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ただ進んでいく途中で僕の足を止める奴等が集まってくる。
仕方なく名刀「水神」を鞘から引き抜いて、刃を向かい来る相手へ向け、切り殺し鞘へ戻す。
右腕や顔には返り血が僕を殺し屋の頃の僕へと戻していく。
それが心をどんどんと落ち着けさせていく。
そうして着いた場所は、普通の一軒屋。
物音一つ立てず家の中へ入ると、一人の男が必死に小型ノートパソコンの画面に向かっていた。
それを背後からじっと見つめる。
その画面には「夢喰い人」の情報が書き込まれていた。
この情報は手にいれておくべきだと考えた僕は静かに息を吐く。
その呼吸が聞こえた相手は振り返り、僕を見た。
驚きを隠せない顔には、恐怖がはっきりと窺えた。
「その情報、僕に売ってくれない?」
「むっ・・無理だ!!」
それは残念だけど、その返答が帰って来るのは分かってるから今度は違う質問してあげるね。
「じゃあ貴方を殺してもいいですか?」
「そっ・・・・・それは・・・」
男はパソコンから目を落とした。
その一瞬を僕は逃さなかった。
もう一度「水神」を鞘から引き抜き、男の首を刎ねた。
床にゴロゴロと転がった首を無視して、両腕を削ぎ落とす。
そこで男の身体を椅子から蹴り落とし、両足をも落としてやった。
僕はバラバラになった死体を見下ろして溜息をついた。
でもすぐに「水神」を鞘へ戻し、ノートパソコンを血が付着した右手で持って家を出る。
そこには新手の奴等が待っていた。
それぞれに武器を持ち、それの先をこちらへ向けて奇怪な顔で笑ってる。
ねえ、そんな顔向けてたら瞬間的に命落としても知らないよ。
小さく舌打ちした僕はノートパソコンを空へ高く上げて、「雪の人」を右手に収めて、銃弾を周囲を囲む全員の急所に撃ち込んだ。
鮮血を噴出して地面に倒れていく奴等を見つつ、「雪の人」をホルスターに仕舞い、ノートパソコンを上手くキャッチする。
そうして最後は、バイクに乗って一言。
「僕みたいな夢追い人は、殺し屋っていう職業で生きた方がいいかもしれないね。お前等みたいな奴等が寄って来るから♪」
さて、先にケーストルア国へ向かったはずのリョクを追いかけますか。
でもそれより何より、本当なら顔とか手に付着した血を洗い流したいんだけどなあ・・・。
まあ、それはそうしておくとして早いとこ戻らないと怒られかねないからね。
そう考えた僕はバイクの速さを最高速度まで上げた。


【夢追い人 第十四話 賞金首 End】
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ケーストルア国っていう国で一人で歩くオレは、ただ呆然と歩く。
それが凄く悲しい。
レキが傍にいないだけで。
こんなにも悲しくて寂しいなんて思わなかった。
「失せろ」と言われたその言葉が鋭くオレの心に突き刺さる。
過去のオレの記憶が今のオレを哀しみの底へ落とそうとする。
オレはそんなに手が掛かるんだろうか。
レキ、オレはお前の手伝いは出来ないのか?
オレはお前の手助けをしては駄目なのか?
オレはお前の何なんだ?
どうしていつもオレを守ってくれる?
どうしていつもオレを心配してくれる?
本当は分かってるけど、レキが「失せろ」と言った言葉が全てを覆してしまいそうで怖いんだ。
きっと・・・。
オレは弱い弱い一人の人間だ。
でもレキは沢山の人々から尊敬される強い強い人間なんだ・・・。
本来なら手なんか届かない所にいるはずのお前はオレを何だと思ってるんだ?
聞きたい・・でも聞けない。
何故ならオレが昔のオレみたく素直じゃないから。
そんなことを聞いた所で、馬鹿にされて置いてけぼりにされて必死に追いかける。
そんな繰り返しが嫌いなわけじゃないけど、もっとオレを戦いに入れさせて欲しい。
「夢追い人」になったから今回の仕事があったんだろう?
それならどうしてお前はオレという人間を戦わせない?
だからオレはオレを失くして【サラ】を目覚めさせてしまった。

オレはサラが怖いんだ。
サラは計り知れない力を持った人間で、無力で非力なオレとは別の人間のようで、それが人の目に触れるのが怖いんだ。
オレは昔からサラの心の中にいた。
サラはオレの存在を知っていた。
でもオレを隠そうとしていた。
それはオレが存在を持たない者だから。
だけど、その均衡は脆く崩れた。
サラの心に深い傷が刻まれた。
その反動でオレが現われた。
その時出逢ったのはレキ。
だからオレを解き放ってくれたのはレキ。
サラの心に傷を入れたのはレキ。
レキはサラをある目的実現のために探していたんだと。
そう言っていた。
でも本当は違うと思う。
何故ならサラがたまにオレに言うんだ。

『レキ様は、私を助けてくれた大切な人』

哀しみの底で小さく呟くサラの声はいつも震えてる。
その理由をオレは知らない。
オレという存在は16歳からしか、この世界存在していない。
その以前の記憶はほとんど無い。
オレが何処の人間なのか。
人間ですらないのか。
何も分からない。

