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リライトはクスリと笑いながら俺を見てくる。
「誰が愛しき人なんだよ。貴様が想ってた奴はっ・・・・」 俺は途中で言いかけた言葉を呑んだ。 「殺されました。貴方の手によって」 リライトは一歩後ろに下がった。 それを不振に思った俺は、小柄なエナを抱き上げ、上着に入れておいたゴーグルを付ける。 「四代目・・・?」 エナは目を瞬かせた次の瞬間、こちらへ向かって爆弾が炸裂した。 「キャアアアアアア!!!!!!」 甲高い悲鳴が爆風と交差する。 耳の痛みが俺を襲うために、歌を詠う。 『風よ 俺を護る壁となれ』 強風が俺を護るための壁となった。 「やっぱお前も軍に行けば良かったか・・・」 「そんなことなぃのー」 「そうか?」 エナの優しい声に俺が苦笑すると、風は静かに止み再びリライトの姿が目に入った。 リライトは、地面に膝をつきエナを抱えている俺を見て 「流石ですね。でも死なないなんていいご身分をお持ちで」 言葉を吐き捨てる。 それに続いて言葉を言おうとした俺よりも先にエナが言葉を放った。 「そりゃあそうですよー。私がいるんですからー」 「・・・何」 「私は死神ですものー」 可愛らしく笑うエナにリライトはギロリと眼を動かし、ただ一言。 『黙』 と言った。 その言葉は、攻撃詞。 【言葉士 神威】のみが使う事を許される詞。 いとも簡単に声帯を潰され、俺に首を振り「ゴメン」と伝えた。 俺は怒りを露にした顔をりらいとへ向けた。 「その顔、好きですよ」 「・・・」 俺はロングコートを脱ぎ捨てリライトの後ろに立つ人間へ走り、「業火」で心臓を抉り、その左右の奴を真っ二つにした。 およそ一秒間の間に行われた俺の所業に何を思ったのか、自分自身を取り囲む人間を全て殺した。 その中に、リョクを観光に連れて行っていた少女もいたけど、あっけなく殺された。 「さあ、残るは死神の貴女だけですよ」 リライトが蹲るエナに歩み寄る。 でもエナは、大鎌を使い軽い身のこなしで俺の方へ回った。 「お前は軍へ行け」 冷たく言う俺に、エナは何も言わずに素早く姿を消し、俺もリライトへ突っ込んだ。 『壁』 剣が大きな音を立て止まった。 でも、少しリライトの表情が変化した。 どうやら、攻撃をかわせたものの身体に何らかの影響があったらしい。 俺は彼女から数歩後退し、「業火」を左手に持ち替え、右手に「雪の人」を収めた。 確実に何かが起こると信じて。 リライトの身体が、奇怪な音を立てて変化していく。 「ま゛あああああぁぁあああああぁぁぁああああぁぁああぁあああ」 何が起きるっつーんだよ・・・・。 俺は、薄暗くなる場所で、さっき脱いだロングコートを拾い、もう一度身につけ彼女を見る。 そこには、気味の悪い獣に姿を変えたリライトがいた。その姿を見て、俺はあの日のことを思い出した。 あの日俺が、ある一人の男を殺したことを―・・・・・ ケーストルア国にほど近い、サッシュ王国に客人が訪れる事を王国の民間人は何も知らない。 知っているのは、王国自衛警察軍と王族くらいか。 そんなサッシュ王国へ全身を黒い服で包む俺と長身で四角のフレームの眼鏡を掛けた緑の髪を風に流している男が入国した。 俺の名前は、推古=レキ。 長身の男の名前は、隻眼=コーマ。 「なあなあっ!!!アレッ!!俺、アレ欲しいっ!!!」 「あんなあ・・・買い物しに来たんちゃうで・・・レキ・・・仕事やねん・・って言ってる傍から・・・ワイから離れたらアカーン!!!!!!!!!!!」 俺は12歳でコーマが18歳だから、兄弟みたいな構成になってるけど、赤の他人。 というより、サッシュ王国は俺の好きな物が多く揃っているから結構好きな国の一つなんだけど、どうも俺たちはかなり目立つらしく王国の人がじっと見てくると、俺は唐突に足を止めた。 