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オレは何をされた。オレは何のためにここへ来たんだっけ。
夢追い人になって、夢を守るためだった。じゃあオレの夢って何だ。
オレの夢は・・・。
地面に横たわるオレの身体をファリエルが見下ろしてくる。何をするつもりなんだろう。
「ちっぽけな夢ね。まあいいわ、その夢食べてあげる。でもその前に貴方を殺してあげるわ!!!」
ファリエルはメツへ向いて動きを止めた。
「久しぶりだなあ、テメェとコレで向き合ったのは」
なんとか起き上がったオレは地面に座ったまま二人を見た。ファリエルは背中しか見えないけど、メツの顔が一瞬視界に入ってオレは驚いた。
メツの目の色がいつもと違う。いつもは青緑色なのに、今だけは左目だけが金色になってる。
「私は貴方の事本当に愛していたのに、貴方は違っていたですね」
「途中から好きでいたかもしれねえぜ」
そうメツが言った瞬間、ファリエルがオレの横を通り過ぎて逃げ出した。
メツは溜息をついてオレの腕を引っ張って立ち上がらせてくれ、
「雪中花=ファリエル。偽名は呪=ソウ。アイツは最初の犠牲者なだけだ。行くぞリョク」
メツが言った事は、ファリエルを助ける事。でもそれはきっと残酷にも殺す事なんだと理解出来てしまった。だからオレはヴァイオリンを持つメツの後を追って、ティムが捕まっている現場へ着いた。息一つあげていないメツに疑問を抱きつつもティムを捕えている本人を見る。
「メツさん・・・・!」
ティムは白く長く伸びた腕の中でギリギリと首を絞められている。そしてその腕はゆっくりとオレ達の方へも近づいて・・・
「だから無駄だと言っただろう、ファリエル」
メツの前でバチバチと青い火花を出し、べちゃっと地面へ落ちた。
「面倒な能力者ですね。では後ろの方の命を頂きましょう」
地面へ落ちた腕がずるずるとオレへ近づいてくる。メツは何もしてはくれないらしい。腕はオレの身体に巻き付いて来るけど、それをどんなに強い力でとろうしても離れないし、千切れない。
や、ヤバイって!!! マジでオレ死ぬって!!!

<根本から千切れればいい>

何処からともなくレキの声がして絡みつく腕がぶちりと細かく千切れてゆき、同じ様にティムも腕から解放され、痛みに蹲るファリエルの傍から彼女をメツが助けだし、
「来んのが遅ぇんだよ」
「五月蝿いな。ちょっと色々心の整理をつけに行ってたんだよ」
オレの隣でレキが立ってる。おっ前、今までどこに行ってたつもりだよ!
お陰でオレがどんな目に遭ったと!!
「メツだって守ろうとはしてくれたんでしょ?」
「一応な。でもお前みたいな事は無・・・・・というか知ってたのか、俺の素性を」
「僕を誰だと思ってるの?」
メツはフッと笑い、ティムとオレを両脇に抱えレキの傍から少し離れた。
「この辺で大丈夫か?」
「多分ね。というかティムは持って行かないでよ」
「そうですメツさん。私は一応レキさんの味方なんですから!」
「あくまで一応なんだ」
クスクス笑ってるレキの元へティムは行って、いつものオレの立ち位置に立って、レキを見る。レキは何も言わずに頷いて倒すべき相手を見た。
「久しぶりね、推古=レキ。そして水花=ティム、今度こそ殺してあげるわ」
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妖艶に笑うファリエルは魔術を使いながら間合いを詰め、顔のすぐそばまでやってきて、また笑い、長く伸びた爪を僕の頬へ立て、ざくっと頬に傷を入れる。
「抵抗しないのは殺して欲しいからですか、レキ」
「抵抗しないのは意味が無いからだよ、ファリエル」
ニィと笑う僕の右手には知らぬ間に一本の剣がある。その剣をガチャッと鳴らすとファリエルは驚いて後ろへ飛び退いた。
「誰の武器ですか・・・!」
「姉様が使っていた武器です!」
「あの人間が使っていた武器ですか。それをレキへプレゼントとは以外ですよ、ティム」
「だあれが、レキにプレゼントしますか! 貸しただけです!」
ティムはそう言いながら僕を指差してる。それに苦笑いした僕は、武器の刃を相手へ差し向け、一気に加速する。



