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その銃弾は僕の左頬を真っ直ぐに進んで後ろのドアに命中した。身動き一つしない僕にロクは、
「さすが後輩」 と言うから、僕は彼に近寄って頬をつねる。 「いつ誰がキミの後輩になったって?」 悪意を込めた笑顔をロクに向ける僕はギリギリと彼の頬をつねる。でも、その力さえ勿体無く思って手を離して、机に腰を下ろした。 「机に座るなって」 「ん?」 聞こえないフリをする僕は、徐に小型ノートパソコン型携帯電話を弄る。 誰からかメールを受信してたから。 「お前、まだそれ使ってたのか・・」 「まだって・・・まだ二年くらいだよ?」 「そうだったか?」 「そうだよ」 机に腰掛けている僕は膝にパソコンを置いてメールの受信ボックスから新着メッセージを開ける。その作業を、ロクは横から見てくる。 「あ、メツからだ!」 「知り合いか?」 「うん」 「そか」 そういうとロクは、手にしていた軍の資料に目を通すためにソファへ座った。にしても、何でメツからメールなんか・・・。別に嫌なわけじゃないけど、何かあったのかな? 【今何処にいるんだ】 うわあ・・・相変わらずっていうか・・何ていうか・・ってカンジの言葉だね。僕は、画面へ文字を叩き込む。 【セントラル国だよ。でも何かあったの?】 叩き込んだ文字を転送させて、パソコンの蓋を閉めた僕は、ソファに座って仕事をしてるロクに飛びつく。 「うおっ!?」 「魚・・・?」 「阿呆か。何か聞きたい事でもあんのか?」 ロクは資料から目を逸らして、僕へ問いかける。 「聞きたい事っていうか、言っておきたい事なんだけど・・・」 「その前にお前もソファに座れって」 しぶしぶロクから離れた僕は、ソファに腰を掛けてさっきまでとは違う顔を露にする。 「セントラル国東ゲート近くでガラの悪い集団に遭遇したんだけど、僕がいない間に何かあった?」 真剣な声をロクへ向ける僕に、セントラル国国防連合軍警察庁警視総監である彼は重い声で 「実は、今から半年前エリア10にある貧困街で暴動が起こった。軍で制止する事は出来たけど反連合軍勢力の者達が国外へ逃亡したんだ・・」 そう言うとロクは、立ち上がって机の引き出しから一枚の写真取り出して、それを僕へ手渡した。その写真は空中から、ヘリコプターか何かで撮影したらしい物で、写っていたのは、道に赤いペンキで書かれた僕の名前。 「どういう事?」 「それが全く分からないんだ。彼等から、推古=レキが国へ戻って来たらこの写真を見せろ。って言われただけだからなぁ」 溜息をつくロクに対して僕は、頭を抱える。今からエリア10に行っても構わない。ただ、それは僕がこの国へ一人で戻って来ていたならば。そんな僕へ、パソコンの側面の青く光るライトがメールの受信を知らせた。 メツかな・・・。 と思いつつ新着メッセージを開くとそこには、 【エリア10へ来い!!!】 たったそれだけの短いメッセージが画面に映る。でもその送信相手の名前を見て僕は息を呑んだ。 【FROM:仁義=リョク】 一人にさせるんじゃなかった。多分外で遭遇した奴等の仲間が僕達をずっとつけていたのかもしれない。 「っあ゛あっ!!!!!」 「突然何て声上げて―――・・これって」 ロクはパソコンの画面を見て動きを止めた。僕はパソコンをロクに預けて、荷物の中から二二口径自動式制銃「雪の人」を腰のホルスターへ差し入れ、予備の銃弾を専用のケースへ入れ、赤外線暗視ゴーグルを首に掛けた。 「おいっ!まさか一人で行く気か!?」 「そうだけど何?」 「普通に危ないだろ・・・・」 僕は、先刻とはまるで別人の様なオーラを浮かべロクを見て 「いつ誰が一人で行くって言った?」 嘲笑うかの様にハッと笑った。すると直後、窓を突き破って悪魔が警視総監殿の部屋へ侵入し、漆黒の翼を羽ばたかせ床に足を落とした。 それを待っていた様に、ドアが勢いよく開き欠伸をしながら部屋へ入る眼鏡を掛けた男が僕へ声を掛ける。 「さっさと行かへんと、命のぅなってしまうんちゃう?」 眼鏡の男は、隻眼=コーマ。悪魔は、盟誓=シェル。 そんな二人を見たロクは、 「なるほど。なら、軍は警備を上げておいてやるよっ」 「ありがとう、ロク警視総監殿」 「感謝される立場じゃないぜ、四代目」 そして僕は悪魔のシェルを窓の外へ放り出し、僕自身はコーマと一緒に窓の外へ飛び降りた。地に叩きつけられて死ぬ事は無いよ。その前に言葉士の最高権力保持者である【詞華】の地位を獲得しているコーマが、どうにかしてくれるだろうから。僕だって詠歌師だから自分でどうにか出来るけど、落下してる途中コーマが 「無理したら命落としてまうで?」 とか言うからお願いする事にした。だって、こんな下らない事で命落としてる場合じゃないからね。無事に地面へ降りた僕とコーマはそれぞれのバイクのエンジンを急いで掛け、空中で暇そうにしているシェルに 「先に行って偵察して来て!」 と言い、その言葉に従ってシェルは空中を華麗に飛んで行った。 「レキ!行けるで!!!」 「行こうっ!!!!」 僕はゴーグルを装着してバイクでエリア10向かう。 PR
