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地面へ向かって下降する身体の向きを空中で上手く変化させ、地面に足を置いた僕の前に一つの墓石がある。その墓石へ近づいて手を当てた。

ドクンッ・・・・・!

心臓が高ぶる様な、とてつもなく嫌な感じがして後ろに振り向くと、そこにはティムが立っていた。拳銃を手に収め、その銃口を僕の額へ向けている。
「姉様の復讐だぁぁぁぁあああああああああっ!!!!!!!」
銃口から残りの銃弾全てが放たれ、それを全て軽い身のこなしで避けた僕は彼女の後ろへ回り込み、首の辺りを軽く手刀で叩き、気絶させた。地面にドサッと倒れた彼女を仰向けにさせ、右手から離れてしまった拳銃をもう一度握らせて、僕はその墓石の前から姿を消そうとして、足先を向けたその方向にソウが立っていた。普段とは別人の表情を浮かべる彼女は、黒のドレスを身に纏っている。
「・・・レキ」
懐かしい人に会ったかの様な仕草をするソウの隣をサッと通り過ぎる。
「戻って下さいレキ!!」
「・・・五月蝿いよソウ。ティムにしたら僕は単なる殺人者だ」
「そうではありませんっ!! 貴方はソウをーーー」
ソウは何かを言いかける。それを遮るようにして僕は声を被せる。
「例え! それがどういう理由であっても、他人から見ればそれは殺人だ。皆の事よろしくね」
逃げるように去って行く僕を追いかけなかった。いや、追いかけられなかったんだろう。気絶していたティムが思ったより随分早く目を覚ましたから。
思い出したくない過去。払拭したい過ちの過去。
静かに重く息を吐いた僕は王家の壁を乗り越えて、街へ入った。


ベランダからレキが落ちて、その後をオレはメツと追いかけたけど、そこにレキの姿は無かった。その代わりにドレスを着たソウがティムと一緒にいる。
「何処へ行った」
「皆さんの事をよろしく。と言い行かれました」
「分かった。リョク、中へ戻れ」
何なんだよ・・・・・。オレがいないうちに何が起こってたんだよ。
レキ、オレに言ったよな・・・一緒に話聞いててもいいって。
なのにどうして、どうしてまたいなくなるんだよ!!!
オレの中で眠るオレの力が漲ってくる。オレをこの場に残したレキが許せない。オレをこの場に残したレキが恨めしい。
「あんま熱くなってんじゃねえぞ」
メツの声にはっとしたオレは平然を装いながらソウへ近づいた。
「どうされましたか?」
「・・・」
オレはすぅっと息を吸い、オレの母国特有の挨拶をソウの前で行う。
「我が名は、アシュレ王国第二王女、神=ソラ。推古=レキと貴方がたの関係を知りたい所存であります」
あんまりにも久しぶりに使う敬語のせいで、顔の筋肉が硬直する~・・・。
でもタメ口で聞いたらきっと流されるんだ。それをオレは知ってるから、今だけはちゃんとしよう。フォローしてくれるレキもいないのだから。
ソウは頭を垂れているオレに
「頭を上げて下さい、ソラ」
と言い、普通の姿勢になったオレを少し見上げて、
「全てお話します」
「姫様っ!!」
「メツ、ティムを連れて行きなさい」
「そいつを殺すなよ、ソウ」
メツはそう言って、口の中にいれていた食べ物をガリッとかじり、それを吐き捨て軽々とティムを担いで建物の中へ去っていく。
「私達と推古=レキの関係を話す前に、推古=レキがどういう存在か貴女は御存知ですか?」
いつも見てたソウの表情からは想像もつかないほどの微笑にオレは圧倒されながら、首を左右に振る。するとソウは語り始めた。
推古=レキという人物について・・・。
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「推古=レキ。彼の出生暦や幼少期は知りませんが、彼の噂なら聞き耳を立てずとも流れてくるものでした。数年前までは」
首を傾げるオレにソウは話を続ける。
「殺し屋の跡継ぎとして生まれた彼は、物心つく前から訓練をしていたそうです。普段はごく普通の少年として過ごす彼も、夜になれば顔を変え、クライアントから受けた仕事を完璧にこなす一人のプロとなります。そして彼は九歳という若さで父親の跡を継いだ。それがどれだけ素晴らしいものかと当時の王族達は思いました。そして彼の力量見たさに彼を自国へ招いたのです」
一度息をついたソウは、場所を変えながら話をします。と言いオレを後に従えながら建物の中へ入る。
「沢山の国を回りながら仕事を行う彼を王族達は褒め称え、様々な貢物を彼へ送りました。けれど彼はその全てをそれぞれの国へ返し、言ったのです。

