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案内された部屋に荷物を置いて灯りを燈すとリョクが後ろ向きに卒倒した。多分目に映ったものに相当驚いたんだろう。それは、どこの世界から持ってきたのか分からないまでに本物そっくりに作られた人体模型の数々。平然と近寄っていく僕を床に仰向けの状態で「止めろー」とか言って止めようと努力してるリョクとは裏腹に、じっくりと左から右へ見ている僕は、目をリョクへ戻した。
「怖がりな所は、やっぱりおんな―・・・むぐっ!?」
口を塞がれた。本物そっくりに作られている人体模型の一体が前向きに倒れた。
「ギャ―――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!」
至近距離で叫ぶリョクは、僕の口を塞ぐ手を離して部屋から逃げ出した。
部屋に残された僕は、鞄の中から二二口径自動式銃「雪の人」と携帯用懐中電灯を出した。まず、倒れた人体模型をどかしてその周辺に何か細工でもあるのかを探り、そして見つけた。明らかに周りの床と色の違う床を。
そこを強く押すと、遠くの方から甲高い二つの悲鳴が聞こえた。
「雪の人」を腰に吊り、懐中電灯は上着のポケットに入れ、悲鳴の聞こえた方へ走った。悲鳴の犯人は、言うまでも無いユメさんとリョク。
その二人は僕の姿を見つけると助けを請う様に叫びながら走ってくる。
そんな二人を振り払って、元凶の生物へ近寄った。
昆虫の様な体。足は蜘蛛と同じ8本で、頭が人間の形をした体長約3メートルくらいありそうな生物。下手をしたら、喋りかけてくるかもしれないと思ったけれど気味の悪い生物は、ゆっくりっとこちらへ向いた。カサカサという音を立てながら近づいてくる生物を凝視して、「雪の人」の銃弾を生物の頭を狙って銃弾を撃ち放った。でも生物の命は尽きないらしい。
仕方ない。僕は生物から一旦離れて、リョクの腰に差してある「業火」を抜き取って、それを生物の身体へ突き刺した。すると生物はおぞましい動きをして、砂の様に跡形もなく崩れた。生物がいた場所に転がっている「業火」を手にした僕は、ユメさんの視た夢が今の生物と関わっていない事を願った。
「レキッ!!!」
今更動き出しても意味ないよ・・・リョク。敵はもういない事だし。僕は近寄るリョクを適当に相手してやりながら、床に崩れているユメさんに近寄った。
「・・・・・だっ、駄目です・・・・・夢・・は・・・夢・・の・・・・・・ままじゃないと・・・いけない・・っ」
泣いているのだろうか。「業火」を鞘に戻したリョクもこちらへ来て、
「オレらの不幸な夢見たとしても、気にすんなって」
「でっ・・・でも」
「大丈夫。僕達は、今まで何回も死にそうになってるから。ね?」
ユメさんに笑いかけた僕とリョクは、口には出さないものの、この屋敷には何があるのか気になっていた。と、それはともかくご飯食べたい。
「ユメさん、何か食べるものないですか?」
「え、あ、はい!あります!!!!」
そうだよね。こんな所だったらきっと良い物食べれそうだし。僕とリョクは、のんびり歩くユメさんの後をまたついて行った。

食堂では、それなりに良いものを食べた。とは言っても、パンとスープとサラダだけだったけどね。
「じゃあ、僕は寝させてもらうよ」
席を立った僕は、スタスタとあの部屋に戻る。それを必死に追いかけてくるリョクに気づいて、ほんの少し歩く早さを遅めた。

耳につく音を立てるドアを開けると、まだ倒れてる人体模型が目に入った。溜息をついて入る僕とは逆に、ガタガタ震えている後ろの奴は心底ウザイ。というか、怖いならユメさんと一緒にいればココに来る必要性なんて無いのに。まぁ・・・あの人もあの人で訳ありっぽいから仕方ないだろうけど。上着に入れてあった、携帯用懐中電灯を取り出して部屋を照らした。
「な、なあレキ」
「何?」
何とか震えを止めたリョクが僕に話しかけてくる。
「まさかとは思うけど、何かしようとか考えてないよな?」
「何かって何を?」
「さっきの気持ち悪い生き物が何とか・・・そういう類のこと」
「考えたら悪い?」
「オレ、あーゆーの無理なんだけど」