セントラル国は、あまりにも国土が広いために10の区域に分けてある。その中で最も治安が悪い区域を、エリア10という。そこへ僕は向かってるわけだけど、セントラル国国防連合軍警察庁がある場所がエリア1といって、国の中央になってる場所だから、そんな場所からエリア10へ行くのには結構な時間が掛かる。何故ならエリア10は、セントラル国の北部にあるから。どんなに急いで行ったとしても、二時間程軽く掛かってしまう。そんな場所へ僕は行っているわけだけど・・・・何ていうか面倒くさいよね。あーあ、今の僕って心底やる気ないなあ。
ブレーキを掛けて止まった僕とコーマの運転するバイクの前に突如現われたのは数人の子ども。とは言っても、僕とそう変わりない年齢の子ども達。 「どないしたんや?」 バイクに跨ったまま、子ども達へ声を掛けるコーマは眉間にシワを寄せる。何故ならここはエリア10。僕達は此処の住人に妬まれても可笑しくは無い場所や区域に住んでいる者だから。 「殺し屋だ・・・」 子どもの一人が小さな声でそう言うと、他の子ども達が口々に 「助けてくれるかな・・・?」 「でも間違って俺達が殺されかねないんじゃないか・・?」 「大丈夫だよ!だってあの人は・・・・」 「殺されたら殺された時じゃねェの?」 「ルーアを助けてくれるなら声掛けないと・・・・!!!」 言っている。そんな彼等へコーマが怪訝な顔つきのまま 「全部丸聞こえやで!!!!」 子ども達へ叫んだために、子ども達が一歩後ろへ下がった。 あーあ。 そんな喋り方なうえにそんな態度なコーマの頭を軽く一発叩いた僕は、 「何か用があるなら、さっさと言った方が――――・・・」 言ったほうがいいよ。と言おうとしたけど、子ども達の背後に迫り来る気配を察知した。でもね、忘れてはならないんだよ。もう一人此処へ来ている事を。僕は、ズボンのポケットから小さな横笛を取り出して、音を鳴らす。 ピィ―――――――――――――――――――――― その音に反応したコーマは、子ども達全員を一発の強烈な風で横道へ導かせ、そこへ自分の身体も入り込ませた。道に残された僕と二台のバイクは、エリア10の独特な雰囲気に相俟って来る。バイクから降りた僕は、暗雲が空を覆い始めたのを確認して、首から下げていた赤外線暗視ゴーグルを装着する。そこに映るものを見て驚いた。横道にいるのは分かっていたつもりだけど、廃ビルの屋上にもかなりの数がいるうえに、ゴミ箱の陰にもいる。つまりは、数えられる程じゃないって事。そんな場所にいる僕の存在は奴等にしてみれば、かっこうのエサみたくなってる。そこへ、横道へ吹っ飛ばされたはずの子どもの一人が道へ飛び出して、僕の後ろへ駆け寄って 「アイツ等、父さん達を殺したんだ!!!!!!!!!!!!」 奴等の方へ言葉を飛ばした。その言葉に僕は子どもの方へ向き直り、 「空の旅へご招待♪」 と言い、 『風よ 吹き荒れろ』 子どもを空へ吹っ飛ばした。叫び声を上げる子どもを見送る間、僕はじっと空を見ていた。そこへ、漆黒の翼を持った全身を漆黒の服で纏っている悪魔が子どもを捕まえたのを確認して、二二口径自動式銃「雪の人」を腰に吊るしたホルスターから抜いてリミッターを外す作業に移る。
静かに佇むだけの僕は、周りから見れば愚かな者。目の前にいる敵に対して何の防御も施していない者。でも決して弱者ではない。
―僕は誰 ―僕は何 ゆっくりと奥底に眠る自分に問いかける。 ―僕は殺し屋四代目 ―大丈夫。きっと殺せる 聞きなれた銃声が奥底に眠る僕を掻き立てた。その音が僕の方へ向かうのさえ遊びに感じ取れる。 「殺してあげるから安心していいよ」 冷たく放った言葉と共に僕は、隠れ潜みながら僕を標的にしている奴等を次々に銃弾一発で殺していく。返り血を浴びた僕は、たった一人にだけ生きる価値を残してあげた。そいつは、今さっき殺した奴等よりも強そうだったから。まあ僕だけでも有意義に殺せるだろうけど、リョクをさらった奴等の手掛かりが消えてしまうから、あえて生かせてあげてるんだよ。 「早く殺せよ」 「駄目だよ。キミはまだ殺してあげない」 大柄な男は、舌打ちをして身に付けていた自爆装置をONにして、周りの建物や人々を巻き込みながら死んだ。咄嗟にシールドを張った僕は、噴煙が上がる眼前を見て 「・・・下種」 と言った。