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面倒事になる前に殺しておけば良かったんだろう。あの時の俺の判断が鈍ったのは事実だ。今更過去を悔いても意味なんて無い。相手は人間じゃない。分かっているはずなのにどうして行動を起こせない。
相手は的確な判断で俺の命を狙っているのに。リョクやティムは雑魚の相手を必死にしているのに。
俺はまた判断を鈍らせているのか。吟遊詩人 神威の名が廃りそうだな。
「ちょっとぉ、メッツゥ~。アタシ、愛してるのにぃっ~!」
お前は人間に戻れただけの人間の屑だ。そんな奴はこの世界に必要ない。
消えろ。俺はお前の様な奴等が嫌いだ。
「わりぃな、俺はお前を愛せない」
「あぁんっ! いけずぅ~!」
そうやって喋っていられるのも今のうちだ。お前の仕掛けてくるその腕の先端に、体全身を痺れさせる毒が塗られてるのは知ってるから、その腕を削ぎ落としてしまえば意味なんてない。
でもどうしてくれようか、生憎俺は武器を持ってない。お前如きにヴァイオリンを使うのは勿体無い。
レキは毒に当てられて身動きを取れないだろう。いや、動けるか。アイツも俺と同じなら動けるはずだ。相手から飛び退いた俺は、地面に座って俺を見ていたらしいレキを無理に立ち上がらせる。フラフラと俺の方へ傾くレキは、ごもりながら
「自分に命令したら動けるかもしれない。失敗したら一人で頑張ってよ」
そう言ってくれた。するとレキは小さな声で自分に命令を下し、しっかりと地面に足をつけ、腰に吊るしたホルスターから銃を抜き、俺から離れた。
「レキ」
呼び声に反応しないレキの瞳に生気は無かった。倒す相手だけを見ている。あの馬鹿野郎! ガキはガキなだけか!! 俺は銃口を相手へ向けているレキを地面に押さえつけ、
「やっぱりお前に頼むのは止めだ。ガキは黙って大人しくそこにいるんだな」
レキの呪縛は解け、俺はレキから離れ、向かうべく相手を見た。呑気に笑ってやがる相手を殺す。失敗の無いように。
「頑張りなよ、メツ」
地面に座るレキが声を掛けた瞬間、俺が回りに張っていた結界という一種の障壁にファリエルの腕が激突した。
結界のお陰で俺は事なきを得たが、腕がレキへ行く手を変えた。レキの能力に障壁なんて文字は無い。瞬時慌てた俺をレキは笑った。
「こんな事になるのは慣れてるんだ」という表情をして。
レキの顔面で腕は止まった。腕はベキベキと音を立てながら内側から破裂した。レキの声が腕よりも速かっただけか。
ファリエルは両腕を失い地面に崩れ悶えている。
実に見苦しい光景を俺は見下ろし、足元にあった一本の剣を手にした。
剣なんてもの使った事は無い。吟遊詩人は剣を使わない変わりに楽器や声を武器にする。
「私を殺せば呪いがお前を苦しめるぞ・・・!」
「別に構わねえよ。一度はお前を殺し損ねた男だ。そのくらいの覚悟はある」
俺は剣の刃をファリエルの頭の上に翳し、勢いよく刃を落とし、目を疑った。いたはずの相手がいない。
「これぐらいで死ぬとでも思っているのですか」
死ぬ直前まで行った相手は俺の背後へ回り込んでいたらしい。
そして俺へ攻撃せず、レキにも攻撃をせず、リョクがいる方向へ飛んだ。
「リョク、何してるの? 手間取ってるなら手伝ってあげようか?」
「何だよレキ! 別に手間取ってるわけじゃ、な      」



レ、キ、じゃ、な、い。
後ろに振り向けない。誰だよ、こんな気配の奴。いくらレキが怖くてもこんな気配じゃない。アイツは怖いとかじゃなくて、殺し屋だから、もっとこう・・・殺意がある気配だから、コイツは違う。
でも今ここで戦う手を止めたら前にいる気持ち悪い奴等に何されるか分かんねえし、後ろ向いたら向いたで怖いし。
どどどどどうしたらいいんだ!!!
「リョク! サラを呼ぶんだ!!!」
おおっ! 本物のレキの声だ。
オレは人間の耳には聞き取れない言葉を紡いでゆき、気力を失いつつ、後ろへ振り向いた。
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