|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
―奪う事が自分の役目だとずっと思っていた。
流れる血の味も匂いも知り尽くし、少年はもう自身が綺麗ではない事を理解している。 ただ、それでもヒトという生き物は何処かで欲してしまうのだろうか。 薄紫色の瞳を細めた少年が、腰に吊るした二十二口径の自動制銃《Snow Eye》を素早く手に収める。 「あ、ねーえ、お嬢ちゃ」 野太い男の声が止まる。カチリと落ちた引き金に指をあてがう音が聞こえ、男は唾を飲んだ。 「ザンネン、女じゃないよ?」 少年の声と共に、勢いよく飛び出した鉛玉が男の脳天に命中し、奴の命を瞬時に奪い取った。 銃口から流れる煙を眺めつつ少年は、嘆息する。 「失礼にも程があるよ」 そう言った彼は、上着の内ポケットに入れていた懐中時計を取りだし、時間を確認する。 もうじき昼時といった所だ。 周囲を見渡す彼の視界に、背の高い銀髪の青年が入る。 「うわっ、お前また無駄弾使ってんじゃねえかよ・・・」 青年は、少年の元へ駆け寄りつつ嫌そうな顔を浮かべた。青年の名は、リョク。 いや、リョクは青年ではなく少女だ。高い身長と中世的な顔で男に度々間違えられている。 「まあいいや。宿見つかったけど、お前何か食ったか?」 リョクに尋ねられた少年、レキは首を左右に振る。 「ならさ、何か買って宿で食べようぜ」 「そうだね」 そう言ってレキ達は、血の海と化した路地を出て、リョクの見つけた宿へ向かった。 しかし、彼女の見つけた宿は酷い有様だった。 オンボロもいい所まで、とは言ったもので、本当に宿なのかも怪しい程だったのだ。 「外装が酷いだけかもしれない」と淡い期待を寄せたレキは、中へ入った早々リョクの首をあらん限りの力で締め上げる。 「ど、う、い、う、こ、と、か、な、馬鹿リョク」 「ギギギギギブギブ!!! だっ、だってココ以外にはねえんだもん!」 レキの細い腕をバンバン叩くリョクに、レキは疑いの眼を向けている。 だが、リョクの云う通り他に止まれそうな宿はなかった事も事実だ。レキは、彼女の首を絞めていた腕を解き、 「まあ、他に無さそうなのは僕も知ってたからね」 「お・・・ま・・」 リョクの愕然とした顔に、レキはニヤリと笑い、今にも脆く崩れそうな宿の中を進んで行った。 オンボロ宿の部屋は、これまた酷い有様だった。 床は所々穴が空いているし、掃除が行き届いていないシャワー室はカビまみれだった。 唯一の安全地帯が、ベッドだけで、それも一人用のベットが一つだけ。 やむなく二人は、寄り添って眠る事になり、そのまま朝を迎えた。 薄い布団を思い切り蹴り上げ、冷気を全身に浴びる。 「さ、さぶ・・・ぶ・・」 リョクがもぞもぞと動く傍で、レキは手早く身支度を済ませ、まだ眠ろうとする相棒の頬を叩いた。 「リョク、起きなよ。今日は調達で忙しいんだから」 バシン、バシンと容赦なく頬を叩くレキだったが、何度繰り返しても起きる様子の無い彼女に呆れたのか、荷物を手にベッドから降り、 「先に外に出てるよ、リョク。さっさと来ないと先に朝ご飯食べるから」 部屋を出てゆく。その声を聞いてか聞かずか、リョクは飛び上がり、せこせこと身支度を始めた。 オンボロ宿の前で、相棒の着替えが終わるのを待っていたレキの前に、リョクとは正反対の清楚で可憐な愛らしい少女が立った。 首を傾げる彼に、少女は《酷く泣きそうな顔》を見せた。 「え、どうし・・・」 困惑するレキに少女は首を振り、 「朝飯はゴーカにいこーぜー!」 リョクの声を聞いたレキが瞬きをした次の瞬間、少女の姿は消え去っていた。 「あ、あれ・・・女の子がいない・・」 「レキ、まだ寝ぼけてんの?」 「起きてるよ」 訝しげな表情を浮かべるレキを尻目にリョクは、彼の手を取り市場の方へ向かった。 彼らが歩く街は、闇市場が根強く広がる街の一つだ。 国の名は、フェンリール。街の名は、ノアール。 リョクがいい宿を見つけられなかった事も、この街の特徴故だ。 良い噂の流れる街には、良い空気が流れる。反対に悪い噂の流れる街には、悪い空気が留まる。 それは絵に描いた事柄と同じだろう。 ノアールは、後者だ。 市場と言えど、朝食に在りつけそうな露店はなく、ただ只管に武器か怪しげな薬を売る露店ばかりが並んでいる。 レキは、ひとつひとつの店に眼を配りつつ、隣を歩く空腹を堪えているリョクにも気を配る。 「非常食を買い足しておこうか」 「そうしよう・・・今日の分も買っといた方が良い。絶対」 リョクの腹の虫も鳴った事で、レキは手近な露店にて、非常食を買い込む。 >>2 PR この記事にコメントする
|