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レキの声をしたり、ソウだった頃の声をしたり、ファリエルの声をしたりする奴なんて消えてしまえばいい。
オレには邪魔だ。なあ、お前もそう思うだろ、サラ。
『ええそうね』
「誰と喋っているのですか、仁義=リョク」
五月蝿い。
『貴女を死後の世界へ連れて行ってあげるわ』
オレの体に乗り移ったサラの意思がオレの体を使って、目の前にいる相手を威嚇する。ファリエルはオレがオレではない事に気づき、相手をティムへ変えたけど、人格が変わったオレは尋常ではない動きでファリエルを捕え、扉を開けた。轟々と風が扉の向こう側の世界へと吸い込まれてゆく。
地面に座るレキが楽しそうに何かを喋ると、オレとティムが懸命に相手していた奴等全てが吸い込まれて行き、扉は閉まり消え、サラもオレから消えていった。オレに戻ったオレと、ティム、メツが一人の人間を囲む。


逃げ場など与えないために俺は、ファリエルを囲む俺とリョク、ティムが立つ小さなこの場所だけに結界を貼る。その結界は吟遊詩人、神威のみが使えるものであり、どんなに優秀な魔術士も魔導師も破る事は出来ない。
唯一出来るとしたら結界外にいるレキが使うあの声ぐらいだ。
リョクが二刀の日本刀の刃を炎と水に変化させ、ティムは銀に煌く剣を構え、俺は金色に輝く左目を中央にいる相手へ向けた。
「終焉まで生きる事が勤めの私を殺せるなら殺してみるがいい!」
その挑発にまずティムが乗り、反対側に立っているリョクが魔剣でファリエルの肉体に致命傷を与える。
炎に変わった刃が肉体へずぶりと食い込み、水から氷へと刃を変えたもう一方の日本刀の刃がファリエルの体を真っ二つに割った。
役目を終えたリョクは結界の外へ向かって逃げようとするが、出る事は叶わず、外にいるレキに何とか出してもらい、武器をその場に投げ捨てレキに縋るように泣いていた。
二つの生物へ変化した相手の下半身をティムが細かく切っていく。人間の様で人間ではないこの生物の命は、身体を引き裂かれた今でも途切れる事はないらしい。
「破=メツ」
「何だ」
上半身が声を漏らした。
「呪=ソウになった後のアタシは貴方を本当に愛していたのよぉ」
下半身を粉々にしたティムは血塗られたその剣を上半身の方へ持ってきて、砕き始めた。少しずつ無くなっていく体に何も思わないのか、このファリエルという名前の人間だった者は。
「良い事を教えてあげるわぁ、メツ」
「利益が得られるなら聞いてやる」
ティムに一旦手を止めさせる。
「アタシみたいな奴は世界中にゴロゴロいるわぁ。アタシは一番最初だから他の奴等と少し違うけど、アタシ達は人間が一番叶えたいと思ってる夢を奪い取りそれを栄養にして人間の姿へ戻るのぉ」
それが事実なのか確証は出来ないが、礼だけは心の中だけで言っておこう。
「言う事はそれだけか」
「メツ、貴方を本当に愛して             」
全てを言い終える前にファリエルの体は爆発した。結界の内部に血飛沫が飛び散り、収まるとそこには何もなかった。誰かがそこに居た事や、飛び散ったはずの血も粉々に砕かれた肉体の一部も無くなっていた。
結界を外した俺は地面に座り込んだ。慌ててティムが俺の傍へ寄った。そしてティムの右目を見て驚いた。消えてしまったファリエルより少し濃い薄紫の瞳だったその両目のうち右目だけが俺と同じ金色に光っているから。
「メツさん?」
ファリエル、お前は俺を殺したいほど愛してたのか。
「貪欲な愛情は幸せを招き入れない。だから間違っちゃいけませんよ」
以前会った同職業者が言っていた言葉を思い出して俺は息を吐いた。安息にも嘆息にもほど遠く。
「ティム」
「何ですか?」
「俺の相棒になってくれないか?」
「いいですよ」
「簡潔だな」
「右目が疼いて仕方ないからです」
雪中花=ファリエルが水花=ティムへ呪いを掛けたのかどうかは知らないが、一応礼を言っておこう。俺は左目を元へ戻し、ティムの右目を左手で覆い、すぐに離すと瞳の色は元に戻り、立ち上がった俺はレキに縋るリョクをティムに預け、レキを担ぐ。
「うわあっ!」
「お前らバイクだったか」
「そうだけど・・・。あ、売らないでね」
レキを担ぐ俺の前をティムはリョクの手を引っ張って楽しそうに歩いていく。
「なら誰かに預けるぐらい出来ないか?」
「交通の手段が無くなるんだけど」
「車に乗ってもらう。それにお前車も運転出来るだろうが」
「じゃあ新しい車を買おうよ、四人分の荷物をちゃんと詰めれて、ちゃんと座れる車」
黙る俺にレキはまた言う。
「支払いは僕がするからさ」
「分かった」
俺が言うとレキは痛む体を労わりつつ笑い、つられて苦笑した。
「あ、ねえメツ」
「何だ」
「実際の所、ソウ・・・・じゃなくてファリエルの事は好きだったの?」
「さあな」
「ふうん」






