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「元来サラがこっちに初めから来るべく者だったのだからな」
青年はさながら現代の魔王的な笑みを浮かべ、クスッと笑った。 「ま、決めるのは双子に任せておくとして、俺はテメェ等と話しでもしてやるよ」 青年はそう言って、ファルセとレキを従えて部屋から出て行く。青年の名は、冥界神王=オーリ。冥界の王でありながら、神界最高神。そんな彼がどうしてここへ来たのか・・・それはサラに聞くべきなんだろうか。オレとサラだけが残った部屋は静かだ。 『どうして私が実体化しているか、分からないわよね』 「全然分からない」 目を背けて言ったオレにサラは優しく笑い、 『貴方が命を絶った時、貴方の肉体は貴方の魂と一緒に冥界へ渡ったのよ。事実上、神=ソラという人物の存在は絶命したと記録に残されたわ。そう決めたのはお父様とお母様よ。二人はソラ、貴方の能力がどれだけ協力なものなのか知っていたわ』 サラの言っている意味がよく分からない。 『難しく言っても分からないわよね・・・・つまり、貴方の肉体、魂は決して死んでいないのよ』 正直なところ、冥界に行った時点で可笑しいな、とは分かってたんだ。冥界神王=オーリが妙にオレの体の心配をしてたこととか。 「じゃ、じゃあっ! この肉体はオレの体ってことか!!?」 『そうよ・・・レキと旅をしてきた、その体、その魂、その記憶、全ては貴方のものよ・・・リョク』 実体化したサラは泣いていた。でもその涙は悲しいものじゃないんだ。もう悲しい思いはしなくていいんだ。オレは、オレより少し身長の低いサラをそっと抱き締めた。 「ごめん、ごめんな、オレがあの時消えなかったら、サラは辛い思いをしなくて良かったのに」 サラは何も言わなかった。オレもそれ以上何も言わなかった。だってオレ達は双子だから伝わると思った。オレはサラから離れると、サラは目を見開いて 『・・・・いけないっ!』 と言、哀しみの旋律を詠い始めた。オレはサラを抱え、祭壇がある所まで階段を駆け上がる。そこには魔剣「オーディン」の刃を鮮血に染め上げ、高らかに魔界の歌を詠唱するオーリがいた。そしてオーリの目線の先には、ボロボロになったレキの姿があり、その後ろにはファルセが細く息をしていた。 「テメェッ!!!」 オレはサラを祭壇の所に立たせ、腰に差していた日本刀「業火」を抜刀して、オーリへ向かった。剣と刀がぶつかり合い、高い音が響き、パキンという音を立て、「業火」の刃が簡単に折れた。世界三大名刀じゃねえのかよ、コレ!!!!!! オレはもう駄目だと思った。完全に死ぬわ。と。 『氷壁』 オーリとオレの間に突如氷の壁が出来上がり、ヴァイオリンの音色が教会を包む。ただ静かにではなく、壮大に、力強く。 「誰だお前等は」 氷の向こう側で怒りに震えたオーリがオレの背に自分の背を当ててクスクスと笑う奴と、もう一人の奴へ言う。 「本日付けでぇ、夢追い人になった新参者だけどぉ~?」 声と口調に覚えがあって、オレは安堵した。 「神様だか、何だか、知んねえけど俺等の仲間に手ぇ、出した罪高ぇぞ?」 果敢に挑発する楽しげな声。そんな二人の声は頼もしく、 「レキの所に行きなさい。リョク」 力強い声はオレの背を押した。オレは、後方で何とか立っているレキの元へ向かう。背後に立っていた新しい夢追い人は手にした、とても美しい装飾の杖を掲げ、ヴァイオリン奏者へ告げる。 「おねがぁ~ぃんっ!」 「任せろ!!!」 教会の天井が吹っ飛び、鐘が音を立てて地へ落ち、そこから竜巻が発生した。起こっている光景に絶句しながらも、オレはレキの元へ行く。 