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「推古=レキ。彼の出生暦や幼少期は知りませんが、彼の噂なら聞き耳を立てずとも流れてくるものでした。数年前までは」
首を傾げるオレにソウは話を続ける。
「殺し屋の跡継ぎとして生まれた彼は、物心つく前から訓練をしていたそうです。普段はごく普通の少年として過ごす彼も、夜になれば顔を変え、クライアントから受けた仕事を完璧にこなす一人のプロとなります。そして彼は九歳という若さで父親の跡を継いだ。それがどれだけ素晴らしいものかと当時の王族達は思いました。そして彼の力量見たさに彼を自国へ招いたのです」
一度息をついたソウは、場所を変えながら話をします。と言いオレを後に従えながら建物の中へ入る。
「沢山の国を回りながら仕事を行う彼を王族達は褒め称え、様々な貢物を彼へ送りました。けれど彼はその全てをそれぞれの国へ返し、言ったのです。

『貢物を送る前に自分の国の情勢どうにかしたら?』

子どもに言われる筋合いなど無いと王族達は言いましたが、当時王族達が統治する国のほぼ全ての情勢は最悪なものでした。もちろんこの国も例外ではなかったです。そんな彼の言葉に背中を押された国民達は王族狩りを始めたのです」
ソウの話は凄まじくオレには難しい。しかも王族狩りって、もしかしてサラもその被害にあってたんじゃ・・・。
い、今はいっか、んな事。
「国民達は王族の中でも王の首を狩ろうと考え行動を起こします。そんな時、レキがこの国へやって来たのです。この国にいるクライアントから受けた仕事を片付けるために。その話は後回しに。話を続けます。彼は仕事を片付け、この国から去る時に

『醜い争いをするよりもテキトウに生きてる方が幸せだと思わない?』

そう残しました」
「それが?」
足を止めて聞くと、ソウはまた続ける。
「推古=レキには人間が持ち得ない特殊な力があるそうです。その力を使い、王族狩りを人間達にさせた。という話がありますが、事実かどうかは知りません。私が彼について知っているのはそれぐらいです」
オレの方へ向いたソウはまた微笑して、右手に握られた長い杖の先端をオレへ差し向けた。
「何の真似だよ、ソウ」
「貴女には少しの間眠って頂きたいのです」
何でオレがそんな目に逢わねえといけないんだよ。キッと睨むオレに向けた杖の先端の位置を一ミリもずらさずソウは笑い、
「私は、ラクチュラス国王家第一王女、雪中花=ファリエルと申します。本日は貴女の命頂戴に預かりに参りました・・・♪」
ファリエルという名前が本名だったソウが杖の先端から何かを発射させた。回避する方法が分からない!!!
ただ立っているしか出来ない体を誰かが助けてくれた。
いや、オレの前に立ってそれを防いでくれただけ・・・?
「ティム。そこから退きなさい。貴女は私の味方でなかったのですか? 貴女の大切な人を殺した人間の仲間を助けるのですね。いいでしょう。貴女も殺して差し上げます」
オレの前に立つティムが小刻みに揺れていて、ティムは小さな声で誰かの名前を口にした。するとヴァイオリンの音を奏でながらメツが現われ、目で合図した。
逃げろ。と。
オレはティムの手を引いて建物の外へと走る。途中、ティムが街へ逃げられる道を教えてくれて、そこから二人で逃げ出した。
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リョク達を逃がしたのは俺の一存だ。
「メッツゥってばぁ、アタシの邪魔するのぉ~んっ?」
魔術士専用の杖を握るソウに、俺はヴァイオリンの音を奏でていく。
「そんな音でアタシをどうするっていうのぉ~?」
「足止めにするだけだ。お前は俺の獲物だからな」
「ふふっ・・・・それってぇ、誰かに指図されたんだったっけぇ? あっれぇ? アタシってばぁ、何も覚えてないかもぉ~んっ」
はぐらかす相手に俺は容赦はしない。ただこれがいつまで持つか分からない。相手がこの音に飽きればそれで終わり、この音に酔えばそれで終わり。どちらになるから分からない。
「あぁんもうこの音やっだぁ~んっ。そ、れ、に、アタシってばこんな所で油売ってる暇ないしぃっ?」
相手は転移魔術を唱え、消えた。その後を追うようにして俺も特別な言葉を唱えた。