『貢物を送る前に自分の国の情勢どうにかしたら?』

子どもに言われる筋合いなど無いと王族達は言いましたが、当時王族達が統治する国のほぼ全ての情勢は最悪なものでした。もちろんこの国も例外ではなかったです。そんな彼の言葉に背中を押された国民達は王族狩りを始めたのです」
ソウの話は凄まじくオレには難しい。しかも王族狩りって、もしかしてサラもその被害にあってたんじゃ・・・。
い、今はいっか、んな事。
「国民達は王族の中でも王の首を狩ろうと考え行動を起こします。そんな時、レキがこの国へやって来たのです。この国にいるクライアントから受けた仕事を片付けるために。その話は後回しに。話を続けます。彼は仕事を片付け、この国から去る時に

『醜い争いをするよりもテキトウに生きてる方が幸せだと思わない?』

そう残しました」
「それが?」
足を止めて聞くと、ソウはまた続ける。
「推古=レキには人間が持ち得ない特殊な力があるそうです。その力を使い、王族狩りを人間達にさせた。という話がありますが、事実かどうかは知りません。私が彼について知っているのはそれぐらいです」
オレの方へ向いたソウはまた微笑して、右手に握られた長い杖の先端をオレへ差し向けた。
「何の真似だよ、ソウ」
「貴女には少しの間眠って頂きたいのです」
何でオレがそんな目に逢わねえといけないんだよ。キッと睨むオレに向けた杖の先端の位置を一ミリもずらさずソウは笑い、
「私は、ラクチュラス国王家第一王女、雪中花=ファリエルと申します。本日は貴女の命頂戴に預かりに参りました・・・♪」
ファリエルという名前が本名だったソウが杖の先端から何かを発射させた。回避する方法が分からない!!!
ただ立っているしか出来ない体を誰かが助けてくれた。
いや、オレの前に立ってそれを防いでくれただけ・・・?
「ティム。そこから退きなさい。貴女は私の味方でなかったのですか? 貴女の大切な人を殺した人間の仲間を助けるのですね。いいでしょう。貴女も殺して差し上げます」
オレの前に立つティムが小刻みに揺れていて、ティムは小さな声で誰かの名前を口にした。するとヴァイオリンの音を奏でながらメツが現われ、目で合図した。
逃げろ。と。
オレはティムの手を引いて建物の外へと走る。途中、ティムが街へ逃げられる道を教えてくれて、そこから二人で逃げ出した。
リョク達を逃がしたのは俺の一存だ。
「メッツゥってばぁ、アタシの邪魔するのぉ~んっ?」
魔術士専用の杖を握るソウに、俺はヴァイオリンの音を奏でていく。
「そんな音でアタシをどうするっていうのぉ~?」
「足止めにするだけだ。お前は俺の獲物だからな」
「ふふっ・・・・それってぇ、誰かに指図されたんだったっけぇ? あっれぇ? アタシってばぁ、何も覚えてないかもぉ~んっ」
はぐらかす相手に俺は容赦はしない。ただこれがいつまで持つか分からない。相手がこの音に飽きればそれで終わり、この音に酔えばそれで終わり。どちらになるから分からない。
「あぁんもうこの音やっだぁ~んっ。そ、れ、に、アタシってばこんな所で油売ってる暇ないしぃっ?」
相手は転移魔術を唱え、消えた。その後を追うようにして俺も特別な言葉を唱えた。


街へ出たのはいいけど、やみくもに逃げたって追いつかれるのが関の山。
お、ちょっとオレ頭良さそうじゃん。
「ちゃんと前見て歩いて下さいリョクさん!」
「へ? わりわり」
「ところで今何処向かって走ってんの?」
素朴な質問をするオレへティムは懸命に走りながら、
「商店街で身を隠します」
「そんな事をしてどうするつもりですか、ティム」
走っていたオレ達の背後からソウ、じゃなくてファリエルの声が不意に聞こえた。かなり走って王家から離れたはずなのに、もう追いつかれたなんてありえない。でもここで逃げてもまた追いかけられるだろう・・・オレは魔剣「業火」を鞘から抜いて、ファリエルの方へ向く。
「リョクさんではその人に勝てません!!」
「メツが来るまでオレは戦う! だからティムは逃げるんだ!」
ティムはタッと走って行く。
「ちょうど私も貴女と戦ってみたかったんです。でもその前に命頂くつもりですけど・・・♪」
そう言ったファリエルは急速に間合いを詰め、杖の先端から水を噴射してくる。それを「業火」の炎の刃で防ぎながら、反魂士の言葉を紡いでゆく。一般市民を巻き込まないための防御策なだけではあるけど、それなりに何とかしてくれるだろう。
冥界の扉がオレの背後に出現し、その扉が開き、水と炎が吸い込まれてゆき、余裕の表情をむけるファリエルの顔が見えた。
「さすが反魂士ですね。けれどそれが私と戦うために必要なものとは到底思え・・・・・もう来ましたか、メツ!!!」
「悪ぃな、これでも神威なもんで」
ファリエルはオレに背を向けて、向こう側にいるメツと話を始めた。それを好都合だと思ったオレは「業火」の刃をファリエルの背に勢いよく当て、胴体を引き裂こうと思ったのに、彼女の身体は何も変化しなかった。
むしろ彼女の笑い声が薄れる視界の中で聞こえてくるだけになった。
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