小さな池を覗き込んで考えるオレは、風に揺れる水面をじっと見つめる。
「オレって誰だろ」
『また悩んでいるの?』
サラが心の中から問いかけてくる。
「この身体はサラのだろ」
『・・・・そうとは言えないわ』
サラはいつだって簡潔な言葉でオレへ言葉を返す。
溜息をつくオレにサラは何も言わない。
だってオレ達は、二人で一人。
オレの苦しみはサラの苦しみ。
サラの苦しみはオレの苦しみ。
レキには秘密だけど、オレはオレ自身の身体を捜してる。
この世界の何処かにオレはきっといる。
「夢追い人」になったもう一つの理由がそれ。
サラは止めろっていうけど、でもオレはやっぱり自分の身体が欲しい。
それでサラにはサラという人間として生きて欲しい。
だから「夢追い人」になった。
レキは世界を守るために「夢追い人」として生きてる。
それを利用するのは心苦しい。
でも、もしもその事実を知ったらレキはオレをどう見るかな。
非難の目を向けるかな。
気持ち悪いって言うかな。
『だから何?って言うと思うわ、私は』
「だろうな」
オレは苦笑する。
サラも静かに笑ってる。
傍に止めてあるバイクに手を触れ、誰かがこちらへ向かっている気配を感じたオレは、その方向を見る。
そこにはレキがいた。
バイクを押してオレの方へ歩いてくる。
レキの全身は血に塗られていた。
ただレキはバイクを止めて、両手をオレへ向けて広げてみせた。
オレはそこへ走った。
レキは優しくオレを受け止めるけど、オレの方がデカイせいで尻餅をついてしまった。
オレが慌ててレキから退こうとすると、レキは
「酷い事言ってごめん・・・失せろなんて言って・・・」
震える声でオレへ言う。
その声に反応する様にオレとサラは同時に思った。


本当の事を言っても笑わないかもしれない。
本当の事を言っても蔑まないかもしれない。
本当の事を言っても恐怖に慄かないかもしれない。
この人なら全てを任せても大丈夫かもしれない。


「慣れてるし、大丈夫・・・それよりさ!さっき美味そうなアイス見つけたんだっ!!!食おうぜっ!!!!」
「いいけど、太るよ~?」
「問答無用ッ!」
オレはレキの手を引く。
レキ。
オレはいつかお前に全てを教えるから、その時が来るまで待って欲しい。
お前なら待ってくれるよな?

「あのさあ、その前にシャワー浴びないと確実に店の人に怖がられるんだけどー・・・」
レキの溜息が聞こえる。
それを笑ってオレは返した。


【夢追い人 第十五話 リョクとサラ End】
「夢喰い人」との一件を済ませてセントラル国に戻ると、空は闇に包まれていた。
その空を仰ぎ見れば、数億個の星々が小さく瞬き空を彩っている。
それを見て僕はバイクを止めた。
隣につけていたリョクもバイクを止めて空を見る。
何の変哲もない空の闇に星と月があるだけ。
それは何億年も続いて来た事なのに、今日だけは特別なものに見える。
リョクは何かを僕に伝えようとしたのか悩んだ顔をした。
その顔に何を問う事をしない僕はただ空を見る。
再び始まる旅に、何を思うか何を感じるかは僕とリョクでは異なる。
僕は世界を守りぬくために。
リョクは何かを遂行するために。
以前から思ってたんだ。
リョクには何らかの秘密があると。
だからって秘密を聞こうとは思わない。
それは今が夜だから。
夜はそんな時間帯だと思う。
本当の意味での夜は僕達には遠い未来。
こんな夜は家に帰って、ゆっくりすればいいかな。
それが駄目なら屋根に昇って外でも見るか。
僕はバイクのエンジンを掛け、リョクの前を走る。
リョクはただ僕を静かに追いかけてくる。
全身血まみれみなったままの僕は、家に着いて母さんとロキにかなり心配された。
怪我はないかとか。
そうやって心配されるのが、当分先まで無いかと思うと少し淋しく感じてしまった。
僕はシャワーで全身に纏わりつく穢れた血を洗い流し、簡素な服に袖を通す。
リビングに出て、ビン牛乳を一気飲みして、庭へ出る。
そこには歌を歌っているリョクがいた。
その歌を、芝生に座って聞き入っていると空に瞬く一つの星が、急激に美しく輝いた。
その星は、何億光年も先で消滅した名も無き星。
儚げに歌うリョクの歌は何処の国のものなのか僕は知らない。
ただ、思うのはその曲がこの世界の言葉ではないこと。
ただ聞いているだけで儚く聞こえるだけ。
それが心に染み渡る。
僕は一度自室に戻り、小さな小箱から一つの宝石を取り出す。
それを持って庭に戻ると彼女はまだ歌を奏でていた。
手にしてみた宝石の名前なんか知らない。
旅を始めようなんて思ってなかった頃に出逢った、とても強い旅人に貰ったこの宝石には願いを叶える力が昔宿っていたのだと旅人は言っていた。
宝石は深く蒼く光り輝く。
まるで特別な夜に生まれた小さな赤子の様に。
歌い続ける彼女の歌に聞き入って、母さんが武器であるフルートの音色を旋律に乗せて奏でる。
彼女もフルートが入ったことに気づき、この世界の言葉で小さく「ありがとう」と言った。


この夜が明ければ、また旅が始まる。
再び始まる新しい旅が―



【夢追い人 第十六話 セントラルの夜 End】
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