「何や、何か見つけたんか?」 コーマは立ち止まっている俺の背後で動きを止めないでいる。 「殺せ」 俺はただ一言を静かに言った。 コーマは、小声で「了解」と言って詞を読み上げる。 コイツは、【言葉士 詞華】 詞華は、言葉士で二番目に強い者の事を表している。 俺は近くを歩いている民間人に自分の素性を明かし、家へ入る様に言っている最中、コーマは俺が殺せと命じた対象と好戦していたが、次の瞬間こちらは劣勢となった。対象の前へ美しい女性が立ちはだかり、 「もう止めてっ!!お願い・・っ」 涙を零してそう言った。 コーマは女の泣き崩れてゆく姿を目の当たりにして、強く固く握っていた詞剣「填」の力を緩めた。 そこへ、対象が女の横をすり抜けコーマに体当たりし、コーマは簡単に地面に叩きつけられてしまい、俺は即座に二二口径自動式銃「雪の人」で対象の頭・心臓を撃ち抜いた。 対象はまだ死なずに両腕らしきものを動かしながら迫ってくる。 俺は、短刀「血塊」を対象の急所へ突き刺し、暴れる所へ銃弾を放つ。 ほどなくして対象は息絶えた。 「GAME SET」 小さく呟いた俺は地面に倒れているコーマへ歩み寄ると、 「許さない・・・私はこの人を愛していたのに・・・どうしてっ!!?」 哀しい叫びが俺の心を抉る。 それでも意識の消えかけているコーマの腕を肩に掛け、俺は女に背を向けて 「世界の夢・・・・秩序を揺るがす者・・・それがそいつだ・・・お前もあーなるんなら俺が世界から抹消してやるっ・・」 サッシュ王国を急いで後にする俺はコーマの意識が消えない様にずっと話しかけていた。 ケーストルア国に戻ると、俺の右翼を果たしている盟誓=シェルと双子のセナとエナが帰りを待っていてくれた。 コーマはシェルによってケーストルア国国防連合軍警察庁に連れて行かれ、俺は双子の妹であるエナの胸を借りて泣いた。 殺す対象だった者が、人間の形をしていなくて、助ける術が何処にも残されていないから殺すしか手が無くて、そいつを愛していた女の哀しみとか、俺自身の情けなさとかが入り混じって何も考えられなくなったから。 俺は、世界中央国セントラルの裏社会の頂点に君臨する者なのに・・・どうしようもない馬鹿だって事も全て忘れてしまいたくなったんだ。 こうやって、エナに縋る俺も・・・・・・・・消えてしまえばいいと・・・ そう思ったあの日の事を思い出した。 リライトは、呻き声を上げながら俺へ歩み寄る。 この人は、ずっとあの日の事を忘れなかったのだろうか・・・そう思うと俺は手にしていた「雪の人」の引き金を―――――・・ ドォン・・ 爆音がした方向を俺は見た。そこには辛そうに喉を押さえて立つエナがいた。 何でいるんだよ・・・。 リライトは攻撃対象を俺からエナへ変えた。 俺はエナの口がかすかに動くのを見て走り、リライトが襲い掛かるよりも速くエナの身体を抱き上げ、襲い来るリライトから逃れた。 俺の腕によって抱えられたエナは、声にならない声を絞り出そうとして、口だけを動かす。 「・・・・いま・・も・・・・あ・・なた・・・を・・あ・・・・い・・・して・・・い・・・」 エナは俺の頬にそっと手を当てて微笑んだ。 その微笑が俺に何かを起こさせた。 背後に忍び寄るリライトへ俺は語りかける様に歌を詠唱する。 存在の消滅を 叶えし我が名 深闇夜の血涙 その名を持ち 背後の人間を 連れて逝くが 全ての始まり するとリライトの周りを、冥界の番人が囲み、その肉体の皮を剥ぎ、肉を削ぎ落とし、内臓を喰らい荒らし、最後の残った頭蓋骨を持って冥界へと還った。 そこへ飴が静かに降り注ぐ。 漆黒の闇が包む夜となった静けさの中で俺は、エナの声を治すために詠い、彼女にそっとキスをして、 「ごめん」 と言い、闇の中に消えた。 「レキ・・・?」 エナの優しい声はもう俺には届かない。 PR
