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徐々に、セントラル国という国に近づいているせいか訪れる国の道が綺麗に整備されている。
そして僕を置いてさっさと走って行ったリョクが、今まさに入ろうと試みている国の入口ゲートで警察官と揉めている。
そこへ介入のため間に入った僕を二人は見る。
リョクは「何だよ」という相変わらずな表情をして、警察官は僕の姿を見てハッとした表情をし、敬礼した。
「お久しぶりであります! 本日はどういったご用件で本国の方へ?」
「えっと・・・」
僕はチラ、とリョクを見て
「休暇中だから通してくれる?」
「畏まりました!」
警察官はそう言ってゲートを開ける。
リョクは自分のバイクを手で押して先に入ろうとして、それを僕は止めた。
「ねえ」
「なんでしょうか?」
「バイクなんだけど、セントラル方面の出口ゲートに運んでおいてくれないかな」
「畏まりました。丁重にお運びしておきます。いってらっしゃいませ!」
警察官に別れを告げ、僕たちはユートラル国に足を踏み入れた。
ゲート内に広がる街は活気に満ち溢れ、道を行き交う人々が僕たち二人を見て、
「レキ様だ!」
「レキ様が来ているぞ!」
と口々に言いながら、集まってくる。
どうしようか、と考えている矢先、リョクが僕の腕を強く引き、適当な路地に逃げ込んだ。
その路地は嫌が応にも懐かしすぎる道で、どこへ向かう道なのか僕は理解してしまった。
リョクはこの国に初めて訪れたはずなのに、どうしてこの道を選んだのか、と聞けば「野性的感覚」と返してくる。
そうして僕たちは、いや、僕の腕をひいているリョクはひとつのビルに入った。
ピタ、と足を止める僕をリョクは見る。
その僕は、腰に吊るしたホルスターから二二口径自動式銃「雪の人」を素早く抜き、肩から下げている小さなショルダー型バックから赤外線付き暗視ゴーグルを装着する。
「お前・・・何・・・」
リョクが何か言いかけようとしたのとほぼ同時に照明の電源が落とされた。
「いっ・・・いやだああああああああああああああっ!!!」
「叫ぶな、馬鹿」
と言って僕はリョクにもゴーグルを着けさせる。
「おおー!」
辺りが見えるようになったリョクは多少喜びながら自分の武器「水神」に手をかける。
「一歩も動くなよ、リョク」
「了解!」
その返事を聞いて僕は、一番近くにあるエレベーターに乗り込んだ。
そのエレベーターの中に同じようなゴーグルをつけている男が二人乗り込んでいて、扉が閉まると僕を捕まえようと迫ってきたから、適当に一発ずつ急所へ蹴りを入れて気絶させておいた。
エレベーターは最上階まで僕を連れてゆく。
その最上階も同じように照明はついていない。
でもそこにいる相手が誰なのか分かる。
「レキッ!」
暗闇の中で立つ一人の青年が名前を呼んで飛びつこうとしたので、それを軽い身のこなしで避け、適当な机の上に乗った。
「久しぶりだね、ユートラル国、国防連合軍警察庁総司令官、明誓=シェル」
そう言うと照明の電源は入れられ、部屋と相手、僕の姿は明るみにされた。
オレンジ色の髪と目が印象的な青年は僕を捕えられなかったことで悔しげな顔をしている。
そこへ一歩も動くな、と言っておいたはずのリョクがやってきて、その彼女を見てシェルは目を見開いた。
「どうしてお前がーーー」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべているリョクをよそに、
「コイツは仁義=リョクだよ、シェル。リョク、お前の前に立ってるのは超絶変態野郎の明誓=シェルだからこっちにおいで」
僕はそう言い、リョクを自分の傍に来させる。
そこへまた一人、金髪碧眼の女性がやってきた。
「失礼します、総司令。お客様です」
「通せ」
警察官の制服を着ている女性の後ろからチビッ子が二人タタッとこちらへ走ってきた。
チビッ子は僕たちの前で足をとめ、
「剛強=セナ! 疾戦=エナ! ただいま参上っ☆」
口を揃えて言った。
参加型小国を出てからこの双子は僕たちの後をどうやらつけていたらしい。
そうでないと、この場所へ来たりしないだろう。
「総司令、推古=レキ様と少しばかりお話をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ。構わん」
シェルは総司令官らしい口ぶりで言う。
「それから総司令、私が彼とお話をしている間に客人をセントラル国へ。推古=レキ様のお連れの方を本国の観光へ。お願いします」
「・・・分かった」
少し嫌そうにシェルは言い、僕は部屋を後にする彼女の後ついて歩き、足を止めた時、そこには両開きの巨大なドアがあった。
そのドアを開き、足を踏み入れた部屋の目の前には、ユートラル国が一望できる窓が広がっていた。
そして彼女が自らの名前を名乗る。
「申し遅れました。私の名前は神道=リライトと申します」
女性でリライト、という名前は珍しいな・・・と思っている僕へ、リライトさんは僕を窓の近くまで来るよう手招きした。
「本日、私が貴方と此処でお話をさせて頂かせてもらったのは、他でもない。仕事の依頼なのですが・・・よろしいでしょうか?」
仕事。
そう聞いて僕は一つ返事で首を縦に振った。
「先日、夢喰い人と呼ばれる集団の末端が本国及びケーストルア国に侵入しました。その者達の駆除をお願いしたいのです」
ここでひとつ補足をしよう。
僕たちの世界には、世界最大規模を誇り政治経済界の頂点に君臨するセントラル国というのがある。
そのセントラル国を守るように東西南北に四天王国と呼ばれた国がある。
その国々を人々は、「東のユートラル」「西のファーイレル」「北のワァールアイズ」「南のケーストルア」と言う。
「夢喰い人か・・・やりがいがあるよ」
「そう言われると思っていましたので、仕事用の服を郵送していただいておきました。着替えて頂けますか?」
「うん。それじゃないと仕事してる時は違和感あるし。貸して」
あっさりとそれでいて冷たく言う僕は彼女から服を受け取り、今着ている服を無造作に脱ぎ、着替え始めると彼女は僕に背を向けた。
「あ、そうそう。僕と一緒にいた奴なんだけど・・・」
「その方でしたら、私の部下と一緒に観光をしておられるそうです。私の部下は命令に忠実な者なので心配せずとも大丈夫です」
「そう。ありがとう」
「いいえ。当然のことです」
彼女がそう言ったのと同じくらいに僕も服を着替え、元々着ていた服を鞄に詰め込み、真新しい自分の服装に目をやり、僕たちはその部屋を後にし、ビルの外へ来た。
そこには僕のバイクが置かれていて、いつものようにヘルメットとゴーグルをつけ、エンジンをかける。
「ご武運お祈りしています」
「ありがと」
こうして僕はケーストルア国へ急いだ。



[第七話 依頼 End]
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