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騒然としたその場所に静かに眠る男の一人に近寄り、顔を覗き込む。
皮膚と骨だけ残された男の顔。目は綺麗に刳り貫かれ二つの穴が出来ていた。 無数の蝿が飛んでいる。蝿は男達の骸に集っている。 モクが僕に言ってくれた事は本当だった。多分、この男はモク達の父親だろう。悲しみよりも怒りが込み上げて来る。何故こんな事をしたのか。 僕がこの国へ戻るまで、こうしていたのか。そうして数人の気配が僕を取り囲んでいる事に気づいた。 「アイツか・・?」 「アイツだ・・・」 「アレが殺し屋・・」 「殺してやる殺してやる」 「復讐だ復讐だ」 僕を殺したいキミ達は、【夢を求めすぎた人達】だね。 「殺したいの?」 僕は大きな声で言う。 「殺す・・」 「殺してやる・・」 キミ達は本当に下らないね。そんなの言ってる間に自分の体が真っ二つになってるの気づかないなんて。 「僕が鬼なんだから、キミ達は僕から逃げないと駄目なんだよ。頭イかれちゃったの?」 右手に収めた短刀「血塊」が鮮血に染まり、僕はニッコリと微笑んで 「大丈夫だよ、楽には死なせてあげないから♪」 と言い、二二口径自動式銃「雪の人」の銃口を全員の脳天へ向け銃弾を放った。その作業が終わった僕は、僕が来る前から死んでいた男達の横を通ってまた路地へ入った。 あと何人殺せば会えるかな? 僕のお姫様を攫った相手に。大丈夫だよ、残酷に殺してあげるから。 「うおおおおおっ!!!」 「目障り極まりないよ」 ドゥン どうも路地には弱い輩が多いね。こう・・・相手にならないっていうか。互角に相手になる相手がいないっていうか・・。 「あら、アンタ推古=レキ?」 「え、違いますよ?」 「ごめんなさいね、私冗句は聞かな―――――――」 銃口を女のこめかみへ当てた僕は、小さな子どもの様な笑顔で 「冗談は聞かない性質なんですか?」 と言う。 「や・・・や・・・・・・め」 ねえ、どうされたい? 考えてもいいけど、決定は僕にあるから、それは忘れないでね。引き金を引いた僕は、右足で女を壁へ叩きつけ 「女の人だからって容赦しないよ?」 女から遠ざかりながら「雪の人」をクルクルと回し、腰に吊るしたホルスターへ入れ、近くにあった水飲み場で短刀「血塊」についた血を洗い流し、ケースに入れた僕は水を一口飲んで、また歩き出した。 休む暇さえ愛し―――――――――――――!? 「返答しだいなら、殺すけど」 誰かが背中に飛びついて離れ、僕の前へ来た。現われたのは110cmくらいの男の子。ちなみに、モクが150cmくらいの男の子だったから別の子だという事は確か。 「萌え要素!!!」 は・・・? ちょっと待って。僕の何処が萌えなの!!!!!!!!!!!!!!!!? 「キ、キミ、名前何ていうの?」 「俺、キーア。ルーアの兄ちゃん。でも、呪いかけられてチビっこくなったんだ!!つか、アンタ萌えだなっ!!」 呪い・・・。 まさか阿呆リョクとルーアっていう女の子を攫った奴は魔術師・・・? というか、僕は萌えとかじゃなああああああああああああいっ!!! 「よしっ、俺について来いっ!!そしてあわよくば夫婦になろう!!」 僕は微笑んで、変態に言う。 「僕は推古=レキ。一応男だからね?」 「え――――――――――――――――――!!!!!!!!!」 「驚いてる暇があるなら逃げてくれない?」 「んあ?」 僕は、キーアの背を押す。 「萌えって叫ぶぞ!!!」 キーアは変態だ。それも誰かを彷彿とさせる。 「叫んだら問答無用でぶっ殺すよ!?」 「スンマセン」 「分かれば早く走って!」 「雪の人」に弾を装填させた僕がそう叫ぶと、キーアが僕の横を通り過ぎた。その瞬間に周囲にいる全員の急所を狙い撃ちして、キーアの元へ行く。 