「・・・!!」
ごぽりと血が口から流れ出した。
「私を殺そうとなんてするから自分の命を縮める事になるんですよ」
右手から武器が落ち、僕の体は地面へと倒れていく。彼女の長く伸びた腕が僕の腹部を強く押した。それがただ強く押しただけなら血を吐いたりはしないはずなのに、どうして血を吐くはめになったのか分からない。
薄れる視界を無理矢理止め、何とか身体を起こした僕の前にリョクが立ちはだかるメツと一緒に後ろに行ったはずのキミがどうして此処にいるの。
「ガキは下がってろ。相手は俺じゃねえと不服だろ、ソウ!」
「ふふっ・・・・・・アタシでいいなら相手してあげるわぁ~んっ」
バチバチと火花炸裂の場所を何とか離れると、リョクとティムが僕を守る様に左右に立った。
視界に入った場所だけで、奇怪に蠢く何かがいる。それに気づいた二人はその方向へ武器を向け突っ走って行く。
残された僕は地面に腰を下ろしてメツの背中を眺める。負傷した僕に動く事なんて出来ないしね。
面倒事になる前に殺しておけば良かったんだろう。あの時の俺の判断が鈍ったのは事実だ。今更過去を悔いても意味なんて無い。相手は人間じゃない。分かっているはずなのにどうして行動を起こせない。
相手は的確な判断で俺の命を狙っているのに。リョクやティムは雑魚の相手を必死にしているのに。
俺はまた判断を鈍らせているのか。吟遊詩人 神威の名が廃りそうだな。
「ちょっとぉ、メッツゥ~。アタシ、愛してるのにぃっ~!」
お前は人間に戻れただけの人間の屑だ。そんな奴はこの世界に必要ない。
消えろ。俺はお前の様な奴等が嫌いだ。
「わりぃな、俺はお前を愛せない」
「あぁんっ! いけずぅ~!」
そうやって喋っていられるのも今のうちだ。お前の仕掛けてくるその腕の先端に、体全身を痺れさせる毒が塗られてるのは知ってるから、その腕を削ぎ落としてしまえば意味なんてない。
でもどうしてくれようか、生憎俺は武器を持ってない。お前如きにヴァイオリンを使うのは勿体無い。
レキは毒に当てられて身動きを取れないだろう。いや、動けるか。アイツも俺と同じなら動けるはずだ。相手から飛び退いた俺は、地面に座って俺を見ていたらしいレキを無理に立ち上がらせる。フラフラと俺の方へ傾くレキは、ごもりながら
「自分に命令したら動けるかもしれない。失敗したら一人で頑張ってよ」
そう言ってくれた。するとレキは小さな声で自分に命令を下し、しっかりと地面に足をつけ、腰に吊るしたホルスターから銃を抜き、俺から離れた。
「レキ」
呼び声に反応しないレキの瞳に生気は無かった。倒す相手だけを見ている。あの馬鹿野郎! ガキはガキなだけか!! 俺は銃口を相手へ向けているレキを地面に押さえつけ、
「やっぱりお前に頼むのは止めだ。ガキは黙って大人しくそこにいるんだな」
レキの呪縛は解け、俺はレキから離れ、向かうべく相手を見た。呑気に笑ってやがる相手を殺す。失敗の無いように。
「頑張りなよ、メツ」
地面に座るレキが声を掛けた瞬間、俺が回りに張っていた結界という一種の障壁にファリエルの腕が激突した。
結界のお陰で俺は事なきを得たが、腕がレキへ行く手を変えた。レキの能力に障壁なんて文字は無い。瞬時慌てた俺をレキは笑った。
「こんな事になるのは慣れてるんだ」という表情をして。
レキの顔面で腕は止まった。腕はベキベキと音を立てながら内側から破裂した。レキの声が腕よりも速かっただけか。
ファリエルは両腕を失い地面に崩れ悶えている。
実に見苦しい光景を俺は見下ろし、足元にあった一本の剣を手にした。
剣なんてもの使った事は無い。吟遊詩人は剣を使わない変わりに楽器や声を武器にする。
「私を殺せば呪いがお前を苦しめるぞ・・・!」
「別に構わねえよ。一度はお前を殺し損ねた男だ。そのくらいの覚悟はある」
俺は剣の刃をファリエルの頭の上に翳し、勢いよく刃を落とし、目を疑った。いたはずの相手がいない。
「これぐらいで死ぬとでも思っているのですか」
死ぬ直前まで行った相手は俺の背後へ回り込んでいたらしい。
そして俺へ攻撃せず、レキにも攻撃をせず、リョクがいる方向へ飛んだ。
「リョク、何してるの? 手間取ってるなら手伝ってあげようか?」
「何だよレキ! 別に手間取ってるわけじゃ、な      」



レ、キ、じゃ、な、い。
後ろに振り向けない。誰だよ、こんな気配の奴。いくらレキが怖くてもこんな気配じゃない。アイツは怖いとかじゃなくて、殺し屋だから、もっとこう・・・殺意がある気配だから、コイツは違う。
でも今ここで戦う手を止めたら前にいる気持ち悪い奴等に何されるか分かんねえし、後ろ向いたら向いたで怖いし。
どどどどどうしたらいいんだ!!!
「リョク! サラを呼ぶんだ!!!」
おおっ! 本物のレキの声だ。
オレは人間の耳には聞き取れない言葉を紡いでゆき、気力を失いつつ、後ろへ振り向いた。
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