好きだったんじゃねえし、愛してたわけでもねえよ。







ただあの人間性に惹かれてただけだ。






二十五話 END
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徐々に、セントラル国という国に近づいているせいか訪れる国の道が綺麗に整備されている。
そして僕を置いてさっさと走って行ったリョクが、今まさに入ろうと試みている国の入口ゲートで警察官と揉めている。
そこへ介入のため間に入った僕を二人は見る。
リョクは「何だよ」という相変わらずな表情をして、警察官は僕の姿を見てハッとした表情をし、敬礼した。
「お久しぶりであります! 本日はどういったご用件で本国の方へ?」
「えっと・・・」
僕はチラ、とリョクを見て
「休暇中だから通してくれる?」
「畏まりました!」
警察官はそう言ってゲートを開ける。
リョクは自分のバイクを手で押して先に入ろうとして、それを僕は止めた。
「ねえ」
「なんでしょうか?」
「バイクなんだけど、セントラル方面の出口ゲートに運んでおいてくれないかな」
「畏まりました。丁重にお運びしておきます。いってらっしゃいませ!」
警察官に別れを告げ、僕たちはユートラル国に足を踏み入れた。
ゲート内に広がる街は活気に満ち溢れ、道を行き交う人々が僕たち二人を見て、
「レキ様だ!」
「レキ様が来ているぞ!」
と口々に言いながら、集まってくる。
どうしようか、と考えている矢先、リョクが僕の腕を強く引き、適当な路地に逃げ込んだ。
その路地は嫌が応にも懐かしすぎる道で、どこへ向かう道なのか僕は理解してしまった。
リョクはこの国に初めて訪れたはずなのに、どうしてこの道を選んだのか、と聞けば「野性的感覚」と返してくる。
そうして僕たちは、いや、僕の腕をひいているリョクはひとつのビルに入った。
ピタ、と足を止める僕をリョクは見る。
その僕は、腰に吊るしたホルスターから二二口径自動式銃「雪の人」を素早く抜き、肩から下げている小さなショルダー型バックから赤外線付き暗視ゴーグルを装着する。
「お前・・・何・・・」
リョクが何か言いかけようとしたのとほぼ同時に照明の電源が落とされた。
「いっ・・・いやだああああああああああああああっ!!!」
「叫ぶな、馬鹿」
と言って僕はリョクにもゴーグルを着けさせる。
「おおー!」
辺りが見えるようになったリョクは多少喜びながら自分の武器「水神」に手をかける。
「一歩も動くなよ、リョク」
「了解!」
その返事を聞いて僕は、一番近くにあるエレベーターに乗り込んだ。
そのエレベーターの中に同じようなゴーグルをつけている男が二人乗り込んでいて、扉が閉まると僕を捕まえようと迫ってきたから、適当に一発ずつ急所へ蹴りを入れて気絶させておいた。
エレベーターは最上階まで僕を連れてゆく。
その最上階も同じように照明はついていない。
でもそこにいる相手が誰なのか分かる。
「レキッ!」
暗闇の中で立つ一人の青年が名前を呼んで飛びつこうとしたので、それを軽い身のこなしで避け、適当な机の上に乗った。
「久しぶりだね、ユートラル国、国防連合軍警察庁総司令官、明誓=シェル」
そう言うと照明の電源は入れられ、部屋と相手、僕の姿は明るみにされた。
オレンジ色の髪と目が印象的な青年は僕を捕えられなかったことで悔しげな顔をしている。
そこへ一歩も動くな、と言っておいたはずのリョクがやってきて、その彼女を見てシェルは目を見開いた。
「どうしてお前がーーー」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべているリョクをよそに、
