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アシュレという王国に、哀=サラと神=ソラという双子の姫君がいた。
二人の性格は双子とは思えないほどに似ていなかった。でも二人はいつでも一緒にいた。けれどその幸せは突然脆く崩れた。 二人がちょうど十歳になったある日、両親と双子の姉のサラが隣国へ訪問することになり、妹のソラは一人で留守番をする事となった。 サラはソラが心配だと言っていたけれど、ソラは大丈夫だから。と言って両親と行くように言った。サラはソラの言う事に従い、両親と共に隣国へ行った。サラ達が隣国へ行っている間、ソラは暇を弄んでいた。暇すぎる時間の中で、ソラは書物庫で怪しげな本を見つけた。見たことの無い文字なのに、何故か読む事が出来、ソラは今までにない程に嬉しい気持ちになっていた。そうした時間が過ぎ、書物庫を出て自分の部屋に行こうとした、まさにその瞬間、彼女の心臓に一刀の刀が突き刺さった。 何が何なのか分からない。そんな錯乱状況の中に陥ったソラは、何が何でも死んでしまいたくないと思った。でもその意思とは裏腹に、彼女の命は尽きた。 サラは何事もなく自国へ両親と共に無事帰り、城内を走り回ってソラに土産として買った赤い宝石を握り、懸命に探した。けれどソラの姿はない。気配だけはするけれど、姿が見えない。その事に違和感を覚えたサラは両親の力を借り、ソラを探し始めた。 そしてようやく見つかったソラは、城内で最も眺めの良い部屋の中央で死んでいた。見つけたのは、他でもないサラだった。 彼女は右手に握り締めた赤い宝石を手の中から落とし、左手に握り締めた青い宝石が大理石の床に落ち、音を立てた。その音は城内を駆け巡り、両親や召使全員を彼女達のいる部屋に集めさせた。 赤い宝石はサラの元を離れず、青い宝石はソラの元へと転がった。 そしてその青い宝石は美しく煌きソラの肉体を包み、一瞬にして弾けると、ソラの姿は瞬く間に消えた。彼女がいた場所に両親が進み、言った。 「やはり惹かれたのだろう・・・・ソラは」 「そうですね・・・」 サラはその言葉の意味が分からなかった。何故ならサラはソラが読めたあの本を一度も読めたことは無かったから。 両親は、ソラが異界の言葉を読める事も話せる事も知っていた。 ソラは、幼き頃冥界の扉を自らの力のみで開けることが出来た。それを両親は知っていた。それ故にソラが消えてしまった事も一応は理解していた。 でもサラは違う。サラは自分の中にみなぎる力を抑える事が出来ず、全てを解放した。すると冥界の扉が現われ、その扉が開いた。サラだけが何の驚きもなくその扉を見つめていた。扉の内側から猛烈な風がこちらへ吹いてくる。その風に足元を取られサラ以外は立つ事もままならない。 そしてサラは扉の内側にソラに似た人間がいるのを見た。けれど意識は途絶えた。 それから何年も経過した時、サラはもうソラの事を心の奥に仕舞っていた。母親が病死し、父親も戦で戦死。サラにはもう家族と呼べる者はいなかった。 そんなある日、彼女の元へ一人の少年が訪れた。ただその少年がこの王国へ初めて訪れた者だった。 PR
旅を始めて一年が経って、ようやく東の端まで来れた。
俺は推古=レキ。表向きは、夢追い人で裏社会では殺し屋やってる。そんな俺がこの東の端まで来たのには理由があった。それはアシュレ王国っていう一国に凄腕の言葉士がいると聞いて来たわけなんだ。でもこれは俺の意思じゃない。連れの奴が、どうしても来たいと言ったから。それにまあ、美味いもんがあるっつってたし、まあ、いっか。と思ってさ。そんなこんなでアシュレっていう国を探してんだけど・・・っと見つかったみたいだ。そうして入国したアシュレ王国は、かなりの勢いで荒んでいた。