「萌・・じゃなくてレキ・・お前マジで殺し屋?」 隣を走るキーアは僕へ問いかける。 「僕は、殺し屋ヴォイド四代目だよ」 答えは包み隠さずそのままに。そしてキーアは足を止めた。 「この先にルーア達がいるけど―・・」 「けど?」 「入ったら俺みたくなるぜ」 それは勘弁。 だけど入らないと、こちらの命の補償が無い程に囲まれた。どうするかな。考えるのも面倒だから入っちゃえ。僕は扉を開けてキーアを押し込み、一旦ドアを閉め 『魔術師からの全ての攻撃を無効化♪』 楽しく詠い、扉をもう一度開けて僕は中へ入った。 PR
扉の向こう側に広がる世界は、以外にも明るかった。蛍光灯が煌々と耀き、足元を照らしている。そこへ一歩踏み入った僕とキールは静かな世界を一瞬堪能した。まさか、この場所が敵の陣地だという事を忘れたカモの様に。扉がゆっくりと閉じていく。静かな時間の終わりを告げられた僕達二人は、一歩も前に進まない。ただ待つ。声が聞こえるのを。
ジジッ・・ジジッ・・という電気が切れる音だけが聞こえる中、小さな声が聞こえた。館内放送の様な。 『欲しい・・・・欲しい・・・』 キールが僕にピッタリくっついた。 「どうしたの?」と聞かずにも、理由なら分かる。 出来損ないの人間の屑が、床を這いずりながら寄って来たから。僕はキールから絶対に離れない事を誓って、「雪の人」を握り 「走って!!」 と叫んだ。その声にキールは従って走る。それを僕は追う。ただ、足元にいる人間を踏み潰しながら。ブチッという肉が切れる音を立てる事に楽しみながら。キーアは、何かを叫びながら走る。そんな彼を追いかけている途中、僕は横穴を見つけた。僕なんかでは到底入れない穴。でもキーアなら入れそうな穴。かと言って一人では絶対に行かせられないから、止む終えなく止めた。にしても、キーアって呪いを掛けられてて小さくなってるんだよね。なら本当の姿は僕と同じくらいの年齢になるのかな。 ま、今はそんな事を考えないで先へ進もう。 そうこうしていると分かれ道に出てしまった。前を走るキーアは、どうしたらいいのか分からずに立ち止まってる。そんな彼は僕を呼ぶ。 「レキー、どっちに行ったらいいー?」 でもそれは決して、やってはならない事。敵陣に潜っている時は、自分の力を過信している者なら声を出してもいい。なら、キーアはどうだろう。 キーアは呪われの身だから、尚更声なんて出してはならない。出来損ないの人間どもがキーアに襲い掛かろうとしている。それを決して許しはしない、僕の右手に収められた銃器「雪の人」は、軽快なリズムで銃弾を放っていく。その間でキーアの前に立つ事が出来た僕は、「雪の人」をホルスターにしまい、上着の内ポケットから白の手袋を取り出して、それを嵌める。そして首から下げていた赤外線付き暗視ゴーグルを装着して、近寄ってくる屑の肉を引き千切っていく。嫌な音が目の前で立てられる事に不慣れなキーアは、両耳を手で塞いで壁に背を当ててるみたい。 その回答が当たっているかは定かじゃないけど。引き千切る肉が無くなった時、僕はキーアの方に振り返り、ニッコリと笑って 「ごめんね、キーア」 と言い、彼の腹を強く殴った。 彼の身体は殴られた勢いで壁を破壊しながら壁の向こう側へ突っ込んだ。 突然の事で、何が何だか分かっていないまま壁の向こう側へ背中から入った彼は目を見開いた。そこは床が水に濡れていた。そこへ僕も入ると、壁は何事も無かったかの様に元の形に戻った。手袋に付いた血を水で洗い流しながら、考え事をしている僕とは裏腹にキーアは腹を摩りながら立ってる。 「・・・大丈夫?」 と聞くと、 「平気だけど、以外に力もあるなんて所も萌えにつきるなっ!!!」 「キーア」 「ん?」 「息を止められる時間はどれくらい?」 「二分が最高だけど・・それが何かあんの――――って、みず―!