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私の何が気に喰わなかったのかは知らないわ。でもどうして一般人の人間が私に歯向かうのかが分からない。ただ歯向かってどうなるのかを分かってい無いのなら、分からせてあげるだけ。
私は異界の詞を口ずさみ、冥界の扉を開く。
そこでレキが私と一般人の間にバイクで入った。彼の目は冷静に一般人の方へ向けられ、
「少しでも長く生きてみたいと思いませんか?」
静かに言うけれど、一般人の答えはNOだった。レキがどうするのか私は待っていたけれど、彼は私の方を向き言う。
「殺せ」
たった二文字の言葉は私を前へ進ませ、冥界から現世へ現われた魂が、人間の魂を奪い、肉体をも消滅させた。その一部始終を見ていた私は平然と立つけれど、レキはバイクを押してその場から立ち去ろうとしている。
レキは、いつだってこの光景から逃れようとする。何故なのかは知らないわ。
でも私が少しでも頑張って戦っているところは見て欲しいわ。だからって、止めようとはしないけれど。
『な、なあ』
リョクが私に声を掛ける。異界の言葉で返事をした私にリョクは
『何でオレ・・・戻れないんだろ?』
悩むような声で言い、押し黙った。確かにリョクが私と交代しないのは可笑しいけど、私にはどうする事も出来ない。
何の解決策も無い今、無暗に足掻くのは危険極まりない事。それを私達は知っている。
そしてそれをレキにはまだ教えられない事も了承している。本当は言ってしまいたい。とリョクに言うと、「嫌だ」と言われてしまった。
もし、私達が別の存在だったと彼が知ってしまった時私達がどうなるか全く分からない。
彼が私達のどちらを好きなのか・・・とか・・・そういう類のややこしい感情がリョクをそうさせているみたい。
そんな事を考えながら、私は魂を冥界へ戻しレキの後を追いかけようとしたら、レキが急いで私の方へ走ってきて、私を前から抱き締めた。
何が何だか分からなくて呆気にとられているとレキは私に耳打ちをした。
それは・・・
「宿まで走れ」
切羽詰まった様な声で彼は私にそう言い残し、優しく笑い姿を消した。
走れと命令された私は、その命令に従って宿まで走る。その途中で爆音が聞こえたけれど、振り返ってはいけない。それは私の性がそう決めているから。
あの時みたく振り返ってはならない。だから貴方の言った通り宿まで走るわ。そして貴方の帰りを待つわ。
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爆音が響き、爆風が辺りを包んだ。その中を低い姿勢で身を守り、周囲の気配に気を配る。一般市民が紛れていないか・・・サラはちゃんと宿へ向かったのか・・・。自分以外の事に意識を一旦移動させるけど、すぐに自分自身に意識を戻す。
そうでないと多分僕の命の灯火は消えるだろうから。どんなに強いとは言っても、僕だって人間だから。
立ち込める煙の中で佇み続けることは好きでも嫌いでもない。ただそれは時と場合により・・・。
今は好きな時間帯。それは殺人鬼が深闇から目覚めるという事柄。
僕は【かくれんぼ】の鬼。そして僕の前に佇む人影は鬼に追われる者。
彼等の名は【夢喰い人】殺人鬼は人間の血肉を愛す者。殺人鬼は殺戮者。
僕は殺人鬼。誰にも見られたくない程の殺人鬼。惨たらしい景観を一瞬にして作り出す鬼。
僕の足は軽いステップを鳴らしながら、目の前に立つ夢喰い人の両手足を削ぎ落とし、苦痛に歪む相手へ
「何を残してあげようか?」
と悪魔の微笑みを落とし、その言葉を皮切りに僕は相手の肉体を細かく切り刻んでゆき、最後まで残しておいた頭部を真っ二つに裂いた。脳みそが地面へ流れ出し、異臭が立ち込め始める。その場所から僕は去っていく。
返り血を浴び、地面に鮮血の足跡を残し、バイクのハンドルを握った。
向かう先は宿?
いや・・・違う。向かう先は鐘の鳴らない教会だ。

