
「俺、人間じゃないっ!!」
ますます何がなにやらという方向になっている様な気がしてならないのは僕だけか。
「どう見たって、人間だろーがガキィッ!!!」
「五月蝿い、馬鹿!!」
「ばっ・・・・ぶっ殺すぞテメエ!!」
怒りが頂点に達しているリョクを制して、ぽーいっと家の外へ放り出した。
「さてと、キミが人間じゃないって話を詳しく話して貰おうかな」
僕とマスターはイルを挟んで、話を聞き始める。
イルは、楽しそうに自分の過去を言い出した。
「今から17年前、第四研究所で創られた人造人間がいた。当時隣国からの侵入者が多かったために―・・・」
イルの話は、以外にも暗いものだった。何故なら、その侵入者から街を守るために創られた人造人間は、街を守り抜いた。すると、人々から神の様に崇められる様になった。でも、その人造人間には名前が無かった。そこで、研=デルという当時13歳の少年が名前を授けた。
「研=イル」
何故彼が、自分と同じ苗字を付けたのかは誰も知らないと。そして、彼は、人造人間イルを本当の弟として可愛がった。けれど、そんな微笑ましい日々は早々と彼等の前から消え去った。ある日、街へ2人組の旅人が訪れた。旅人のうちの1人は、職業を名乗らずに街を通過しようとした。
もう1人の旅人は、職業を名乗った。その職業名は、『夢追い人』だと。
デルは、その職業名を聞いて、憧れを抱いた。それが事の発端になろとは思いもしなかったのだと。イルの顔は、急激に暗くなった。
そこへ、外へ放り出されたリョクがやっと戻ってきて話は続けられた。
『夢追い人』という旅人は、その名の通り「夢」を追いかけている。
デルが初めて出逢った『夢追い人』は奇妙な夢を追いかけている者達だった。その内容は、イルも知らないという事だったけれど、僕は昔知り合いの同職業の奴に聞いた事がある。人体実験などを「夢」にしている夢追い人がいると。デルは、彼等に強く影響された。
それからというもの、彼は人々に喜ばれる研究を一切止め、自分の研究に打ち込んだ。イルは、デルの側から少しずつ離れた。理由は、
「あんな兄さんを見ていられないっ!!」
なのだと。のんびりと話は終わった。壁に掛けられた時計の針が夜7:00を示している。軽く1時間が経過したのかと思うと時間の流れは相当速いのかと思わざるを得なくなる気がした。マスターは、自分の分を含めて4人分の夕食を準備してくれた。イルは、少し残して僕とリョクは完食して、無論マスターも完食した。
「ねえ、どうするのキミ。帰るの?」
寝台に腰掛ける僕は、寝台でゴロゴロ動くリョクの鳩尾にチョップをかました。
「出来れば一緒にいたいなあ・・・・なんて」
「いいよ」
「本当!?」
「お前がレキに手ェ出すなら、オレがお前をぶっ飛ばす」
「キミは、リョクに手を出すなら、僕はキミを華麗に殺してあげるよ」
ほぼ同時に僕らはイルへ、それなりに酷い言葉を投げて、にっこりと笑った。その笑みを見たイルは身震いをしている。そんな姿を見ると、僕は彼が人造人間だとは思えない。僕らと同じ普通の人間にしか見えない。
それでも彼が自分の事を人造人間と言うのだろうと思うと哀しくなった。
「イル」
「何、馬鹿サン」
「誰が!!オレは、仁義=リョクだっての」
「リョクかあ!」
寝台でゴロゴロしていたリョクが唐突に起き上がって、ニヤリと笑った。
あ、久しぶりに見るリョクの楽しそうな顔だ。
「明日オレを第四研究所とやらに連れて行ってくれ」
「あ、ずるいよ、リョクッ!!僕を差し置いて!!」
「お前、自分の職業くらい確認しろっつーんだよ!!!!」
「むむむ」
口を尖らせる僕に、リョクは目を細めて左の手のひらに右手で作った拳をぶつけた。ああ、それはかなり久しぶりに見る合図だね。何だっけ。
ええと、ええと、そう!!
「別行動で第四研究所へ潜り込め」か何かかな。
「そういや、レキって女の人?」
イルが首を傾げて聞くと、それに便乗してリョクが
「そうそう、スッゲー恥かしがりでさあ・・・」
「以外っ!!」
何馬鹿な事言ってくれてるの。キミ達は。というか、僕は、僕は、
「ぶっ潰すぞ貴様等あああああぁぁああ!!!」
僕は、女なんかじゃねええええっ!!!!
「わはは」
「え、もしかしてもしかしなくとも男な人?」
「わはは」

そうしてイルとリョクは眠った。僕は窓を開けて夜空に浮かぶ歪な形をした月を眺めた。ああ、どうして幸せな日々が送れないのだろうか・・と。
殺し屋から一転して夢追い人になったのは、間違いだったのかな。
「なっ、おもっ・・・リョク・・?」
後ろからリョクがのしかかって来た。
「明日別行動だから、少しの間このままでいろ」
「・・・別行動したからって死ぬわけじゃないんだし」
「今のオレのお願い聞いてくれねーの?」
「五月蝿い、馬鹿リョク」
「イルが起きるぞ、阿呆レキ」
余裕かましてるキミは、いつものキミらしくなくて驚いたんだ。多分。

翌朝僕は、単独行動で。リョクはイルと第四研究所へ向かう事になっている。
「気をつけてね、2人共」
「レキもなー♪」
嬉しそうに手を振るイルの横でリョクはいつも通りの顔をしていた。そして僕らは二手に分かれた。

リョク達は真正面から研究所へ突撃して、僕はとある場所へ向かっているんだけど、どうもうこうもウザッたい。
「俺とお茶しなぁーい?お嬢さんっ」
「遠慮します」
「そう言わずにさー、これも何かの縁だから。なっ?」
ああ、もう。どうしてこういう時に限ってキミの様な奴に!!!!!
「あの、殺しますよ?あんまりウザイと」
僕は、腰に吊るした「雪の人」に手を掛けて、ニッコリと微笑むと男は「エヘヘ」と笑い逃げ去った。
そうこうしているうちに、倉庫へ着いた。
「テメェー、どこの奴だあ?」
「壊=ハルに話あるんだけど・・・・・・・っと」
足元へ威力の低い手榴弾を投げられて、空中へ飛び上がると倉庫からハルが出てきて
「何で、飛んでんだお前」
「・・・はあ」
地に足が着いて僕は溜息をついた。
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