僕は、また震えだしたリョクから離れて、倒れていない人体模型をどかす作業に入った。
「じゃあ、「業火」貸しといて。一人でやるから」
サラッと言う僕に、リョクは「やっぱいい」と言った。綺麗に並ぶ人体模型を動かしても、何も出なかった。その代わりに、寝台で寝転んでいたリョクが何かを見つけて、
「レキ、この壁動く!!!」
素早い動きで寝台から離れたリョクは、僕の所まですっ飛んできた。僕は、壁に力を込めた。すると、ガコンッという音を立てて壁が外れた。
そこから、何か嫌な予感が漂ってくる。一旦壁から離れて、鞄から必要だと思う物を取って、また壁に戻った。
「何があるのか確かめてくるよ」
振り向いてリョクに言った僕に、リョクは
「オレも行く!!」
大声で言ってくれたけど、怖がりなキミを連れて行ったらお荷物だよ。
大丈夫、キミの持つ「業火」の力には劣るけど「血塊」を持ってるから。
「10分待って僕が戻らなかったら、ユメさんの所へ行ってね」
「分かった・・・・死ぬなよ」
「死なないさ」
僕は壁へ飛び込んだ。真っ暗な世界とたった一人で立ち向かう日が、こんなにも近いとは思ってなかったんだけどなあ・・・・。
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レキがいなくなった直後、壁が自力で元に戻った。オレは、驚いてその壁を力いっぱい押したけど壁は開かない。
十分待てって言われたけど、この状況を野放しにするなんて、出来ないオレはユメさんのいる食堂へ行こうと考えて、部屋を出た。そこにはすでにユメさんがいて、その両側には、生き物が君臨している。まさか・・・オレもピンチとかじゃないよな。
「アンタ、何者?」
「貴方こそ、何者ですか?」
あちゃー、聞き返された。
「オレは、果物☆」
「・・・そうじゃなくて」
「オレは、仁義=リョク。アンタは千里=ユメだろ」
「はい。ああっ!! 彼等は、敵ではありませんっ!!!!!!」
両側に君臨する、真っ白で大きい犬・・・みたいな生き物の頭を撫でている。何だ、この人。
「レキさんは、行かれました・・・・か」
「ああ。十分待って帰って来なかったらアンタの所に行けって言って壁の中に」
オレが壁と言うとユメさんは部屋に入って、壁を力強く押した。するとまた、壁が外れた。何で、オレだと開かなかったんだ。ま、いいさ。
「リョクさん、行きますよ」
「え」
オレは後ずさったが、白い犬に押されて壁に入った。
「後を頼みます・・・」
「わんっ!!」
2匹が威勢良く吠えると、壁はガコンッと音を立てて閉まった。
「私、攻撃出来ないので宜しくお願いします・・・・」
それってつまりさ、オレが前を歩くって事?
いやだあああああああっ!!!!!!!!!!
ううっ・・オレとユメさんは暗闇をランプで照らしながら進んでいく。


暗闇は好きでも嫌いでもないのだけど、今の状況は少し辛いものがある。
足元がヌルヌルするからだ。リョクを連れて来なくて正解だったかもしれない。それにしても、ずっと真っ直ぐの道ってどうなんだろうか。
何かが動いた。僕は右手に持った短刀「血塊」を強く握った。何かは、前か後ろかどちらかにいるのだろうけれど一体何が・・。あの時の蜘蛛と同じで弱そうな奴なら何も考えなくて済むんだけど、どうやらそうはいかないらしい。闇の中で光る二つの赤い目を見つけた。その目は左右高さがズレている。懐中電灯の灯りを、そこへ向けると僕は驚きの余り手を口へやっていた。手足は、人間のもので身体は蛙。それもかなり大きくて、跳ねている。跳ねると同時に、水が飛び散り蛙特有の臭いがその場に充満する。
「・・・気持ち悪い」
僕は蛙の心臓を狙って、「血塊」を投げた。蛙の身体は、動きが止まっていた。「血塊」を蛙の胴体から引き抜いて、壁に背を向けながら先へ進んだ。するとまた蛙が現れて・・・ああもうっ!
二十二口径自動制銃「雪の人」で適当に撃ち放って、殺し終えると行き止まりに着いた。
「まさか、戻れって言わないよね・・・?」
独り言とはいえど、これって結構悲しいよね。しぶしぶ来た道を帰ると、あっさり壁まで戻ってしまった。あれ? こんなに近かったっけ?
