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昇りきった所でキーアから手を離す。その場所に人間が一人佇んでいた。
そいつを僕は知ってる。だって知り合いだから。相手は僕に言う。 「詠歌師は逃がしてあげないけど、そっちの呪いが掛かってる子はボクの後ろへ通してあげるよ♪」 「その言葉に裏切りはないんだよね?」 「当たり前だよ!」 そうとは思えないけど、どうせ僕はこのキャラ被りと戦うはめになりそうだから、その言葉に甘えさせて貰うよ。僕はキーアを相手の後ろへ行くように言うと、彼は大人しく従ってくれた。キーアが相手の後ろへ行った所で、僕と相手はそれぞれの武器を出す。但し、殺し屋としての僕の武器である二二口径自動式銃「雪の人」じゃなくて、詠歌師としての僕の武器である・・・・・あ、武器無いや。 詠歌師は、武器は歌にした時に生まれる言の葉だね。危ない危ない・・・危うく馬鹿を踏む所だった。 そして相手は、何の武器も出してない僕をじっと見てくる。 「敵を目の前にして武器一つ出さないなんてありえないよ?」 「ありえなくないよ。だって武器ないし」 「そんなもんじゃないでしょ!!!」 「というか、人の事ばっかり言ってないで自分の武器出しなよ」 僕は、キーアの前に立っている相手へ適当に言う。すると相手は、息を静かに吐いて一本の杖を呼び寄せた。その杖が、昔の絵本とかに出てくる魔法使いとかが持ってそうなカンジの杖。 「相変わらず、じじクサイもの持ってるよね」 「五月蝿いよ、レキ」 相手は、僕を名前で呼ぶ。それも仲の良い友達の様に。 「ごめんね、スズ」 「別にいいよ。怒ってないから」 「あ、そう?」 「そうそう。んじゃ、始めるよレキ」 「うん。いいよ。どうせ今日も僕が勝つから」 僕達はニッコリと微笑んだ。キーアは、その行動の意味が全く分からず目をパチパチと動かしてる。僕は詠歌師、推古=レキ。 相手は言葉士、楽観=スズ。僕達は、小学生の時からずっと友達。でもスズはよく大人に騙されている阿呆。そんなスズは僕とキャラ被り。極めつけにスズは一度も僕と喧嘩をして勝った事はない。 そうだよ。今から始まる事だって、単なる喧嘩にすぎないんだから。 「今日はボクが勝つんだよ!!!」 「それ、無理だから」 サラリと言う僕に、スズはムスッとする。あのねスズ、キミは絶対に勝てないよ。まあ、とにかく喧嘩をしようよ。 鮮血を見る喧嘩を・・・ねっ♪ PR
僕は、歌を歌う。スズはそれを待つ。だからスズは阿呆。でもその間に言の葉を全て僕の元へ呼び寄せる。呼び寄せられた言の葉は、僕の左腕へ収まった。それを見たスズは、杖の先端を僕へ向けた。
「ボクから攻撃するからねっ」 ええ・・・・そういうやり方なの・・・? 「いいよ」 サラッと言ったものの、交互に攻撃し合うって事は絶対に攻撃が当たるっていう事になるんだよね。それはスズの策略なんだろうけど、相変わらず阿呆な考え方なのか賢い考え方なのか良く分からない考え方だよね。 『水針』 何て言ってる場合じゃなかったね。鋭利に尖った細い針状の水が真っ向から飛んでくる。その全てを左腕に絡みついている漆黒色の言の葉と鮮血色の言の葉が僕を守る。水の針の攻撃を終えたスズは、僕からの攻撃を待ってる。 まあいいけど・・。 僕は左腕に絡みつく二色の言の葉のうち、鮮血色の言の葉を目の前に浮かべて 嘆きの空に 鮮血の涙 姿囚われず 踊り狂え 静寂の全て この瞳へ 鮮血の攻撃 敵へ行け 歌に乗せられた鮮血色の言の葉は、スズへ向かってゆき消滅した。その光景にスズは驚いた。僕は言の葉の一つを潰した。それは己の能力の弱さ。 詠歌師としての力はまだまだ弱いという事。スズは、僕を見てクスクスと笑う。笑えばいい。そして漆黒色の言の葉をも消滅させた僕は、スズへ言う。 「消えてくれる?」 ニッコリと微笑んで言いながら、目は全く笑っていない僕にスズは 「消えるのはレ―――・・あれ?」 スズの前から姿を消した僕は、スズの背後に回っている。それに気づいてないスズは、「えー?」とか言いながら首を傾げてる。その隙に、キーアの手を取って、静かにスズのいる場所から先へ進む。そしてキーアは、静かに歩きながら僕に聞いて来る。 「あいつ放っといて大丈夫なのか?」 「うん。アレは馬鹿だから、多分追って来たとしても通り過ぎると思うよ」 そう言った直後、本当にスズが僕達の隣を通り過ぎて行った。 「・・・マジで気づいてない・・・?」 「うん。馬鹿だから・・・っと」 「行き止まりで、ここがゴール?」 半開きになっている両開きの扉を目の前にして、足を止めた僕達は、そこへ先に入って行ったスズが戻ってくるかどうかを見る。 一分経過 二分経過 三分経過 ・・・ 「行こっか・・・何も無いっぽいし」 「お、おう。俺の呪い解いてもらわないと駄目だしなっ!!」 僕達は、半開きになった扉の部屋へ静かに入った。特に何も考えずに入ったのは、多分助けたい人がいるからかな。そうでないと、僕は進まないし。それは多分キーアも同じだと思う。 ・・多分だけど。
考えながら扉の中を進むと、床に転がって腹を抱えて蹲っているスズがいた。躊躇いながら近づいて行こうとする僕を、キーアが服の裾を引っ張って止めようとするけど、
