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医者に「完治するまで安静するように」と言われてから今日で五日目。
それで今さっき、医者から完治したから動いてもいい。と通告されてちょっと嬉しい。
やっとまともに動いてもいいと言われたから。
この五日間、ずっと家の中でゴロゴロしてたからね。
そして動けるようになった僕は、庭先で楽しそうに二匹の犬と遊んでる阿呆リョクを見てる。
何でかって?
何で女の子なのにあんなに身長が伸びるのかなぁ・・・って思ってね。
でもリョクの場合、栄養が骨にだけいったんだろうなあ・・。
そういう面では、男としてちょっと淋しいものがあるよね―・・何て目で見てると、リョクが僕に
「チービ」
と言った。
それは禁句。
これでも結構それは気にしてるからね・・・?
僕はバルコニーから庭へ降りて、庭の端へ歩く。
そこには、スプリンクラーのスイッチがある。
それを勝手にいじって、ONにする。
そしてその近くにある水道の蛇口にホースを繋げて、その先を突っ立ってるリョクの顔面目掛けて水を噴射させた。
水は見事に顔面に直撃した。
水に濡れた顔のまま、リョクは更に僕へ言う。
「バーカバーカ」
誰が馬鹿だっていうのかな?
僕はホースを持って、リョクへ歩み寄る。
もちろんホースからは水が流れてるけど、その水をリョクへ向ける。
するとリョクは、平然とした顔でいるから、僕は言う。
「確かに僕は身長が低いけど、馬鹿じゃないんですけどねえ・・・?」
少し怒りながら言う僕に、気圧されたのかリョクが一歩下がってボソッと言う。
「チビなのは認めるんだ・・・」
僕は何かが切れる様なそんなカンジを自分自身から感じた。
次の瞬間、
「誰がチビじゃあああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
多分切れたのは理性。
もしくはプライド。
「脱がすぞテメェ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「いっ、いやっ、いやだああああああああああああっ!!!!!!!!!!」
リョクはホース持って追いかける僕から逃げて、僕は逃げるリョクを追いかける。
無論、追いかける理由は―――・・・脱がすから?
いや、それはないけど、制裁くらいは、ね。
っていうか、追いかけながら気づいたけど・・僕本当に小さい・・。
自分で言って悲しくなるけどさ、本当に。
そして結局リョクは僕に捕まって、罰ゲーム。
内容は、執事さんと十分話すこと。
執事さんは、用件しか話さないから十分も喋るとなると相当な苦労。
僕でも執事さんと頑張って話しても、最高で五分だったし。
そういえば、執事さんの名前知らないなあ・・。
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なぁにが、罰ゲームだっつんだよ。
しかもその内容が「執事と十分間話すこと」だとぉ?
あんまりオレを嘗めんなよ?
そんな罰ゲーム、簡単にこなすっつの!!
そう考えながらリビングで休憩してる執事に近づく。
執事は、素早くオレの気配を察知して、オレを見た。
「何か御用でしょうか」
「アンタと話したいな~って」
「そうですか。何を話せば宜しいでしょうか」
さすが執事なだけあって、必要な事しか述べないんだなあ。
にしても何を話せばって・・・・・考えられねえっ!!!
レキとなら普通に話せる話題とかあるけど・・・それはレキなわけで・・・って何考えてんだオレッ!!!!!!
執事はオレが何かを話すまで多分待ってるんだろうなあ。
そのためにも早いとこ考えなきゃなんねーんだろうけど、何も出てこねぇっ!!!
まさかレキはこうなると分かってて、これを罰ゲームにしたのか!!!?
うわ・・最悪。
でもそれを言いたくても、執事の所へ行く前に
「見張ってるからね~」って釘さされたしな。
むむむ。
あ、そうだ!
「あの、名前何なんですか?」
これだろ!!
オレは執事が口を開くのを待つ。
執事は、とても言いずらそうな顔をしてやがる。
名前を言うのって、そんなに嫌なもんか?
オレだったら普通に「仁義=リョク!!!!」っていえるけど。
「・・・私めの名前を分かりたいですか」
「ほら、執事ー・・なんて呼びにくいしさ!」
そうオレが言うと、執事は立ち上がり庭でパソコンを弄ってるレキの方へ歩いていく。
その後をオレが追いかけると、執事は目に見えない速さでレキの左隣へ立っていた。
レキは執事を見たけど、すぐにパソコンの画面に目を向ける。
執事はパソコンに夢中のレキへ
「レキ様、貴方は私といつ出逢ったか覚えていますか?」
言葉を掛けた。
「んー・・僕が十歳の時だっけ?」
「はい。私めは、レキ様のおじい様の左を守らせて頂いておりました者です」
「へぇ・・・・ってええええええええええええええええっ!!!!!!!!!!!!!?」
ん?
