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セントラル国東ゲートを難儀なく通過した僕達は中央塔までバイクを飛ばし、二手に分かれた。
ロキだけが家に帰り、僕とリョクは買い物へ向かった。
というのも、さっきゲート番人とロキが喋っている間、リョクが
「オレも新しい服欲しい・・・・涼しいやつ・・・・」
ブツブツ言っていたから、服を買いに行く事となった。
セントラル国は、周りを囲む四方国の国土を遥かに越えてる国土を誇る国なために、国内部を十のエリアに分けている。
その中で、衣服や雑貨などを多く取り揃えているエリアの名称は、普通にエリア3。
ただ問題なのは、あまりに国土が広いために行くまでに時間が掛かる事。
そうして着いたエリア3には、多くの人が通りを闊歩していた。
そこをバイクで通過するには、危ないと判断した僕達はバイクを安全な場所に停車させておいて、歩く事になった。
それにしても、僕はこの国で知名度がそれなりにあるとはいえ、リョクも結構目立つから行き交う人々が僕達を見てくる。
嫌だなあ・・・。
そうこうしていると、リョクがパタパタと走って一件の店へ入った。
そこへ僕も入っていくと、店内にいた女性店員がリョクをじっと見ている。
そして見られている事に全く気づいていないリョクは、楽しそうに服を選んでる。
そんな彼女へ僕は、
「僕はちょっと行く所があるから、何かあったら連絡入れてね。リョク」
「おうっ!!!」
嬉しそうに返事をするリョクを見た後、僕は店長らしき人に
「アイツに似合う服選んでやって下さい。それと衣服代金は、推古=レキの名義でお願いします」
と言って、店を後にした。
僕は、通りに止めたバイクのエンジンを掛けセントラル国の中央区域であるエリア1へ急いだ。
そこで会わなければならない人がいるから。


エリア1のほぼ中央に、とても高さのあるビルがある。そのビルは、セントラル国国防連合軍警察庁のビル。その最上階に、国防連合軍警察庁所属警視総監殿がいる。その人と僕は、ある繋がりがある。ビルの前にバイクを止めた僕は、誰かに捕まえられる事もなく、すんなりと通っていく。
一階ロビーにいる受付嬢の前を通って、エレベーターに乗った僕は自分の格好を改めるべきだったかな・・・と思った。エレベーターのドアが開くと、目の前に両開きの大きなドアが見えた。そのドアを開けると、一人の男が忙しなく電話の相手をしていた。それでも僕の気配には気づいたらしく、手を軽く振った。電話が終わるのを待つ間、僕はただ広だけの部屋で警視総監殿を待っていた。
「―――――ああ、分かった。アイツにもそう伝えてくれ」
電話を終えた警視総監殿は、僕を手招きした。
「お帰り、レキ」
「うん。ただいま、ロク」
彼は、僕より一歳年上の水面=ロク。ニッコリと微笑むロクは、そのままの顔で僕へ向けて銃弾を撃ち放った。
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その銃弾は僕の左頬を真っ直ぐに進んで後ろのドアに命中した。身動き一つしない僕にロクは、
「さすが後輩」
と言うから、僕は彼に近寄って頬をつねる。
「いつ誰がキミの後輩になったって?」
悪意を込めた笑顔をロクに向ける僕はギリギリと彼の頬をつねる。でも、その力さえ勿体無く思って手を離して、机に腰を下ろした。
「机に座るなって」
「ん?」
聞こえないフリをする僕は、徐に小型ノートパソコン型携帯電話を弄る。
誰からかメールを受信してたから。
「お前、まだそれ使ってたのか・・」
「まだって・・・まだ二年くらいだよ?」
「そうだったか?」
「そうだよ」
机に腰掛けている僕は膝にパソコンを置いてメールの受信ボックスから新着メッセージを開ける。その作業を、ロクは横から見てくる。
「あ、メツからだ!」
「知り合いか?」
「うん」
「そか」
そういうとロクは、手にしていた軍の資料に目を通すためにソファへ座った。にしても、何でメツからメールなんか・・・。別に嫌なわけじゃないけど、何かあったのかな?