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ボチャッ 「どうした?」 「・・・・・」 左手に握らせていた名刀「水神」が手からすり抜けて床へ落ちた。 ロキが俺の肩を叩き、顔を覗き込んでくる。 「雨・・・イヤだな・・」 ポツリと呟くオレにロキは何も言わずにただ頭をポンッと優しく叩いた。それがアイツと似てて、涙が零れた。 そこへ、ひょうきんな声で部屋に入ってきた緑頭の男が唐突に 「伝言でっせー♪っとおんや?シェルの阿呆は何処でっしゃろ?」 「伝言なら俺が受け取ろう!コーマくんっ!!」 「何や、ロキはんかいな。アカン、アカンで。アンタはアカンのや!」 「じゃあ、リョクちゃんの処女をうば――――――――・・」 ロキが、緑頭のコーマと呼ばれている男によって床に転がっている。 「油断も隙もあらへん。アンタ、リョクっちゅーんやったら、教えたるわ」 コーマとやらは、オレに耳打ちで静かに教えてくれた。 「レキが消えた」 それから、重要な事を二つ教えてくれた。 双子の妹の疾戦=エナを護るために命を賭けた事。 そんな二人が昔恋人だった事。 そして暗いムードをぶっ壊すのは、やっぱりロキ。 芋虫の様な仕草でソファへ座り、豪快な音を立ててコーヒーを啜っている。 「ロキィッ!!!!!!!!!!」 オレに名前を呼ばれた大人とは思えない大人は、 「俺に聞くなよ~。前だったこんなことあったけど、一人で帰って来たし。でも、エナなら何か知ってるかもしれないよなあ、コーマくん」 「まあ、そうかもしれへんけど、エナは――――――・・・」 コーマが続けて言おうとしたのとほど同時にドアが開き、オレンジ頭のシェルと双子が入ってきた。 姉のセナは、ずぶ濡れの妹エナの隣で心配そうに彼女を見ていたけど、エナはそんな心配をよそにオレに体当たりしてきた。 「・・・私の・・声・・届かないのっ・・・助けてあげて・・・・あなたしか・・・・いな・・・い・・・っ・・・・・・・」 エナの声は震え感情の全てが流れ込んできそうになる。 その感情の中に強い想いもある事に知らないフリをして、オレはエナの肩をグッと押して、いつもの調子のいつもの声で、 「あのバカ、こんな可愛い子放って何処行きやがるっ!!」 と言い、続けてロキが 「本当にそう!全くどうしてアイツは、こぉんなに可愛い子達にモテモテなんだ!」 バカップリを発揮して、そこへキレのある突込みが 「そないな事、言っとる場合ちゃうやろがああああああああっ!!!!」 コーマから注がれ、 「クソレキ・・・・・見つけたらぶっ殺す!!!」 「じゃあ私は、シェルをぶっ潰す~♪」 あまりにもエナ以外の全員が馬鹿な発言を繰り返すために、オレは右手を掲げ 「っしゃあ、行くぞー!!!!!!!」 と言い、ユートラル国国防連合軍警察庁から出て、オレとロキがそれぞれ自分のバイクに乗り、残りの四人はコーマが運転する車で、一人逃げた馬鹿を探しに行く事となった。
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Lake of Twilight ユートラル国からセントラル国へ向かう途中にある大きな湖の水面がキラキラ月明かりで反射する中、俺は浅瀬に足を突っ込んで、ぼんやりと立っていた。 一歩先へ進めば深みに入ってしまう。その一歩に迷いぼんやりと湖の名前を言った。 「黄昏の湖・・」 もし、今誰かに襲われようものなら確実に死ぬかな。 武器は全部水際にそっと靴と並べて置いてあるから。なんて思うのも、面倒になってきた。 だってもう俺は下種な奴等と同等だろうから。 黒のロングコートを脱ぎ捨て、その中に着ていた黒のシャツのボタンを二つ開けて、俺は一歩踏み出した。 何かさっきから見え隠れしてるデッカイ湖からイヤーなカンジがする。 