数分考え込んで、呆然としていると足元がパカッと開いた。
「マジ・・・?」
ドシッ!!!!!
「どっ、どうしたんですか!!!?」
どうしてユメさんの声が聞こえるのかな?
「うぐ・・・・あ、お、お前以外に重い・・・」
リョクが僕の下敷きになって呻いてる。
「レキさんが、どうしてココに・・」
「んー、足元が抜けたっていうか・・なんていうか」
「私達と同じです・・・・・・・その時もリョクさんが私の下敷きに・・・」
暗くて分かりにくいけど、ユメさんは、下敷きなってるリョクを憐れんでるみたい。リョクから退いた僕は、さっさと歩き出した。
「どこ行くんだよ!!」
立ち上がったリョクが、ユメさんの腕を掴んで叫ぶ。
「何処って、ここから脱出したくないの?」
「したい」
「ユメさんは、どうする?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一応行きます」
だろうね。キミは僕たちの行く末を見ているんだし。でも、それを覆すのが僕たち「夢追い人」だからね。
「リョクは、後ろを歩いて。僕は前を歩くから」
「げー・・・サイアク」
うな垂れるリョクへ僕は、
「なら、前歩けば?」
「遠慮します」
僕たち三人は、ランプと携帯用懐中電灯の灯りを頼りに先へ進んだ。
大分歩いた時、最後尾を歩くリョクが、
「レキ、何かいねーかあ?」
僕へ忠告した。確かに、何かいる気配はする。でも、それが何なのかは分からない。ただ、分かるのは今まで遭遇した気味の悪い生命体では無い気配ということくらい。そこで、僕はユメさんにずっと聞きたかったことをぶつけてみた。
「夢って、どんなのだったんですか?」
「ぇ・・・・・・・ぁ・・・・」
質問に答えようとしたユメさんの足が止まってしまった。
こんな所で止まってしまえば、僕たちを待ち構えている奴の思うつぼになりかねない。でも、僕の思考より先にリョクの目が目の前に広がる光景を見つけてしまった。
「レキ、前だっ!!!!!」
ゆっくりと顔を上げて、懐中電灯の灯りを前へ向けた。
懐中電灯の灯りが教えてくれた光景は、ユメさんをリョクをその場に座らせてしまう程のもの。
裸体の女性が、折り重なるように何重にも山積みにされ、その上に一人の綺麗な顔立ちの少年が立っている。彼は、僕たちに気づいて首を180度回し、こちらへ向いて怪しく笑った。
「お待ちしていましたよ、夢追い人推古=レキ」
え? 僕だけなの? というか、どうして僕の名前知っているのだろうか。
「レ、レキさん・・・はっ・・あ、あの・・・か、か、方にっ」
殺される・・かな。床に座っているユメさんは、リョクの方へ倒れた。
「仁義=リョク、ランプの灯りを私の立っている下にある者たちへ点けよ」
「だっ、誰がそんなこと―」
「逆らうなリョクッ!!!!!!」
僕は、叫んだ。下手に逆らってはならないと直感的に感じたから。
リョクは、彼に言われた通り床に敷き詰められている人間へランプの灯りになっている火を点火した。燃えさかる人間の異臭は、僕らを包む。
こんな死の臭い久しぶりで緊張するなあ・・・。
「私の名前は、ドリィ。ずっとずっと待っていましたよ」
ドリィ。
どこかの国で聞いたことがある名前。若い時、薬に溺れ狂気に怯え地下通路を狂った仲間と作り、そこで暮らしていた。しかし、彼はその仲間に殺されると思い逃げた、と。その逃げた先が、まさかユメさんの住んでいるこの屋敷だとは、誰も思わなかっただろう。
しかも、そいつと戦おうとしている僕がここにいることだって。
「待たれても、僕はもう次の国へ行こうと考えているので失礼したいのですが」
「そうはいかないのだよ。私は、貴方を倒してみたいのですから」
僕は、溜息をついた。リョクに会う前、残虐な殺しをやっていた時がある。多分、その時に彼に会ったのかもしれないけれど・・・・・。
その時の彼は普通の人だったのかな? そして、彼は僕を
「さあ、始めようか」
誘った。
「勝てるというならば」
炎がボオッと燃えさかる中、ドリィと僕の闘いが始まった。生きるか死ぬかの闘いが。
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