【今何処にいるんだ】
うわあ・・・相変わらずっていうか・・何ていうか・・ってカンジの言葉だね。僕は、画面へ文字を叩き込む。
【セントラル国だよ。でも何かあったの?】
叩き込んだ文字を転送させて、パソコンの蓋を閉めた僕は、ソファに座って仕事をしてるロクに飛びつく。
「うおっ!?」
「魚・・・?」
「阿呆か。何か聞きたい事でもあんのか?」
ロクは資料から目を逸らして、僕へ問いかける。
「聞きたい事っていうか、言っておきたい事なんだけど・・・」
「その前にお前もソファに座れって」
しぶしぶロクから離れた僕は、ソファに腰を掛けてさっきまでとは違う顔を露にする。
「セントラル国東ゲート近くでガラの悪い集団に遭遇したんだけど、僕がいない間に何かあった?」
真剣な声をロクへ向ける僕に、セントラル国国防連合軍警察庁警視総監である彼は重い声で
「実は、今から半年前エリア10にある貧困街で暴動が起こった。軍で制止する事は出来たけど反連合軍勢力の者達が国外へ逃亡したんだ・・」
そう言うとロクは、立ち上がって机の引き出しから一枚の写真取り出して、それを僕へ手渡した。その写真は空中から、ヘリコプターか何かで撮影したらしい物で、写っていたのは、道に赤いペンキで書かれた僕の名前。
「どういう事?」
「それが全く分からないんだ。彼等から、推古=レキが国へ戻って来たらこの写真を見せろ。って言われただけだからなぁ」
溜息をつくロクに対して僕は、頭を抱える。今からエリア10に行っても構わない。ただ、それは僕がこの国へ一人で戻って来ていたならば。そんな僕へ、パソコンの側面の青く光るライトがメールの受信を知らせた。
メツかな・・・。
と思いつつ新着メッセージを開くとそこには、
【エリア10へ来い!!!】
たったそれだけの短いメッセージが画面に映る。でもその送信相手の名前を見て僕は息を呑んだ。
【FROM:仁義=リョク】
一人にさせるんじゃなかった。多分外で遭遇した奴等の仲間が僕達をずっとつけていたのかもしれない。
「っあ゛あっ!!!!!」
「突然何て声上げて―――・・これって」
ロクはパソコンの画面を見て動きを止めた。僕はパソコンをロクに預けて、荷物の中から二二口径自動式制銃「雪の人」を腰のホルスターへ差し入れ、予備の銃弾を専用のケースへ入れ、赤外線暗視ゴーグルを首に掛けた。
「おいっ!まさか一人で行く気か!?」
「そうだけど何?」
「普通に危ないだろ・・・・」
僕は、先刻とはまるで別人の様なオーラを浮かべロクを見て
「いつ誰が一人で行くって言った?」
嘲笑うかの様にハッと笑った。すると直後、窓を突き破って悪魔が警視総監殿の部屋へ侵入し、漆黒の翼を羽ばたかせ床に足を落とした。
それを待っていた様に、ドアが勢いよく開き欠伸をしながら部屋へ入る眼鏡を掛けた男が僕へ声を掛ける。
「さっさと行かへんと、命のぅなってしまうんちゃう?」
眼鏡の男は、隻眼=コーマ。悪魔は、盟誓=シェル。
そんな二人を見たロクは、
「なるほど。なら、軍は警備を上げておいてやるよっ」
「ありがとう、ロク警視総監殿」
「感謝される立場じゃないぜ、四代目」
そして僕は悪魔のシェルを窓の外へ放り出し、僕自身はコーマと一緒に窓の外へ飛び降りた。地に叩きつけられて死ぬ事は無いよ。その前に言葉士の最高権力保持者である【詞華】の地位を獲得しているコーマが、どうにかしてくれるだろうから。僕だって詠歌師だから自分でどうにか出来るけど、落下してる途中コーマが
「無理したら命落としてまうで?」
とか言うからお願いする事にした。だって、こんな下らない事で命落としてる場合じゃないからね。無事に地面へ降りた僕とコーマはそれぞれのバイクのエンジンを急いで掛け、空中で暇そうにしているシェルに