連れからは、活気のある綺麗な国って聞いてたのに真逆万歳状態じゃねえかよ!!! 俺は溜息をついて「歩くの面倒くせー」と言うけど、連れの盟誓=シェルと隻眼=コーマの二人が問答無用で店へ投げ入れる。 「うわあっ!!」 無論床へ叩きつけられた俺は、むくりと起き上がるが何故かシェルが顔を近づけてくる。それを避けて俺は二人から逃げる逃げる。でも逃げた先に人だかりが出来ていた。 「何かあったんですか?」 旅人チックに尋ねると、一番近くに立っていた国民の一人が 「旅人さんか。いや、明後日この王国の統治者の姫君を暗殺するとか何とかで集まってるんだよ」 と言い、群集の中へ入って行った。 暗殺か。ただの楽しくない国かと思えば、何か楽しそうな国じゃん、ここ。それなら明日は城内に潜り込まねえと・・・。と考え踵を返すとそこには、俺が動くのを待っていた5人の連れがいた。先刻のシェルとコーマに加えての3人は右から掩蓋=ロキ、剛強=セナ、疾戦=エナ。 俺は全員にそれぞれの明日の行動を伝え解散したが、俺の左隣にコーマの野郎がくっついて離れない。 「おい」 「何や」 「何でいるんだ、お前」 「そりゃあ、お守りや。何せレキは当主といえどまだガキやからな~」 五月蝿い黙れ、このエセ地球人。俺はコーマはほぼ無視したままアシュレ王国の城の裏城門を窺う。そこには二人の門番がいるけど、半分寝てやがる。おいおい、いーのかよ、そんなんで。 っと今姿を見られちゃ不味いから、俺とコーマは荒んだ街並みへ戻り、双子が見つけてくれた宿にチェックインし、その日はそれで幕を閉じた。 翌日 珍しく誰よりも早く起きた俺は、さっさと身支度を済ませ、宿主に作ってもらった朝食を食べ、城へ向かった。そこには昨日と同じ群集がいて、俺の道を阻んでくれている。仕方なく俺はその間をすり抜けて城内へ入り、荒んだ町とは別の景色が広がる広い庭に足を踏み入れた。そして僕は庭から続く通路を進む。 誰もいない、誰の気配もしない、この城の中を俺の足音だけが木霊し、足は止まった。俺と年齢が変わらないであろう、銀髪の綺麗な女がいた。そいつは俺を見て恐れ慄いていた。それはどうしてか、何て野暮なこと考えないさ。女は俺に言う。 「貴方は誰ですか?」 と。俺は静かにその質問に答えてやり 「俺は夢追い人。じゃあな、アシュレ王国の姫君」 踵を返して元来た道を戻り、宿へ戻った。そこでは昨日俺に命令されたことを着実にこなしている5人がいて、俺を見て全員がそれぞれに俺を見て頷いた。準備は周到に。今宵の宴は儚い記憶に。 そうなる様に俺達の準備は始まる。
満月が夜空に瞬き、星が輝く深夜に人口の川に掛かる箸にもたれ、城を見る。その城の中からは乱闘と思しき声が聞こえる。下らないよなあ~・・・自分の力がどれ程のものなのか分かっていない人間て。
まあ、分かったとしても何の得にもならないだろうけど。 そんな風に、呑気に考えていると聞きなれぬ足音が近づいてくるのに気づいた。その足音の主は、気の抜けた、うねうねとした声を出す。 「あっらあ~ん! アンタ、こんな所で立ってちゃ死ぬわよぉ?」 がっちりとした体格に不似合いなフリフリレースのエプロンをつけたオカマが俺の隣に立ち、川の水面を見始める。 「この国はどうなるのかしらねぇ? 思わない?」 「旅人なので」 俺はサラッと言い放つ。 「そっ? アタシは大変だと思うのよ」 オカマはさっきから大声で言って五月蝿い。でも今は聞いていてもいいか、と思い、黙ったまま。 「アンタ、旅人っていうけど、まさか夢追い人じゃないでしょうねぇ?」 そのまさか。 「表の職業はどうでもいいのよ、アタシ的には。裏の職業が気になるのよね。分かる? この気持ち」 その質問にどう答えるべきか迷う上に、時間が無くなってきた。城から反魂士、独特の能力発動時に詠われる歌が微かに耳に届く。