「ロキ、オレは湖へ行くから別の所探しといてくれ!!」 オレは、隣を走るロキへ言った。 「気をつけろよ!!!」 「んなわけねーだろ!!」 バイクの前輪を湖の方へ向け、速度を速めたけど 「おわぁっ!!!!!!!」 危うくバイクが転倒しそうになるのと無理矢理止め、怒鳴ろうとしたオレは急ブレーキを掛けた。 湖の水際に見覚えのある一台のバイクが止めてあって、その横にそっと一丁の銃と靴が置いてあった。 そして湖に何かが浮かんでいることに気づき、靴と靴下・黒のブレザーを脱いで、ズボンの裾と柄シャツの袖を捲り、ザブザブと湖に足を突っ込んで進む。 浮かんでいるソレは、どうやら人間らしい。 でも底が見えない程に一歩が深くて先へ進めない。 それでもオレは、ソレに手を伸ばした。 「・・・・・っ・・届いた!!ん?」 浅瀬ギリギリに立っていた足がズルッと滑って一歩進んでしまった。 ふんぎゃ―――――――!!!!! バシャッ 水飛沫を立てて、オレの身体は何かに当たり、深みに入る事はなかったみたい。 「全くどうして僕がキミを助けてるのさ・・・」 助けられる? ゆっくりと目を開くと、オレの下敷きになって溜息をついている、いつものレキがそこにいた。 「お前が浮かんでるから心出るかと思ったんだぞっ!?」 オレは、レキの腹の上に座りながら怒鳴る。 「ごめんごめん。考え事して―・・・・っつう・・」 レキは胸の辺りを手で抑えた。 オレはレキの腹の上から降りて左側へ座った。 するとレキは何かを考えてオレの身体を強い力で引き寄せ 「キスしてくれたら痛くなくなるかも・・・」 と言った。 キスねぇ・・・・・キスかぁ・・・・ん? っておぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!! 絶対ソレ嘘!!! でもレキはじっとオレを見つめてくる。 「エナは、こんな時してくれるのになあ・・・」 ムカツク。 オレがしないからって、エナの名前出さなくてもいーだろうが!!! 別に好きとか言われたこと無いけど、何かムカツク。 「すりゃーいーんだろーがあっ」 やけくそにキスをしたオレはレキから少し離れたところにペタンッと座ってしまった。 顔アツイ・・・。 レキは、むくっと起き上がりオレを見て 「へたくそ」 と言って近づいてきて、しゃがんでオレの顎をクイッと持ち上げ軽くキスし――――――――――――・・・・・ 「ふぬああっ!!!!?」 おもわずレキを押して口を押さえた。 何か口に入ってきたし!!! しかもレキは平然とした顔つきで 「・・・いってぇ・・・けど、ザンネン♪」 と言った。 何ですか、残念ってえええええええええっ!!!!! 気持ち悪いよぉ・・・・・。 レキのアホゥ・・・・・・・。 さっきの何だよぅ・・・。 何かザラザラしててさ・・ヌルヌルしててさ・・・何かちょっとエロいような・・・そんなカンジでさ・・・って何言ってんだオレ!!? レキは立ち上がってオレの腕を引いて立ち上がらせて、水際へ戻り靴を履いて並んだ。 月明かりに照らされている水面に二人の姿が映される。 うむぅ? 「あ゛――――、お前かなり伸びただろ―!!!!!」 レキは小さくガッツポーズを取って水面に映る自分の姿を見た。 「伸びるのは嬉しいけど、服のサイズが小さいから取りに帰らないと・・」 それはつまり、家に帰るって事か? 「リョク、アイツ等は?」 「お前探してるけど」 「じゃあ、今からセントラル国行こう!!!」 いいのかよ・・・ロキ達放っといても。とは言わないでおこう。 また何かされるに違いないだろうし。 オレ達は湖を後にしてセントラル国へ向かった。 ってか、オレ昼から何も食ってねえっ!? 腹減ったなあ・・・。 気持ち悪いキスしたレキに絶対何か奢らせる!!!!! よしっ、それがいいっ!! 【夢追い人 第八話 南の理由 End】 |