「キーア、キミは目の前にいる人が死に掛けていた場合どうする?」 僕はスズから視線を外さずに言う。 「た、助けてみようとは・・する・・けど」 「けど、その人が敵だった場合は別の話?」 キーアは服の袖から手を離して一歩下がった。スズから視線を離して、キーアに向けると、彼の顔には「何で分かるんだよ!!」という文字か書かれて有りそうだった。 「普通の人ならそういう考えだよね。でも僕は普通じゃないから」 そう言って僕は、蹲っているスズの傍でしゃがみ、スズを仰向けにした。そうするとスズの腹部が赤く血に染まっていた。 「スズー、死んだフリでもしてるつもりー?」 「してないつもりだけど、一応抉られてるから痛いよ」 「なら、治しなよ」 「・・・あ、その手があっ・・・たね」 僕はスズを立ち上がらせ、肩に手を回す。 「キーア!!」 「何っ!!」 「死ぬ覚悟は?」 「無い」 「なら前を歩いてくれる?」 「分かった!!」 キーアは急いで僕達の前に立ち、ゆっくり歩いていく。その後を追っていく僕とスズもゆっくりと歩いていく。何が待っているのか分からない真っ暗な闇へと。そして何かがこちらへ飛んでくるのが分かった。 僕とスズは目で合図をした。スズは腹を治癒詞で治しながら、飛んでくる何かを風の壁で止める。僕は前を歩いているキーアの腕を引いてスズの後ろへ下がる。 「向こうの力が強すぎて風で食い止められないっ・・・!!」 スズの杖から放たれている風が、向こう側からの攻撃にかき消されていく。キーアは、僕の腕の中で小さく震えてる。小さくなった彼を此処へ連れてくるのはやっぱり無茶だったかもしれない。僕は、スズの肩を叩いて風を止めるように指示する。 「キーアを連れて逃げて欲しい」 「そんな事、出来るわけないよ!!!」 確信を突く様にして言う僕に、スズは声を荒げる。 「この先に誰がいるのかキミは知ってるはずだ。だから連れて行けない。キーアは、何の戦闘能力もないから、スズと同じ」 そう言って僕は、キーアをスズに渡して暗闇へ歩いていく。 「レキッ!!!」 スズが僕を止め様とする。 「ついて来るな!!!!!!!!!!!!!!!」 叫んだ声は、暗闇の中で壁に反響した。スズは溜息をついて、キーアは驚いた顔をして、僕が歩いていく方向とは逆の方向へと歩いて行った。足音が消えるまでその場に立ち尽くしていた僕も、歩いていく。静かな闇の中を自分の感覚だけで歩いていく。それが酷く懐かしい。けれどそれゆえに苛立ちもある。だって、此処が暗いから。やっぱり明るい所の方が気分も晴れるしね。とにかく、さっさと片付けてさっさと帰るに越したことはないね。 さあー行くぞー!!!! なんて、腕上げて頑張ってみても誰もいないんだよね。 いや・・・いるのかな。敵っていう名称の誰かが。僕をこの場所に呼んだ誰かが。馬鹿リョクを連れ去った誰かが。キーアの妹のルーアを連れ去った誰かが。進んで行った先に、綺麗な女の人が僕を待っていた。 それは腰まで伸びた銀髪が綺麗な人。青の瞳を暗闇の中で存分に魅せている。 「ずっとずっと貴方を待っていました」 「キミは誰」 女の人は僕を見て優しい笑みを浮かべながら、壁伝いに添えてあった燭台にある蝋燭の火をつけて歩く。薄暗くなった暗闇に、僕と女の人は対峙する。 「私は貴方を呼んだ者です」 「用件は何?」 「貴方を殺したいのです」 それだけの理由でリョクを沢山の人を巻き込んだというんだね。 「キミは、何の職業に就いてるの?」 「私は、表職業が幻術士で裏職業が呪術士です」 なら、最後の最後の敵はキミ一人なわけなんだね。 「名前は?」 「祭儀=キョク」 「じゃあ、存分に僕を殺してみせてよ」 僕はキョクという女の人を挑発する。でもキョクは何もしようとしない代わりに口を開く。 「違うんです・・本当は貴方に殺されたいのです」 「いいよ。殺してあげる」 「そうですか・・殺してくれますか・・」 「うん。普通に殺してあげるよ」 僕は、「雪の人」に弾を装填させ、銃口をキョクに向けた。 「ねえ、本当に殺しちゃうけどいいの?」 「ええ。だって私は貴方に見つかってしまったもの」 かくれんぼ・・・! 「最後に聞いておくけど、仁義=リョクとルーアは何処にいる?」 「かくれんぼという遊びのルールを知っておいでなら分かりますよね」 「うん。じゃあ、お別れだね」 「鬼に見つかれば終わりの残酷なゲームから、私はやっと解放されます」 銃口をキョクに向けて、僕は引き金を引いた。 ドゥン 銃声が響き、キョクの身体が力を無くし横たわった。 「鬼に見つければ終わりの残酷なゲーム・・・・か」 何か悲しいよ・・・キョク。キミは、きっと強い能力者だったはずなのに、どうして僕なんかに殺されたの。でも悲しいゲームは終わらせてしまうよ。キミは沢山の人を巻き込んで、沢山の人を殺したのだから。だからキミは此処で永遠に眠るといい。誰の手にも見つからない様に隠れていればいい。もう誰もキミに殺されないように。僕はキョクに隠された二人を探すよ。行き止まりになっているこの部屋の何処かに隠し通路か何かがあるのか、それとも別の場所に隠したのか分からないけど、絶対に見つけるよ。かくれんぼが、鬼に見つかるまで永遠に続くゲームなら終わらせてやる。 こんな下らないゲームなんて・・・。 |