俺はオカマへ問う。 「俺がもう一度この場所へ戻って来るまでに、ここにいられるか?」 「えぇ」 「じゃあ、男一人隠すことが出来る布を用意しておいて欲しいんだ♪」 ニッコリと微笑む俺にオカマは頷いてくれた。その代価に俺は深夜の暗闇の中で静かに、まるで歌うように自分の立場を明かす。 「俺は夢追い人件殺し屋ヴォイド四代目当主、推古=レキ――・・・」 そしてそのまま、城へ走った。 薄暗い城内を歩いていると、突如足元の感覚に違和感を感じ見ると、足元には人間の右腕が落ちていた。それから足を退けて、またぐしゃりぐしゃりと肉片を踏み進みながら血に濡れた大理石の上を歩いていく。人間の死体独特の臭いが充満し、普通の人間では耐えられない空間に成り果てつつある場所で平然とする自分を少し褒めてやってみる。 そんな時、頭を巡るのは他の奴等の安否。悪魔騎士のシェルは魔剣「ラグナロク」を持っているから大丈夫で、言葉士、詞華のコーマも詞杖「円舞」を持っているし、エナは自慢の怪力があるし、エナとロキは死神だから大丈夫だと思うけど、それでも一応は心配しておいてやる。まあ、エナは特に武器とかを持っていないから心配だけど。 それはさておき、さくっと人間殺してみるか。 俺は前方から走ってくる長身の青年の懐に背を向けて入り右手首を掴み一本背負いで後方へ投げ飛ばし、そこへ二二口径自動式銃「雪の人」の弾丸を三発撃ち放ち、今度は左右から向かい来る奴等の方へ短刀「結界」を投げ飛ばし、命中させる。彼等の命は一撃で絶命し、その肉体から短刀を引き抜き死体は放置する。 「雪の人」を腰に吊るしたホルスターに仕舞い、短刀をケースに戻し、足を止めた。そこには冥界の扉を開け放ち、その前に呆然と立っている姫様がいた。扉の向こうに何があるのかは知らないが、壊れた人形の様に向こう側に腕を伸ばしている。 「行くな、阿呆」 俺は姫様から離れて壁にもたれながらそう言った。するとそれに気づいた姫様は腕を伸ばすのを止め、俺の方へ近づき 「止めるというなら殺せ」 と言い、 「殺せ殺セ殺せ殺せ殺セ殺せ殺セ殺セ殺セ殺せ殺せ殺せ殺せ殺殺せ殺せ殺せ殺せこロセ殺せ殺セ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺セ殺せ殺せ殺せ殺セ殺せ殺せ殺セ殺せ殺セ殺せ殺せ殺セ殺せコロセ殺セ殺セコロセ殺せ殺せ殺せ殺殺せ殺せコろセ殺せ殺せ殺セころせ殺セ殺セ殺セ殺せ殺せ殺せ殺せ殺セ殺せ殺せ殺セコロせ殺せ殺セ殺せ殺セコロセ殺セ殺せ殺セ殺せコろせ殺せ殺セ殺せ殺せ殺せ殺セ殺せ殺せ殺せ殺セ殺せ殺せ殺せ殺セ殺せ殺せ殺せ殺セ!!」 頭に響く声が「殺せ」という単語を酷く城中に轟かせている。 「殺セ。人間ヲ守レヌ者ハ死ヌ運命ニ有ル。殺セ。殺セ。オ前ハ殺シ屋ダロウ。血塗ラレタ運命ヲ持ツ者ダロウ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セ。殺セェッ!!!!!」 哀しみの懺悔の様に聞こえるその言葉に俺は息を吐く。扉は除々閉じ、姫様が俺に詰め寄る頃には完全に扉を閉め跡形もなく消えた。 姫様は扉が消えたことを哀しみ、また「殺せ」と言い始める。でも今度は俺へ向けてではなく、城内にまだいるであろう姫様を殺すためにだけ存在している人間に向けて、だ。無論その声を聞いて集まるのは下等生物だけ。ただし、その全ては悪魔騎士と二人の死神が無残にも殺してゆき、全身を鮮血に染めて笑顔を俺へ向け、そんな三人の体力をコーマが完全に回復させていく。そしてコーマの後ろではエナが邪魔な死体を壁に寄せて片付けていた。それも楽しそうに。さて、下等生物達はアイツ等に任せて俺は姫様と話でもしよう。姫様は涙を頬に伝わせ儚い声で泣いている。 そんな彼女を俺は担ぎ、窓を割り、そこから真下の池へ急降下した。 |