街へ出たのはいいけど、やみくもに逃げたって追いつかれるのが関の山。
お、ちょっとオレ頭良さそうじゃん。
「ちゃんと前見て歩いて下さいリョクさん!」
「へ? わりわり」
「ところで今何処向かって走ってんの?」
素朴な質問をするオレへティムは懸命に走りながら、
「商店街で身を隠します」
「そんな事をしてどうするつもりですか、ティム」
走っていたオレ達の背後からソウ、じゃなくてファリエルの声が不意に聞こえた。かなり走って王家から離れたはずなのに、もう追いつかれたなんてありえない。でもここで逃げてもまた追いかけられるだろう・・・オレは魔剣「業火」を鞘から抜いて、ファリエルの方へ向く。
「リョクさんではその人に勝てません!!」
「メツが来るまでオレは戦う! だからティムは逃げるんだ!」
ティムはタッと走って行く。
「ちょうど私も貴女と戦ってみたかったんです。でもその前に命頂くつもりですけど・・・♪」
そう言ったファリエルは急速に間合いを詰め、杖の先端から水を噴射してくる。それを「業火」の炎の刃で防ぎながら、反魂士の言葉を紡いでゆく。一般市民を巻き込まないための防御策なだけではあるけど、それなりに何とかしてくれるだろう。
冥界の扉がオレの背後に出現し、その扉が開き、水と炎が吸い込まれてゆき、余裕の表情をむけるファリエルの顔が見えた。
「さすが反魂士ですね。けれどそれが私と戦うために必要なものとは到底思え・・・・・もう来ましたか、メツ!!!」
「悪ぃな、これでも神威なもんで」
ファリエルはオレに背を向けて、向こう側にいるメツと話を始めた。それを好都合だと思ったオレは「業火」の刃をファリエルの背に勢いよく当て、胴体を引き裂こうと思ったのに、彼女の身体は何も変化しなかった。
むしろ彼女の笑い声が薄れる視界の中で聞こえてくるだけになった。
オレは何をされた。オレは何のためにここへ来たんだっけ。
夢追い人になって、夢を守るためだった。じゃあオレの夢って何だ。
オレの夢は・・・。
地面に横たわるオレの身体をファリエルが見下ろしてくる。何をするつもりなんだろう。
「ちっぽけな夢ね。まあいいわ、その夢食べてあげる。でもその前に貴方を殺してあげるわ!!!」
ファリエルはメツへ向いて動きを止めた。
「久しぶりだなあ、テメェとコレで向き合ったのは」
なんとか起き上がったオレは地面に座ったまま二人を見た。ファリエルは背中しか見えないけど、メツの顔が一瞬視界に入ってオレは驚いた。
メツの目の色がいつもと違う。いつもは青緑色なのに、今だけは左目だけが金色になってる。
「私は貴方の事本当に愛していたのに、貴方は違っていたですね」
「途中から好きでいたかもしれねえぜ」
そうメツが言った瞬間、ファリエルがオレの横を通り過ぎて逃げ出した。
メツは溜息をついてオレの腕を引っ張って立ち上がらせてくれ、
「雪中花=ファリエル。偽名は呪=ソウ。アイツは最初の犠牲者なだけだ。行くぞリョク」
メツが言った事は、ファリエルを助ける事。でもそれはきっと残酷にも殺す事なんだと理解出来てしまった。だからオレはヴァイオリンを持つメツの後を追って、ティムが捕まっている現場へ着いた。息一つあげていないメツに疑問を抱きつつもティムを捕えている本人を見る。
「メツさん・・・・!」
ティムは白く長く伸びた腕の中でギリギリと首を絞められている。そしてその腕はゆっくりとオレ達の方へも近づいて・・・
「だから無駄だと言っただろう、ファリエル」
メツの前でバチバチと青い火花を出し、べちゃっと地面へ落ちた。
「面倒な能力者ですね。では後ろの方の命を頂きましょう」
地面へ落ちた腕がずるずるとオレへ近づいてくる。メツは何もしてはくれないらしい。腕はオレの身体に巻き付いて来るけど、それをどんなに強い力でとろうしても離れないし、千切れない。
や、ヤバイって!!! マジでオレ死ぬって!!!

<根本から千切れればいい>

何処からともなくレキの声がして絡みつく腕がぶちりと細かく千切れてゆき、同じ様にティムも腕から解放され、痛みに蹲るファリエルの傍から彼女をメツが助けだし、
「来んのが遅ぇんだよ」
「五月蝿いな。ちょっと色々心の整理をつけに行ってたんだよ」
オレの隣でレキが立ってる。おっ前、今までどこに行ってたつもりだよ!
お陰でオレがどんな目に遭ったと!!
「メツだって守ろうとはしてくれたんでしょ?」
「一応な。でもお前みたいな事は無・・・・・というか知ってたのか、俺の素性を」
「僕を誰だと思ってるの?」
メツはフッと笑い、ティムとオレを両脇に抱えレキの傍から少し離れた。
「この辺で大丈夫か?」
「多分ね。というかティムは持って行かないでよ」
「そうですメツさん。私は一応レキさんの味方なんですから!」
「あくまで一応なんだ」
クスクス笑ってるレキの元へティムは行って、いつものオレの立ち位置に立って、レキを見る。レキは何も言わずに頷いて倒すべき相手を見た。
「久しぶりね、推古=レキ。そして水花=ティム、今度こそ殺してあげるわ」
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