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「入るな」って言われると入りたくなっちゃう性を持ってるんだけど、入ったら殺されかねないから止めとこ。サラが出てくる間、僕は小型パソコン型携帯電話の蓋を開ける。ファールアイズ国にある星の数を確かめる。
赤の星は、僕達二つだけ。黒の星は、鐘の音を鳴らさない教会を取り囲むように二十個ある。いくら何でも【夢喰い人】がいすぎだよ・・この国。
でもこれを倒さないといけないし、そのうえまだ赤の星が僕達だけだし。
僕はパソコンの蓋を閉じて、ベッドへ仰向けになる。天井を見て溜息をついた。

ポタッ    ポタッ

目の前に長い銀髪がある。でもそれは水に濡れて、その水は僕の頬に落ちる。
「出たわよ」
ガバッと起き上がった僕は、サラを見る。長くなった銀髪に真紅の瞳。思わず僕はその銀髪に手を伸ばしていた。でもそれは止められて、バシッと頬を叩かれた。
「・・・・・ったぁ」
「まだ乾かしてないのに何触ろうとしてるのよ」
サラは、乾いたタオルを使って髪を拭いていく。そして僕は彼女と入れ替わりにシャワーを浴びに行き、洗いなおせとか言われたら敵わないから綺麗に汗とか汚れとかを洗い流す。そして寝巻きを着て部屋へ戻ると、髪を乾かし終えたサラが窓から外を見ていた。
「ねえ、レキ」
彼女は徐に僕を呼ぶ。僕はパソコンの蓋を開けて、電源を入れながら「何?」と言った。
「もし、私とリョクが別の存在だったら貴方は私とリョクのどっちを取るかしら?」
僕の手は止まった。いや、止められた。そんなものに答えがすぐ出るわけがないから。返答を返さない僕に彼女は続ける。
「取れないわよね・・・私とリョクは同じだもの・・・」
その言葉の意味が全く分からない。サラとリョクが別人なのか。それとも本当に「もしも」という仮定なのか。
彼女は窓から離れて、ベッドに入る。顔だけを出して僕を待つ。
「ねえまだ寝ないの?」
「うん。まだ寝れない」
「傍にいて欲しいわ」
サラは暖炉の前に置いてあるソファに座ってパソコンを弄る僕を自分の隣に来させようとする。
「どうしても?」
「・・・どうしてもよ」
「・・・分かった」
僕はパソコンを持って、ベッドの中へ入る。納得したサラは、隣でいる僕の方を向いてほんの少し嬉しそうに「おやすみ」と言って眠った。そして僕は気づかれないように、ベッドから這い出る。物音一つ立てない様にして、寝巻きから全身を黒で纏える服へ着替える。二二口径自動式銃「雪の人」を腰に吊るしたホルスターへ仕舞い、ポーチに予備の銃弾と手榴弾を四ついれておく。ブーツを履いて、赤外線付き暗視ゴーグルを首から下げ、使い古した黒の帽子を被る。ギシッ・・という音を立てながら、僕は部屋を出た。
そこから小走りに宿の玄関へ行く。そこにいた宿主にすぐ戻ってくるから、玄関から一番近い部屋のシャワーを貸して欲しいと言っておく。
すると宿主は、僕の事を知っていたらしく、「分かった」と言ってくれた。
宿を急いで出た僕は赤外線付き暗視ゴーグルを付けて走る。
向かう先は、鐘の音を鳴らさない・・・あの教会。
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向かう先に、教会を指定したのは他でもなく人間を殺すため。そのためには、一人で行くしかなかった。サラを連れて行く事は出来ない。それはサラが反魂士だから。というのもあるけど、今は夜だから。
吐く息が白く、手袋をしていないと指が悴んで可笑しくなりそうだから、上着の内ポケットから手袋を取り出してそれを嵌める。
教会に着いた僕は静かに「雪の人」のグリップを握る。そして銃口を教会の扉へ向けた。じっとじっと、扉が開くのを待ち、ギッ・・という音を立てた瞬間、引き金を引いた。銃弾は真っ直ぐに飛び、教会の中にいた人間の一人が叫んでいるのが分かった。でもそこまでだった。
僕は四方を【夢喰い人】に囲まれていた。
「自ら出てくれるとは思ってなかったよ、アリガトな夢追い人サン♪」
夢喰い人の一人が僕へ言う。暗闇でも分かる程に声は弾んでいる。
でもその声が鬱陶しくて、僕の左手はもう動いていた。
左手に収めてある名刀「業火」が一番近くに立っていた奴の首を跳ね飛ばした。刀の刃はすぐさま血に染まり、暗闇の中を僕だけが速く動き、次から次へと殺していく。左手を一度止めて、暗視ゴーグルから周りを確認する。僕の足元にある雪は鮮血で美しく染まり、生き残っている者は、あと二人だけ。さて、どうして殺してあげようか。
「やっぱ夢追い人なだけあんだな~」
「世界最強とか言われてるし、そりゃ俺達なんかじゃ相手になんねーって」
「そんでもやっぱ殺してみてーよなあ」
「そりゃあ、なあ」
生き残れた二人は、ケラケラと笑ってる。呑気な夢喰い人は、死刑だよ。
僕は右手のスナップを効かせ、銃弾を二人の心臓と頭へ放つ。
暗闇を突き抜けていく銃弾は綺麗に飛び、命を奪った。血を噴出して死んでいく人間を見下して僕は言う。
「弱ぇんだよ、テメェ等」
そして宿へ向かって走る。
「雪の人」はホルスターに仕舞い、「業火」も鞘へ仕舞う。
宿へ着くと、宿主が僕の帰りを待っていてくれたけど、結構驚いて急ぐように言う。それに従って、僕は本当に玄関から一番近い部屋のシャワーを借りた。服に血はつかなかったものの、髪と顔、手には少ないながらも返り血が飛んでいた。それを洗い流し、髪を完璧に乾かしてからサラの眠る部屋へ戻った。静かに部屋へ入り、ベッドへ潜り込むとサラが目を開けた。
うげ・・・。
「何処行ってたのよ・・・」
いつ起きたんだろう・・この人。
「えっと、宿主に色々聞いてたんだ」
サラは僕をじっと見てる。
見てる見てる見てるっ!!!!!!!
「・・・本当かしら?」
「本当だよ。不服ならキスしてあげよっか?」
「別にいいわよ・・キスくら―――――・・・んっ!!!!」
サラの唇に僕の唇が当たる。別にいいって言うから僕はサラにキスをした。彼女は僕の身体を押すけど、何故か僕のほうが力が強いらしく抵抗を止めて身体を委ねてきた。
・・・。
だから僕は彼女の背に手を回す。
「・・・んんっ・・・・ぁ・・・・・ゃ・・・」
彼女の口から吐息が零れる。ごめんね、今の僕は欲求不満かもしれない。
静かにサラから離れ、僕は眠ろうとするけど、サラは何かを期待してる様な目で僕を見る。
ああ、続きをやれって?
ごめんねえ、僕は優しくないから続きはしてあげないよ♪
「駄目だよ、今日はここまで」
「で、でも・・・」
サラは僕の右腕を持ってじっと目を見る。
「何をして欲しいか自分で言ったら相手してあげてもいいよ?」
「・・・」
僕はニッコリと笑う。
サラは僕の腕を引いて耳打ちした。
鐘の音が教会から国中に響き渡るその中で、私は聞きなれない名前を耳にして呆気にとられた。それと同時に私は外がだんだん暗くなってきている事に気づいた。
いけないっ・・!!!
レキに心配を掛けてしまう。けれど、この男が話してくれる本当の事を私は知りたい。
「どうしましたかー?」
そう男が私に声を掛けたと同時に教会の扉が静かに音を立てながら開き、
「どうもしないよね、サラ?」
宿にいるはずのレキがそこにはいた。