バイクをエンジンを切り、「雪の人」のグリップを強く握り教会の扉へ近づくと、重音と共に扉は内側に開いた。そこには四人の男が僕を待っていた。
「時間まだ早いんちゃう? 世界最強の夢追い人サンッ」
「いーんじゃねえ? 少しくらい早くても」
「~♪」
「鮮血を帯びた美しきその顔は、まるで咲き誇る花のよう・・・」
個性溢れる四人は僕と対峙する。そして四人の気配は強い。
「ま、どんだけ早く来たとしても俺等と戦うわけじゃねえもんな、ライッ!」
ライと呼ばれた男は耳にヘッドフォンを当てながら頷き、そのままの状態で、
「時間指定外の時間に来たのは俺達の気配を感じ取っていからさ、ヘル」
ライという男は、さっき彼に声を掛けたヘルという男に言葉を返す。
「っへぇ~。すっげーな。ま、俺等もそんなん出来るけどなあ、マズルカ」
「自己紹介した方がよさ気やん?」
マズルカという名前の男が、そう言うと四人は一列に並んで僕に一礼し、左の男から自己紹介が始まった。
「俺の名前は針=ライ。吟遊詩人 神威で夢喰い人な」
ケタケタと笑う吟遊詩人。
「俺は輪舞=マズルカ。魔剣士 神威で同じく夢喰い人や!」
輪舞=マズルカは、大きく手を振ってみせた。
「・・・清=アクラ。その名を持ち得る者は、反魂士」
反魂士の清=アクラは、じっと僕を見つめてくる。そして最後は・・・
「俺の名前は死闘=ヘル。殺し屋クロウ十代目当主で夢喰い人・・そして夢喰い人のトップ」
殺し屋クロウ十代目当主の死闘=ヘル。
その殺し屋クロウは、殺し屋ヴォルフには劣るが有名ではある勢力。そして僕は気づく、僕が昔殺し屋の集会で死闘=ヘルに出逢っている事に。
「キミは・・・」
「そうさ。俺はお前に負けた憐れな男」
ヘルはフフッと笑い、憎むように言葉を続けた。
「裏社会で最も強いお前に勝負を挑んだ馬鹿な男。でもお前が手にする事など出来ないものを俺は手に入れる。それが俺達、夢喰い人の役目だ。それを阻止するのがお前だろ。しっかり足掻いてみせろよ。俺達は待っといてやる。最後の戦いまで時間はまだある。じゃあな、殺し屋ヴォルフ四代目当主にして世界最強と詠われる推古=レキ」
ヘルはそう言い残して姿を瞬間的に消した。おそらく、言葉士である針=ライの能力で。
僕は彼等がいた場所へ歩む。そこには文字が刻まれていた。
ただ・・・見たことも無い文字で、何が書かれているのか全く分からなかった。
だからこの場所から離れようと思った。何故なら、日が沈む頃に此処へ来るのだから。
宿に着いた僕は、重い足取りで部屋へ戻る。そして戻った末にサラがいることなんて構わずにベッドへ仰向けになった。そして顔を窺ってくるサラと目が合った。
「何かあったの?」
そう尋ねて来る彼女の言葉が痛く僕に刺さる。どうしてこの人は、僕に命令された事を素直に聞き入れこんなにも僕の傍にいてくれるんだろうか。
人間を殺す事しか出来ないこの僕の傍に。
「ちょっと聞いているの!?」
サラの声が酷く耳に残る。ああ、聞いているよ。キミの声は僕の耳に残る。僕はサラの頬に触れる。
「聞いてるけど、考え事してるんだよ・・・サラ」
サラは僕の手に触れる。互いに苦笑して、僕は起き上がり窓から外を見た。日が沈むまで残り五時間。一度眠ろうかなあ・・・。
「サラ」
「何?」
「僕は一度寝るけど、キミはどうする?」
僕の質問にサラは何も言わなかった代わりに、ドアへ向かって歩く。
「私は少し散歩してくるわ」
「分かった」
彼女が部屋から出て行くのを見届けて僕は眠りについた。

レキは心から疲れきっていた。その原因が何処にあるのかも知っているわ。だからその場所は、教会。そこへ向かう事が危険だとは承知の上。
覚悟して教会まで行き、扉を開ける。
そこに誰の姿もなく、祭壇まで歩くその途中に文字が刻まれていた。その文字に私は不愉快を感じた。その文字は、冥界の文字。そして書かれた文字の意味は

【世界に恐怖と混乱を】

誰がこんな場所にこの文字を彫ったのか・・・それは分からないけど、少なからず私の中のリョクが寂しそうにしているのが分かる。
「この文字の意味が分かりますかー? 私には到底分かる事の出来ないものでして、よければ教えて頂けないでしょうかー?」
神父の服を纏った男が私に声を掛けるわ。
「教えてあげられないわ、こんな言葉」
「そうですか・・・ではその口を割れば宜しいでしょうかー?」
男は聖水を私に勢いよく掛ける。
「・・・ちょっと何してくれるのよ!!!!!!!!」
「あらー?」
何よこの男ッ!!! 私を何だと思っているつもりなの!!? しかもちょっと苛立つ口調であんまり好けないわ!!
「死神か何かだと思ってましてー」
この人間殺してしまいたい。でも聖職の人間を殺したらリョクが何か言いそうで嫌だから、止めておくけれど。
「私は、反魂士。哀=サラよ」
「反魂士ですかー。それでですか。あ、お茶でもいかがですかー?」
「毒を入れないなら頂くわ」
「信用ないですねー」
「そりゃあ、貴方の名前を聞いていないからよ」
「では名前はお茶を入れながらにしますよー」
そう言った男に私はついていく。
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