レキがパソコンの画面から目を離して執事を見た。
あ、ラッキー♪
オレの罰ゲーム無くなりそうじゃん。
にしても、レキはずっと執事を見て吃驚した顔をしてるよなあ・・。
馬鹿リョクの罰ゲームに指摘したとは言えど、執事さんが僕の祖父の左翼だったなんて思ってもみなかったから吃驚したよ。
これはもうリョクの罰ゲーム所じゃないね!!
僕は執事さんに、僕の口から改めて問う。
「・・・貴方の名前は何ですか?」
執事さんは、ニッコリと微笑む。
今まで執事さんは、僕に対して柔らかな笑顔を向けてくれなかったのに、どうして今日に限ってそんな笑顔を見せてくれたの?
それはリョクが貴方の名前を聞いたから?
僕はリョクを僕の傍に来るように手招きした。
すると執事さんは、それを待っていたかのように口を開いた。
「私めの名前は、忠告=アドと申します」
忠告=アド。
昔、僕の祖父から聞いた事があった様な・・そんな名前の様な気もしなくはないね。
でも名前を聞かれたからって、多分僕は「執事さん」という名称で彼を呼ぶだろう。
だって昔からそうだったから、今更ってカンジもするし。
「私めの名前を教えましたので、仁義=リョク様の本名もお教え頂くと嬉しく存じます」
執事さんは僕の右隣で座ってるリョクに言葉を掛けたけど、リョクは僕の影に隠れようとする。
僕は執事さんに頭を下げる。
「すいません。リョクの本名は明かせないんです」
「そうですか。では、そろそろ私めは掃除に戻らせて頂きます」
執事さんは僕の左隣から離れて家の中へ入っていく。
僕は右隣で怯えた様な身振りをしているリョクの頭をそっと撫でてあげて、パソコンの画面に目を移すけど、リョクは今にも泣きそうな顔で僕を見てる。
「ぅ~・・・れきぃ~」
仕方なくパソコンの画面から目を離して、リョクの顔を窺うと、ボロボロ涙流してた。
あーあー。
「何々、そんなに名前聞かれるのが怖かったの?」
リョクは本当の名前を聞かれるのを嫌う。
というか、本人曰く怖いらしい。
もし、聞いてきた相手が昔の自分の事を知っていると何を言われるか分からないからだとかで。
「大丈夫だよ。誰も聞かないから。もし、そんな奴がいたら僕がブッ飛ばしてあげるから。ね?」
泣き止まないリョクの頭を優しく撫でてあげている僕は空いている片手で、パソコンの電源を落とす。
そしてリョクが落ち着くのを待って、僕は手を引いて家の中へ入った。
そこには、いやらしい目付きで僕達を見てるロキと母さんがいた。
だから僕はリョクを洗面所に押し入れてドアを閉めた。
「・・レキ?」
「顔洗えたら、昼ご飯食べに行くよ!!」
そう言って僕は洗面所のドアから離れ、自室から財布を取り、ロキから車のキーを貸してもらい、内玄関でリョクを待つ。
そこへ執事さんが来た。
「レキ様。これをリョク様へお渡し下さいませ」
僕は執事さんから指輪を受け取る。
ただそれは二つ。
「先ほど、ご無礼を働きましたのでそのお詫びです」
「分かった。渡しておくよ」
執事さんは、用件を述べてリビングの方へ行くと、入れ違いにリョクが少し慌てながら来た。
そのリョクに指輪を一つ渡す。
「何だコレ?」
「執事さんからお詫びだってさ。二つ貰ったから、一つは僕が貰うね」
リョクはまじまじと指輪を見る。
「・・・失くすかも」
ああ、確かにキミなら失くすかもしれないね。
「ならネックレスにすればいいんじゃないの?」
「そうか・・その手があんのか・・」
うわ・・本当に馬鹿?
ともかくとして僕は車庫から車を出して、それに乗る。
もちろんリョクも。
若干リョクの顔が引き攣ってるのは気にしないでおこう。
僕は車のエンジンを掛けて、車を発進させた。


【夢追い人 第十三話 執事さん End】
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