「先に行って偵察して来て!」
と言い、その言葉に従ってシェルは空中を華麗に飛んで行った。
「レキ!行けるで!!!」
「行こうっ!!!!」
僕はゴーグルを装着してバイクでエリア10向かう。
セントラル国は、あまりにも国土が広いために10の区域に分けてある。その中で最も治安が悪い区域を、エリア10という。そこへ僕は向かってるわけだけど、セントラル国国防連合軍警察庁がある場所がエリア1といって、国の中央になってる場所だから、そんな場所からエリア10へ行くのには結構な時間が掛かる。何故ならエリア10は、セントラル国の北部にあるから。どんなに急いで行ったとしても、二時間程軽く掛かってしまう。そんな場所へ僕は行っているわけだけど・・・・何ていうか面倒くさいよね。あーあ、今の僕って心底やる気ないなあ。

ブレーキを掛けて止まった僕とコーマの運転するバイクの前に突如現われたのは数人の子ども。とは言っても、僕とそう変わりない年齢の子ども達。
「どないしたんや?」
バイクに跨ったまま、子ども達へ声を掛けるコーマは眉間にシワを寄せる。何故ならここはエリア10。僕達は此処の住人に妬まれても可笑しくは無い場所や区域に住んでいる者だから。
「殺し屋だ・・・」
子どもの一人が小さな声でそう言うと、他の子ども達が口々に
「助けてくれるかな・・・?」
「でも間違って俺達が殺されかねないんじゃないか・・?」
「大丈夫だよ!だってあの人は・・・・」
「殺されたら殺された時じゃねェの?」
「ルーアを助けてくれるなら声掛けないと・・・・!!!」
言っている。そんな彼等へコーマが怪訝な顔つきのまま
「全部丸聞こえやで!!!!」
子ども達へ叫んだために、子ども達が一歩後ろへ下がった。
あーあ。
そんな喋り方なうえにそんな態度なコーマの頭を軽く一発叩いた僕は、
「何か用があるなら、さっさと言った方が――――・・・」
言ったほうがいいよ。と言おうとしたけど、子ども達の背後に迫り来る気配を察知した。でもね、忘れてはならないんだよ。もう一人此処へ来ている事を。僕は、ズボンのポケットから小さな横笛を取り出して、音を鳴らす。
ピィ――――――――――――――――――――――
その音に反応したコーマは、子ども達全員を一発の強烈な風で横道へ導かせ、そこへ自分の身体も入り込ませた。道に残された僕と二台のバイクは、エリア10の独特な雰囲気に相俟って来る。バイクから降りた僕は、暗雲が空を覆い始めたのを確認して、首から下げていた赤外線暗視ゴーグルを装着する。そこに映るものを見て驚いた。横道にいるのは分かっていたつもりだけど、廃ビルの屋上にもかなりの数がいるうえに、ゴミ箱の陰にもいる。つまりは、数えられる程じゃないって事。そんな場所にいる僕の存在は奴等にしてみれば、かっこうのエサみたくなってる。そこへ、横道へ吹っ飛ばされたはずの子どもの一人が道へ飛び出して、僕の後ろへ駆け寄って
「アイツ等、父さん達を殺したんだ!!!!!!!!!!!!」
奴等の方へ言葉を飛ばした。その言葉に僕は子どもの方へ向き直り、
「空の旅へご招待♪」
と言い、
『風よ 吹き荒れろ』
子どもを空へ吹っ飛ばした。叫び声を上げる子どもを見送る間、僕はじっと空を見ていた。そこへ、漆黒の翼を持った全身を漆黒の服で纏っている悪魔が子どもを捕まえたのを確認して、二二口径自動式銃「雪の人」を腰に吊るしたホルスターから抜いてリミッターを外す作業に移る。
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