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バイクのエンジン音が閑静な住宅街を包む中、僕とリョクはバイクに跨る。
それを母さんとロキ、執事さんが見送ろうとしている。 使い古したゴーグルを着けて、手袋を嵌めるのを終えた僕は見送ってくれている三人に、 「じゃあ当分帰らないから後を頼むよ。特にロキ」 「任せろ!」 ロキはガッツポーズをして、母さんに頭を一発殴られた。 僕はリョクに、「先に走っておいて」と言い、彼女がバイクを走らせるのを確認して、もう一つ付け加えておく。 「セントラル入国ゲート全てに監視官をつける事」 「どうして?」 母さんが僕に問いただす。 「万が一、「夢喰い人」が入ってきたら、セントラル国国防連合軍警察庁が危ない。ロキは分かるよな」 「ああ・・・あの場所は狙われる可能性がある」 「まあ、そういう事だから。よろしくね」 僕はバイクのエンジンを掛け、先を走るリョクを追った。 リョクの後ろまでバイクをつけるのに掛かった時間は、約一時間。 以外に速度を出してたらしく、かなり進んでいたみたい。 しかも、方角的に北へ進んでいるから、だんだん寒くなってきた。 とは言え、母さんが用意してくれた暖かい服は身軽に動く事が出来るようになっているから、そこら辺は感謝。 でも何故かリョクが手にしているものは、アイス!!!! 可笑しいよ・・・寒いのに、何でアイスが食べれるわけ!!!? 「このアイス、マジで美味い!!!」 稀に、アイスは冬に食べるのが一番美味い!! って言う人はいるけど、この雪が降っている国でその言葉は無いと思う。 今、僕達がいる町はセントラル国の北を守るワァールアイズ国。 この国から北にある全ての国は、一年のほとんどが冬。そのせいで、晴天の日はめったに拝むことが出来ない。 でもこの国は、母さんが生まれ育った国。あのピンク色の髪を靡かせて、子どもみたいな素振りをみせる人が一番愛している国。その国に来たことは数え切れないほど。ただそれは、それは短い春にだけ。こんな冷たい雪が振ってる季節にじゃない。 だからこんな国に、「夢喰い人」がいるだなんて思って無かった。 僕が北へ行くのを決めたのは、その理由が一番にあったから。 「なあなあ、レキ」 「何?」 「あの教会の鐘って鳴ると思うか?」 アイスを食べ終えたリョクの指差す方向には、雪の様に真っ白な壁の大きな教会があった。その屋根の一番上には、大きな鐘がある。 「鳴るよ。あの鐘はとても綺麗な音で鳴ってた・・・」 そう言った僕は鐘を見た。リョクは首を傾げて僕を見る。 「どういう意味だよ」 その返答に僕は答えずらかった。だけど代わりに、誰かが答えてくれた。 こういう風に―・・ 「人間の血が、この国を染めたある日の冬からあの鐘は鳴らないんだよ。お嬢さん」 PR
大人が子供に諭している様に、言葉を並べてリョクのすぐ後ろに立つ一人の男。長いマフラーを巻いて、こちらをじっと見ている。
リョクはまるで何も分かっていない様で、またアイスを食べるとか言い、走り去って行く。でも足元が雪で濡れて滑るのか、何度か転びそうになりながら走っていく。 それを見送って、僕は短刀「血塊」を静かに手に収めた。相手の左手には同じ形の短刀が握られている。互いに互いの立場を示すべくために相手は名乗る。 「私の名前は輪=マーシー。職業は【夢喰い人】です。本日は貴方を殺しに馳せ参じました」 パソコンに表示されていた星の位置は正確だった。ただし、星の数は十。 以上に多いのが気に掛かるけど、まずは眼前に立っている人間を抹殺する事を優先したいとは思ってる。 思ってる。 でも僕は後方へ投げ飛ばされ、地面に上手く足を着けた。 僕を投げ飛ばした人間は、異界の言葉を口ずさみ、こっちへ顔を向けた。 『貴方の様な方が、人間の屑に等しい者を殺してはなりません』 その口調に僕はフッと笑う。 先刻までアイスを嬉しそうに食べていた彼女は、紅の瞳を僕へ向け儚げに笑う。それがどれ程愛しく感じたか分からない。 ただ彼女の声をこの前聞いたのに、とても遠い場所からやっと逢えたようなそんな感じがしてならなかった。 「そんな事は無いと思うけど、キミがそう思うなら任せるよ」 『そうさせて頂きます。