「・・・レキッ!」 「どうしたの? リョク」 「どうしたって・・・お前傷だら―――・・・!?」 今さっきまでボロボロになっていたレキの体は、何ともなっていない。それどころか、ピンピンしてやがる。そのうえに、ファルセがレキの背後でニヤニヤと笑っている。天空神ファルセは俺達に 「西の方角へ進むことをお勧めしますよー・・・」 と言い残し、姿を消した。呆気ないファルセの登場と消え方にオレとレキは一瞬呆然とした。でも今は彼がどうとか、いうことではなくて魔王を倒すことが肝心だ。レキはオレの手を握る。オレもレキの手を握る。 そして前で戦ってくれている夢追い人二人の止める声など聞かずに竜巻へ歩み、通過し、冥界神王=オーリの前で止まった。 竜巻は力を失くしている。オーリの背後には扉が開いて、サラが扉を閉める大きな鍵を手にしていた。 PR
「死ぬ覚悟でも出来たのか、貴様等は」
オーリはオレ達二人を見て言うけど、オレの視線はサラへ向いてる。それをレキはちゃんと分かってくれてるから、オレはオレの武器「業火」を彼に渡し、 「頼む」 と言い、オーリの横を通り大きな鍵を持つサラへ立った。 はオレを止めなかった代わりに、レキと対峙して戦っている。 『どうしたの、リョク』 扉を固く固く閉めるための鍵を抱えるサラの頬にそっと触れて、オレは言う。 「今までありがとう・・・姉様」 目の奥が熱くなるのが分かって、オレは空いている左手で目を隠した。 『私こそ、ありがとう。貴女がいなければ、私の心は持たなかったわ。何かあれば扉を開いて』 何かあれば扉を開く。その声にオレは背中を押された様なそんな気がした。サラは儚く笑っていた。その微笑は現世で言われていた【嘆きのサラ】の異名に相応しいものだった。 『扉の鍵を開けるときの言葉は忘れないで・・・』 そう言ってサラはオレの手を自分の頬から離し、 『オーリ、時間が無いわ! さっさと行くわよ!!』 冥界神王であるオーリは、レキと何かを喋りながら戦うフリをしていたらしい、二人はボソッと何かを言っていた。 「別れの挨拶はもういいのだな」 「別に永久の別れじゃねえだろ、オーリ」 「フッ・・・戯言だな。では行こう、サラ」 サラは何も言わなかった。扉の向こう側に消えていくオーリに続いて静かに消えていくオレの姉。レキはオレの隣に立って扉の向こう側をじっと見つめていた。チラッと彼を見たら、視線に気づいたのかオレの顔を見て 「バーカ」 と言った。 「なっ!?」 「さーてと、馬鹿は放っておいて食料でも調達しに行こうー、メツ、ソウ!!」 レキは半壊し掛けている教会の扉の所で立つ新しく夢追い人になった二人の名前を呼んで、本当にオレを置いて食料調達へ出かけようとしている。 置いてかれたら確実に迷子になるから、オレは急いで三人の所へ向かう。 でもその前に 「さよなら」 扉の前で一礼した。
暖炉の火が消えて目が覚めて、ベッドの傍に置いてあった時計で時間を確認すると、時間は昼だった。眠ったのが深夜だったとするなら、昼まで寝ていたとしても別に構わないけど、さっさと着替えを済ませて色々やらないといけない。僕はベッドから出て、暖炉の火をつけてシャワーを浴びに行く。ガチャガチャと風呂のノブを回し、シャワーを頭から掛けて目を覚まさせ、大きめのタオルで全身を拭き、小さめのタオルで髪を拭きながら部屋へ戻ると、まだベッドで寝てるサラがいた。気持ち良さそうに寝てる彼女の傍で座って、起きるのを待つ。そして髪が乾き終えたのを見計らって備え付けの小さな冷蔵庫から未開封の飲料水のペットボトルを取り出した。それのキャップ外し、ゴクゴク飲んでいるとサラがもぞもぞと動き出した。