【日が沈む頃教会へ・・・】
そうメモされた紙の通り、僕は教会へ来た。ただ此処へ来た時間が日が沈む前だという事は、内緒。本当は、サラが心配で後をつけてた。そうしたら彼女は此処へ入った。
「レキッ!!!!」
サラは僕の所へ駆け寄ってくる。僕は彼女の所へ行きながら男へ言う。
「僕を呼んだのは、貴方ですか?」
その返答に男は首を縦に一度振った。夢喰い人じゃなかったのはいいけど、色々考えなければいけない雰囲気なんだよね、これは。
サラが僕の後ろへ回り、男は自分の名前を僕に教えてくれた。
「私の名前は、天空神=ファルセ。この世界の者ではありません。そして仁義=リョクという者は、この世界の者ではありませんー」
にこやかな笑顔でファルセが言うと、サラは僕にもたれる様にして倒れてきた。事実に耐えられなかったのか、それともリョクに戻る合図なのか・・・。僕は彼女を椅子に座らせてファルセに言う。
「リョクの本当の名前は?」
「生前の名前は、神=ソラ。死後の名前は、冥界番人神=ソラ」
生前と死後。二つの言葉に僕は疑問を抱いた。
リョクは、本当はソラという名前の女の子で、一度死んでいる・・・。そして彼女は目を覚ました。
「そうだ・・・・・オレは冥界番人神=ソラ」
彼女の瞳は、とても美しい赤い色に染まっていた。

天空神=ファルセのせいでオレの素性がバレた。だからオレはファルセの首を絞める。そりゃあもう締めまくる。
「テメェッ!!!!!!!!!」
「すいませんー。でも私も使命がありましたからー」
ファルセに突っかかるオレにレキが唖然としてる。そっか・・・そうだよな・・・。オレの名前知っちゃったもんな。オレはファルセから離れ、レキへ深々と一礼し身に着けていた衣服を自らの意思で、漆黒の衣服へ変えていく。その流れにレキは何も言えずにいた。
そして衣服全てが本来のオレのものに変わってオレは覚悟を決めた。
「話したいことがあるんだ」
レキは何も言わないで、ファルセとオレの後ろをついて歩く。

『大丈夫なの?』
心の中でサラがオレへ呼びかける。いつかこの日が来ると分かっていたから大丈夫。
『ならいいけれど、無理するならアイツを呼ぶわよ』
それは勘弁。出来ればオレの口から全てを話したい。でも最初の方は無理だからお前に任せるよ。
『私は、お前って名前じゃないわ』
こんな時までそういう口ぶりかよ。
『何か言ったかしら?』
いいえ、何も。そしてオレは教会の地下へと進む。
そうして着いた場所は、教会の地下とは思えないほど明るい一室。
そこにオレは入り、後にファルセとレキが続き、レキの足が止まった。
目の前の壁に書かれた異界の文字。ファルセでも分からない異界の文字。
その文字の意味をオレは理解出来る。それはオレがこの世の者ではないから。
オレは二人をイスに座る様に示し、オレは壁に手を触れた。そしてオレは静かに話し始める。

【十八話 END】
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