「コイツは仁義=リョクだよ、シェル。リョク、お前の前に立ってるのは超絶変態野郎の明誓=シェルだからこっちにおいで」
僕はそう言い、リョクを自分の傍に来させる。
そこへまた一人、金髪碧眼の女性がやってきた。
「失礼します、総司令。お客様です」
「通せ」
警察官の制服を着ている女性の後ろからチビッ子が二人タタッとこちらへ走ってきた。
チビッ子は僕たちの前で足をとめ、
「剛強=セナ! 疾戦=エナ! ただいま参上っ☆」
口を揃えて言った。
参加型小国を出てからこの双子は僕たちの後をどうやらつけていたらしい。
そうでないと、この場所へ来たりしないだろう。
「総司令、推古=レキ様と少しばかりお話をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ。構わん」
シェルは総司令官らしい口ぶりで言う。
「それから総司令、私が彼とお話をしている間に客人をセントラル国へ。推古=レキ様のお連れの方を本国の観光へ。お願いします」
「・・・分かった」
少し嫌そうにシェルは言い、僕は部屋を後にする彼女の後ついて歩き、足を止めた時、そこには両開きの巨大なドアがあった。
そのドアを開き、足を踏み入れた部屋の目の前には、ユートラル国が一望できる窓が広がっていた。
そして彼女が自らの名前を名乗る。
「申し遅れました。私の名前は神道=リライトと申します」
女性でリライト、という名前は珍しいな・・・と思っている僕へ、リライトさんは僕を窓の近くまで来るよう手招きした。
「本日、私が貴方と此処でお話をさせて頂かせてもらったのは、他でもない。仕事の依頼なのですが・・・よろしいでしょうか?」
仕事。
そう聞いて僕は一つ返事で首を縦に振った。
「先日、夢喰い人と呼ばれる集団の末端が本国及びケーストルア国に侵入しました。その者達の駆除をお願いしたいのです」
ここでひとつ補足をしよう。
僕たちの世界には、世界最大規模を誇り政治経済界の頂点に君臨するセントラル国というのがある。
そのセントラル国を守るように東西南北に四天王国と呼ばれた国がある。
その国々を人々は、「東のユートラル」「西のファーイレル」「北のワァールアイズ」「南のケーストルア」と言う。
「夢喰い人か・・・やりがいがあるよ」
「そう言われると思っていましたので、仕事用の服を郵送していただいておきました。着替えて頂けますか?」
「うん。それじゃないと仕事してる時は違和感あるし。貸して」
あっさりとそれでいて冷たく言う僕は彼女から服を受け取り、今着ている服を無造作に脱ぎ、着替え始めると彼女は僕に背を向けた。
「あ、そうそう。僕と一緒にいた奴なんだけど・・・」
「その方でしたら、私の部下と一緒に観光をしておられるそうです。私の部下は命令に忠実な者なので心配せずとも大丈夫です」
「そう。ありがとう」
「いいえ。当然のことです」
彼女がそう言ったのと同じくらいに僕も服を着替え、元々着ていた服を鞄に詰め込み、真新しい自分の服装に目をやり、僕たちはその部屋を後にし、ビルの外へ来た。
そこには僕のバイクが置かれていて、いつものようにヘルメットとゴーグルをつけ、エンジンをかける。
「ご武運お祈りしています」
「ありがと」
こうして僕はケーストルア国へ急いだ。



[第七話 依頼 End]
書き直し中です。
気が向いたら、文章体が変わっているかもしれません。


Last Up! >>「Ep1 悪夢を視る者1」 2011.01.01
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