「・・・ん」 「おはよう、サラ」 サラは起き上がるけど、何かを思い出したのか僕の頭をバシバシ叩いて荷物の中から服を取れと指図した。それも真っ赤な顔で。服を取って渡すと、サラはふとんの中でじっとする。 「・・・・下着も取って」 ウン? 下着を僕が取るの? 間。 エエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!!!!!? そんなの無理だよ!!!? 仕方が無いから僕は荷物ごとサラへ渡して部屋を出る。廊下に出て、ドアにもたれる。つ、疲れる。リョクは馬鹿だから適当に相手をすればいいけど、サラは女の子なわけで、僕に結構頼っている所があるみたいだから疲れるかもしれない。でも、そんな彼女を嫌いにはなれないけどさ。着替えを終えたサラは部屋の中からドアをノックして、僕を呼ぶ。ドアを外から中へ開けてサラの服を見て驚いた。彼女は僕が渡した服じゃない別の服を着ていた。黒のヒラヒラスカートに、黒のロングブーツで、ほんの少し化粧もしてる。そんな服があの荷物の一体何処に。と思ったけど、止めた。 「い、一応貴方に合わせたのよ!!」 僕に合わせた? ああ、僕が全身を黒い服に包ませているから? サラはなるべく僕の顔を見ないようにする。それを軽く笑って、宿主がいるだろう玄関へ行く。武器一つ持たずそこへ向かった僕達は絶句した。宿から見える通りが血の海と化していたから。そして道に正しく並べられた数十名の骸。それは僕が殺した奴等じゃない。この国の一般市民だった。そして宿から一番近い場所に並べられた骸の手に小さな紙が握られていた。それを取り、ぐしゃぐしゃになった紙切れを伸ばすと、それには文字が書かれてあった。 【日が沈む頃、教会へ参拝を。夢追い人様】 僕達は紙切れをじっと見て、その紙切れを僕は破った。サラは宿へ戻る。 僕は並べられた骸を片付けるように、生きている人間達に告げる。人間達は僕は何者なのかを聞いた。僕は答える。僕は殺し屋ヴォルフ四代目当主だと。人間達は血相を変えて骸を片付け始める。僕は宿へ戻る。宿主は僕へ一礼し、言う。 「食事は部屋に運ばせて頂きました」 と。「ありがとう」と返事を返し、僕は部屋へ戻る。ドアノブを回し、部屋へ入ると美味しそうにパンを頬張るサラの姿が目に飛び込んだ。 嬉しそうに食事を口に運んでいく彼女を見て僕は気を休められた。 凄惨な光景を目の当たりにしたからだと思うけど、それでも僕の気は少なからず楽にはなった。そして僕もパンをかじった。すると何かが歯に当たって嫌な予感がした。サラは僕が口から取り出したものをキラキラした目で見る。そして喜んだ。僕が口から取り出したものは、とても綺麗な青色の小さな宝石。宝石に興味が無い僕は、それをサラにあげると言った。 彼女はとても喜んで大事そうに上着のポケットへ入れた。それをじっと見ながら僕はまたパンをかじる。食事を終えた僕はベッドに腰を掛けて、パソコンで情報を検索する。サラは僕の隣に座って、パソコンの画面をじっと見てたけど、途中で飽きたのか、突然立ち上がり 「何か買ってくるわ」 と言い部屋を出て行った。 「気をつけてね」 と僕は言い、またパソコンの画面に目を向けた。そうしてちょうど、サラが外へ出てから15分程度が過ぎた頃外から悲鳴が聞こえた。 何事かと思って窓から外を見ると、怒りに震えたサラが数人の一般人と対峙している状態がそこにはあった。溜息をついてパソコン片付けて、「雪の人」に銃弾を装填させ部屋を出る。はあ・・・リョクでもサラでも本当に僕に迷惑を掛けてくれるよね・・・キミ。僕は宿の玄関を出てサラのいる場所へバイクで急ぎ向かう。 |