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 そう・・・水。おそらく、此処は水を注ぐだけのために作られた部屋。つまり、僕等は水死かな~。 あはは。 なんてね、嘘だよ。こんな所でのんびりしてる場合じゃないから歌でも詠唱しようかな。 「息止めて!!!」 「わ、分かった!」 キーアが息を止めるのと同時に、僕は歌を歌い始めた。 流れし清水よ 答えて消えよ この身を持ち 我が生命だけ 多大なる風に その意を乗せ 我が名は一つ 深闇夜の血涙 歌は部屋に注がれていく水に絡んでいく。その光景を見ながら、僕達の身体は水に飲まれていく。
注がれる水に絡みつく言の葉は、漆黒の色と穢れた鮮血の色になっていく。
水でいっぱいになった部屋の中で僕達は浮かぶ。 そして、僕によって詠唱された言の葉の全てが僕の左腕に絡みつく。 息を止めてられる時間の最高が二分と言っていたキーアが口から多量の空気を出した。 彼の身体はどんどん水底へと沈んでゆく。 そんな彼の身体を左腕だけで引き寄せる。 すると左腕に絡み付いていた漆黒の色をした言の葉だけが、キーアの方へ移動した。 目を閉じて苦しむ顔を浮かべていたキーアは、ゆっくりと瞳を開き僕を見て、驚くような顔をして、自分の周りを囲む言の葉を見た。 詠唱された一文字一文字が、まるで意思を持ったかの様に動く。 それと同時に、彼は自分が水の中にいて苦しくないという事実に気づいた。 ニッコリと微笑んだ僕は、水の中に立って、自分の左腕に残った穢れた鮮血の色をしている言の葉を使い、この部屋だけに注がれる水の流れを全ての壁へ向かわせた。 水は、勢いよく壁を壊しながら流れていく。 もちろん、壁の外で僕達が来る事を待ちわびていた人間も流していく。 小さなキーアの身体は、押し流される水に抵抗が出来ないけど、彼の方へ移った言の葉が彼の身体を水の抵抗から守って、僕の傍まで連れて来てくれる。 本当に意思でも持ってるのかな・・・。 自分で歌ったとはいえ、詠歌師の実力でも上がったのかな・・・。 いや・・・そんな事考えたら、あの人に怒られるや・・。 ともかく、この水地獄を創り出してる奴に会わないとね。 僕はキーアを守る言の葉に、後ろへ回るように目で合図して、目を瞑った。 流れてくる水の力が最も強い場所を見つける。 とは言っても勘だけで探るから当たるとは限らない。 その場所は、天井。 つまり敵は上の階にいて、そこに助けたい奴もいるって事になるのかな。 それなら、半壊しかけてる天井を全壊させて、そこへ飛び上がる芸当をしてもいいけど・・・。 そんな芸当をキーアが出来るとは思えないから、無茶はしないでおく。 そうなれば、進むべき道は一つ。 前方の壁を壊して先へ進むまで。後方の壁を壊している鮮血色の言の葉を呼び戻し、前方の壁を破壊させる。言の葉は指示通りに壁を壊した。 すると水の流れが急に止まった。いや・・違う・・・水が消えた。そう・・・・・この部屋に注がれていた水は幻。 キーアに呪いを掛けた奴は、呪術士。僕達に幻を視せていた奴は、幻術士。多分、敵は二人。意思を失くした言の葉は、僕の左腕へ絡みつきながら消えた。それは役目を終えたという意味。先刻まで意思を持ち、動いていた言の葉は『破壊の歌』という歌の言の葉。 「動けるよね、キーア」 「動けるけど・・・来てる・・来てるんだ・・・・さっきの奴等があああああっ!!!!」 え? 急いで振り返った僕は息を吐いた。さっきより酷い人間の屑どもが、それぞれの臓器を露に出して近づいて来ていた。全くもって汚らしい人間だね・・キミ達ってば。僕はキーアの腕を引いて前へ向かって走る。 全壊した壁を通り抜けると、そこには上の階へ行く事が出来る階段だけがある。後戻りなんて出来ないし、上がるしかない。 自分の力を信じて僕はキーアの手を引いて階段を上がっていく。 |