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ケーストルア国っていう国で一人で歩くオレは、ただ呆然と歩く。
それが凄く悲しい。 レキが傍にいないだけで。 こんなにも悲しくて寂しいなんて思わなかった。 「失せろ」と言われたその言葉が鋭くオレの心に突き刺さる。 過去のオレの記憶が今のオレを哀しみの底へ落とそうとする。 オレはそんなに手が掛かるんだろうか。 レキ、オレはお前の手伝いは出来ないのか? オレはお前の手助けをしては駄目なのか? オレはお前の何なんだ? どうしていつもオレを守ってくれる? どうしていつもオレを心配してくれる? 本当は分かってるけど、レキが「失せろ」と言った言葉が全てを覆してしまいそうで怖いんだ。 きっと・・・。 オレは弱い弱い一人の人間だ。 でもレキは沢山の人々から尊敬される強い強い人間なんだ・・・。 本来なら手なんか届かない所にいるはずのお前はオレを何だと思ってるんだ? 聞きたい・・でも聞けない。 何故ならオレが昔のオレみたく素直じゃないから。 そんなことを聞いた所で、馬鹿にされて置いてけぼりにされて必死に追いかける。 そんな繰り返しが嫌いなわけじゃないけど、もっとオレを戦いに入れさせて欲しい。 「夢追い人」になったから今回の仕事があったんだろう? それならどうしてお前はオレという人間を戦わせない? だからオレはオレを失くして【サラ】を目覚めさせてしまった。 オレはサラが怖いんだ。 サラは計り知れない力を持った人間で、無力で非力なオレとは別の人間のようで、それが人の目に触れるのが怖いんだ。 オレは昔からサラの心の中にいた。 サラはオレの存在を知っていた。 でもオレを隠そうとしていた。 それはオレが存在を持たない者だから。 だけど、その均衡は脆く崩れた。 サラの心に深い傷が刻まれた。 その反動でオレが現われた。 その時出逢ったのはレキ。 だからオレを解き放ってくれたのはレキ。 サラの心に傷を入れたのはレキ。 レキはサラをある目的実現のために探していたんだと。 そう言っていた。 でも本当は違うと思う。 何故ならサラがたまにオレに言うんだ。 『レキ様は、私を助けてくれた大切な人』 哀しみの底で小さく呟くサラの声はいつも震えてる。 その理由をオレは知らない。 オレという存在は16歳からしか、この世界存在していない。 その以前の記憶はほとんど無い。 オレが何処の人間なのか。 人間ですらないのか。 何も分からない。 小さな池を覗き込んで考えるオレは、風に揺れる水面をじっと見つめる。 「オレって誰だろ」 『また悩んでいるの?』 サラが心の中から問いかけてくる。 「この身体はサラのだろ」 『・・・・そうとは言えないわ』 サラはいつだって簡潔な言葉でオレへ言葉を返す。 溜息をつくオレにサラは何も言わない。 だってオレ達は、二人で一人。 オレの苦しみはサラの苦しみ。 サラの苦しみはオレの苦しみ。 レキには秘密だけど、オレはオレ自身の身体を捜してる。 この世界の何処かにオレはきっといる。 「夢追い人」になったもう一つの理由がそれ。 サラは止めろっていうけど、でもオレはやっぱり自分の身体が欲しい。 それでサラにはサラという人間として生きて欲しい。 だから「夢追い人」になった。 レキは世界を守るために「夢追い人」として生きてる。 それを利用するのは心苦しい。 でも、もしもその事実を知ったらレキはオレをどう見るかな。 非難の目を向けるかな。 気持ち悪いって言うかな。 『だから何?って言うと思うわ、私は』 「だろうな」 オレは苦笑する。 サラも静かに笑ってる。 傍に止めてあるバイクに手を触れ、誰かがこちらへ向かっている気配を感じたオレは、その方向を見る。 そこにはレキがいた。 バイクを押してオレの方へ歩いてくる。 レキの全身は血に塗られていた。 ただレキはバイクを止めて、両手をオレへ向けて広げてみせた。 オレはそこへ走った。 レキは優しくオレを受け止めるけど、オレの方がデカイせいで尻餅をついてしまった。 オレが慌ててレキから退こうとすると、レキは 「酷い事言ってごめん・・・失せろなんて言って・・・」 震える声でオレへ言う。 その声に反応する様にオレとサラは同時に思った。 本当の事を言っても笑わないかもしれない。 本当の事を言っても蔑まないかもしれない。 本当の事を言っても恐怖に慄かないかもしれない。 この人なら全てを任せても大丈夫かもしれない。 「慣れてるし、大丈夫・・・それよりさ!さっき美味そうなアイス見つけたんだっ!!!食おうぜっ!!!!」 「いいけど、太るよ~?」 「問答無用ッ!」 オレはレキの手を引く。 レキ。 オレはいつかお前に全てを教えるから、その時が来るまで待って欲しい。 お前なら待ってくれるよな? 「あのさあ、その前にシャワー浴びないと確実に店の人に怖がられるんだけどー・・・」 レキの溜息が聞こえる。 それを笑ってオレは返した。 【夢追い人 第十五話 リョクとサラ End】 PR |