では私が暴走しない様に御見守り下さい』 異界の言葉を口ずさむ彼女は、僕へ笑顔を向けマーシーという【夢喰い人】の方へ右腕を伸ばした。 マーシーは彼女へナイフを投げる。でもそのナイフは簡単に地面へ落ち、彼が唖然としている瞬間に彼女は冥界の扉を開き、死者の魂を彼へ差し向け命を完全に奪った。命を失くした体は、地面に横たわり白い目を空へと向けた。そして彼女は僕の前まで来て言う。 『魔剣士であるリョクは今眠っています。この国が眠っている様に』 紅の瞳の彼女は、サラ。サラはこの国が眠っていると言った。 確かに数年前のある日からこの国はずっと眠っているかもしれない。 何故なら教会の鐘が一度も鳴らないから。一度も美しい鐘の音色を聞かせてはくれないから。ならばこの国が目覚めればリョクが目覚め、サラは眠るという事になる・・・? 『私の心配はご無用です。ですからこの国を目覚める事を優先的に行うべきかと存じます』 サラは淡々と喋る。 「そうだね。その前に声をこの世界の物にしてくれると嬉しいんだけど・・・」 異界の言葉が少し聞こえてくるサラの言葉は、なんとか聞き取れるけどはっきりは聞き取れない。 『すみません・・・ええと・・』 「これで宜しいでしょうか?」 彼女の声は普通の声。僕は彼女に言う。 「僕は殺し屋という立場を持っているからいいけど、キミはどうする?」 「私は―――・・・」 言葉を詰まらせ、俯くサラは地面に横たわる骸を見ようと振り返ろうとした。それを止める。 「答えを出せないならいいよ。えっと・・・じゃあ、一時的にキミは僕の左翼にしておくね」 「有り難うございます・・・レキ様」 「いいよ。お礼なんて。仕方ないからね」 僕に一礼するサラを無視して僕は静かに佇む教会の鐘を見た。 空から降り注ぐ雪が僕達の体温を奪う。 それに気づき、僕達は手頃な宿に泊まる事にした。
宿に泊まる事にしたのはいいし、部屋も結構広くて綺麗で暖炉もあるし、ベッドだし洗面所も風呂もトイレも付いてて凄い嬉しいんだけど、顔近いよ・・・サラ!!!
「どうかされましたか?」 「あ、あのさ近くない・・・?」 「そうですか?」 「うん。かなり近い」 「そうですか」 サラはしぶしぶ僕から少し離れて、綺麗に座る。 「ねえ、サラ」 「何でしょうか?」 サラは首を左へ傾ける。 「その口調、どうにかなんない?」 「え?」 僕は彼女の顔を見て言う。敬語で話しても別に構わないんだけど、何か違和感があるんだよね。サラってもっとお嬢様口調なカンジがするし。 何と言っても元々はお姫様なんだしさ。 「宜しいのですか?」 「だって疲れそうだよ、その喋り方」 敬語は以外に体力を消耗する。それも慣れてないと余計に消耗が早くなる。 気を使いすぎで疲れるってやつかな。まあ、それは僕の場合でだけど。 「なら、普通に話しても構わないのよね?」 うわぁ・・・本当にお嬢様口調だよ。 「う、うん」 サラはフフッと笑う。何だろう・・・リョクと同じ顔なのに何故か全くの別人に見える。それはまるでサラとリョクが別々の人間だと言うかの様に・・・。 「それで、これからどうするのよ」 「明日から動くとして、今日はココから外へ出ないよ。食事はこの宿で済ませば大丈夫だし」 「そうね。下手に動くと危険だわ」 サラはリョクより相当頭が切れそうだ。だからペースが全く崩れない。それはそれで淋しいけどね。 「ねえ、レキ」 「何?」 僕の袖を引っ張ってサラは言う。 「出来れば一緒に寝て欲しいんだけど・・・・」 頬を真っ赤に染めて言う彼女はカタカタと手を小刻みに震わせる。僕はその手を取って苦笑いをしながら 「いいよ。一緒に寝よう」 言った。 「貴方が言うと厭らしく聞こえるわ・・・」 「心外だなあ。何もしないって」 「本当かしら?」 その返答を僕はしなかった。だってサラはリョクと違って大人しいと言えば大人しいし、何もしないとは言えないよ。 だって僕は一応男なんだし。まあ、何が何でも色々我慢はするけどね。それぐらい慣れてるし。 「なら、先にシャワー浴びるわね」 「うん」 サラは自分の荷物をゴソゴソと漁りながら必要な物を持って、風呂へ向かおうとして止まり、 「は、入ったら許さないわよ!!!」 急いで風呂へ向かった。それを目の当たりにして僕はまた苦笑した。 |