そして僕は、空中で漂っている子どもを抱えた悪魔に降りてくる様に指示し、コーマ達の方へ行く。 「コーマ」 「はいな」 「キミは、子ども達を安全な場所へ連れて行って」 「それって、つまりエリア9かいな?」 「そうだね・・・」 「任せとき~」 コーマは子ども達を連れて僕達に背を向けた。その場に残った僕と悪魔のシェルと子どもは声を潜める。まだ近くに、さっき僕が殺した奴等の仲間がいるだろうから。奴等の気配が完全に消え失せた所で、僕は子どもに問いかける。 「どうしてキミは僕にあんな事を言ったの?」 あんな事。それは僕が、この子どもを空へ吹っ飛ばす前に聞いた言葉。 「アイツ等、父さん達を殺したんだ!!!!!!」という言葉の事。 「それはっ・・・」 「それはお前を愛してるからだ―!!」 ゴッ 「気持ち悪い事言わないでね。変態馬鹿シェル?」 地面に仰向けで寝そべっている変態に吐き捨てる。にしても久しぶりに人間殴ると手が痛いなあ・・・。 じゃなくて!!! 「あ、ソレ気にしなくていいから」 ソレとはシェルの事。そして子どもは僕をじっと見る。 「幼馴染みの・・・ルーアっていう女の子がいるんだけど・・そいつが凄い可愛くて皆大好きだったんだ・・・。でもある日あいつ等がルーアを攫って・・父さん達が助けに行ったけど・・・殺されて・・・・・・だからっ!!!」 子どもは涙を頬に伝わせて言う。 「だから・・・ルーアを助けて・・くれ・・っ」 僕は子どもを自分の方へ引き寄せた。 「!?」 「僕でよければ」 「俺を抱き寄せてくれねェのか?」 ゴッ 「先に言っておくけど、ボケは三回までだからね、変態馬鹿シェル?」 「・・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・・ぉ・・・・・・・・・・ぉぅ」 「そうだ、キミ名前は?」 「モク。アンタはレキだよな・・・」 「そうだよ。あ、ソレは変態でいいから」 「おいいっ!!!!!!」 「何か文句あるの?変態馬鹿シェル」 「ブチ殺すぞテメェ」 シェルは、魔剣「ラグナロク」を手に収めて僕の目の前に切先を向ける。 僕は、モクをシェルへ渡した。 「何!?」 突然の事で驚いたモクが声を上げた。それが命取りの開始になった。僕は「雪の人」の銃弾を新しく装填させ、モクへ 「エリア10で一番安全な所へ行って!!」 と言い、二人が走るのを見送って、反対の方向へ僕は歩く。 エリア10。 その場所に何があるのかを言っていなかったけど、此処は貧困街。刑務所や死刑場がある区域。 僕はよくこの場所へ来ていた。仕事絡みで・・だったけど。だからこの区域の人々に嫌われてる。 「あ、こんにちは。そしてサヨナラ」 出逢ったら初め殺してあげる。モクが言ったのが本当なら、キミ達を僕が殺してあげる。この場所を鮮血の海にしてあげる。 だからもっと出ておいでよ。僕が鬼になってあげるから。楽しいゲームをしようよ。 背後から投げられたナイフをかわして一礼し、 「み―つけた♪」 仲間を見つけた子どものように笑って残忍な方法で殺してあげる。だから身につけている武器は貰うね。 「貴様ああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!」 そんなに怒鳴ったら声潰れちゃうよ?僕は拝借したばかりのナイフを向かい来る者の喉へ上手く投げた。 「ヒグアァッ!!!」 「あ、足りないって?」 多量の頸血を地面に落として鮮血の華を作る作業をする彼が手にしていた短刀を無理矢理貰い、それで心臓を抉ってあげる。 「あれ、もう死んじゃうの?つまんないね」 地面に伏した彼の胴体へ短刀を突き刺して、また進む。 これは楽しいゲーム。 でも僕は冷酷な鬼だよ。それは覚えておいてね。さあ、次はどうやって殺してあげようか。 「ヒイィィィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!」 「嫌だなぁ。逃げないでよ、お姉さんっ♪」 僕は「雪の人」に装填させておいた銃弾全てを彼女の体へ命中させた。空になった銃弾が地面に落ちると同時に彼女も地面に膝をついた。 ゲームの名前を教えてあげる。かくれんぼっていうんだよ。 「あ」 「みぃつけたっ♪」 最後の仲間を見つけるまで、続く過酷なゲームだよ。それまで見つけられる仲間は殺される対象だよ。キミには言ってなかったね。 「僕は冷酷な鬼だよ。サヨナラ」 瞬時に相手の右手に収めてあった刀を相手の心臓に突き刺して、その場を去る。遠くからシェルの苛立った声が聞こえた。 死ぬ事はないと思うけど、無事を願ってあげるよ。 僕は前へ進む。すると広い場所へ出た。そこには腐敗した十数名の男達の死骸が転がっていた。 |